一体だれが悪いのか?それはわたしと言いました

LIN

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めでたしめでたし

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(イザベラの最後の言葉の真意は何だったんだろう…)

アーロンがそんな事を考えていると、フローラが嬉しそうに飛び付いてきた。

「アーロン様、これでもう苦しめられる人が居なくなるんだね!みんなが笑顔で暮らせるんだね!」

「あぁ、そうだよ。フローラ、君を傷付ける者も居ないんだよ」

「ううん、私の事は我慢できるの。でも、他の人達が苦しんでるのが我慢できなくて…私はみんなを守る事が出来たのかな?」

「フローラ…」

(こんなにも傷付けられたというのに、他の者の事ばかりを心配できるとは…)

アーロンはそっとフローラの手を取った。痣だらけの腕を労るように、優しく手を握った。

「聖女の君が民達を守るなら、私が君を守ろう」

「アーロン様…?」

フローラは首を傾げた。

「どうか私の伴侶になって欲しい。君のその優しさで、この国を私と共に守ってくれないだろうか?」

「嬉しい!でも、私にはお妃様のお仕事なんて出来ないし…」

躊躇するフローラに、側近達が伝えた。

「仕事は私共が承ります。聖女様はどうか、その優しさで人々に癒やしを与えて下さい」

「でも…」

「フローラ、民達の声を聞いてごらん?」

フローラが視線を下げると、イザベラの刑が執行されるのを見に来ていた民達が全員フローラ達を見上げ、アーロンとフローラの名を呼んでいた。

「皆が君を求めているんだよ」

「みんな…」

「フローラ、私の伴侶になってくれるね?」

アーロンが再び尋ねた。

「うん!」

フローラがアーロンに飛び付き、力一杯抱きしめた。


わぁっと歓声が下から起こり、皆が二人を祝福した。

「フローラ、腕は痛くはないのか?」

アーロンが尋ねると、フローラは笑顔で答えた。

「あ、嬉し過ぎて忘れてたみたい…急に痛くなって来ちゃった」

「すぐに城に戻って手当てをしよう」


こうして二人は結ばれた。

元婚約者に苦しめられ、傷付いた民達と第一王子を救った心優しい聖女。

二人の恋物語は唄になり、本になり、そして劇になった。

誰もが二人を祝福し、悪女がこの世を去った事に喜んでいた。もう誰も自分達を苦しめる者は居ない。自分達には守ってくれる優しい聖女がいる。フローラの人気は絶大だった。


アーロンとフローラの側にはいつも二人の側近達がいた。

リックとデニー。優秀な二人は、仕事の出来ないフローラに代わり、正義感の強いアーロンを常に支えていた。三人の打ち出す政策と、人々に癒やしを与えるフローラ。この四人のお陰で、民達は理不尽に苦しめられることも無くなった。


そして、一人の王子と二人の姫が生まれ、アーロン達は幸せに暮らしていた。

一人の王子はエイドリアンと名付けられ、アーロンに似た容姿に育ち、正義感の溢れる優秀な王子になった。

二人の姫はライラとデイジーと名付けられ、フローラに瓜二つの可愛らしい容姿に育ち、賢い姫になった。


民達は次代の優秀な王子達に喜んでいた。

正義感の強い国王と心優しい聖女の王妃。そして、二人を支える優秀な側近達。この四人に育てられる次代の王子や姫達の将来。

この国の、自分達の未来は安泰だと喜んだ。


もう二度と同じ悲劇を繰り返さないようにと『イザベラ』という名は悪女の象徴となり、悪い事をした子供にはイザベラの話を聞かせるようになった。

「我儘ばかり言うとイザベラになるよ!」

「人を傷付けるとイザベラになるよ!」

「散財ばかりするとイザベラの様に処刑されるよ!」

誰もがイザベラを嫌い、イザベラの様にはなりたくないと、慎まやかな生活を送るようになっていった。

一人の悪に対する結束力の強さ故か、次第に悪事を働く者も居なくなり、平和な国となっていったのだった。
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