真実の愛のお相手様と仲睦まじくお過ごしください

LIN

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第三章

嘘つき少年

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ここはケナード領にある村。

そこにはいつも嘘ばかり吐く少年が住んでいた。

最初は親のいない少年を気にかけていた村人達だったが、嘘ばかり吐いて皆に迷惑をかける少年を、今は誰も見てみないふりをしていた。


ーーーーー


「この村に来るのはいつ以来かしら?」

マーガレット達はケナード領にある村に来ていた。

「マーガレット様、お久しぶりです」

「マーガレット様、こんにちは」

村人達は挙ってマーガレットを歓迎していた。

「ごきげんよう。あなた達もお変わりないようね。安心したわ。あまり来られなくて申し訳ないわね」

マーガレットは村人達一人一人に挨拶をしていた。


(あら?あそこにいる子は…)

マーガレットは影に隠れてこちらを見てくる少年を見つけた。

「マーガレット様、あの子には近付かない方が良いですよ。いつも嘘ばかり吐いて、皆迷惑しているのです」

村人の一人がマーガレットに言った。

マーガレットは少年をもう一度見た。少年はじぃっとマーガレット達を見ていた。

「どのような嘘を吐くのかしら?」

マーガレットが村人に聞いた。

「狼が来るというのはまだ良い方で、災いが起きるとか、自分には不思議な力があるだとか、何も無いところに話しかけたりもしていますよ」

村人はため息を吐いて言った。

「最初は信じたんですがね。狼なんて来やしない。災いだって一度も起こった事もない平和な村ですよ」

(何もないところに話しかける…私の時と同じだわ。あの子にも妖精さんが見えるのかしら?)

マーガレットは少年に近づいて行った。

「ごきげんよう。あなたには不思議な力があるのかしら?」

「そうだよ。俺には何でも見えるんだ。あんたのことだってわかるさ」

「コラッ!マーガレット様に向かってなんて口の聞き方だい!」

村人が少年を叱った。

「ふんっ!」

少年は走って何処かへ行ってしまった。

(行ってしまったわ…追いかけましょう)

マーガレットは少年を追いかけた。初めて会う自分以外の妖精を見ることのできる少年と話してみたかったのだ。

「マーガレット様!」

ギルバートとオリビアが慌てて後を追った。


「やっと追いついたわ。走るのが早いのね」

マーガレットは少年を見つけて話しかけた。

「なんで付いて来たんだよ…」

「あなたとお話がしたいのだけれど、良いかしら?」

「好きにすれば?」

少年はそう言って、木の株に腰掛けた。

「あなたにも妖精さんが見えるのかしら?」

マーガレットは少年もそうなのだと思い、聞いてみることにした。

「はぁ?何言ってんのさ。そんなわけないだろ?嘘だよ、嘘」

少年はぷいっとそっぽを向いた。

「そうなのね、残念だわ…」

マーガレットは落ち込んでいた。初めて自分と同じ人を見つけたと思ったのに、そうではなかったからだ。

「なんだよ、俺が悪いことしたみたいじゃん」

少年はバツの悪い顔をしていた。

「違うわ。私が勝手に落ち込んでしまったの。あなたは悪くないわ」

少年はマーガレットを悲しませてしまった事に居心地が悪くなってしまい、嘘の話をしてマーガレットを元気付けようとした。

「俺には不思議な力があるんだ。未来を見ることができるのさ。だから今までだって一人で生きて来れたんだ。例えば…ほら、あそこに倒れてる木があるだろ?俺はあそこに立っていたんだ。でも、未来を知ってるから、倒れる直前になんとか逃げ出したのさ。凄いだろ?」

少年は道端に倒れている大きな木を指差して言った。

「まぁ、本当に不思議な力があるのね?凄いわ」

マーガレットは目を輝かせて少年の話を聞いていた。

そんなマーガレットに気を良くした少年は、次々に嘘の物語を得意げに語っていった。

「凄いわ」「本当に不思議ね」

マーガレットはそう言って相槌を打ち、真剣に少年の話を聞いていたのだった。


「素敵なお話を聞かせてくれてありがとう」

そう言ってマーガレットは屋敷に帰って行った。

(妖精さんのことは残念だったけれど、物語のような不思議な力って本当にあるのね)

マーガレットは帰りの馬車の中で少年に感心していた。

(あんな嘘を信じるなんて、マーガレット嬢って…可愛いな)

ギルバートは御者席でニヤニヤとしていたのだった。


少年は嬉しかった。

親のいない少年は、誰かに構って欲しかっただけだった。村人達に嘘をついて、気にかけて欲しかっただけだった。

マーガレットは自分の嘘を信じて真剣に話を最後まで聞いてくれた。「嘘だ」なんて言わなかった。

少年はマーガレットに感謝をし、人を困らせる嘘ではなく、人の為の嘘を付くようになっていった。


後に『幸せの道化師』と呼ばれる人から愛される芸人になったという。

いつも人々に囲まれるようになり、少年はもう一人ではない。
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