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第三章
そして…
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約束の日、ギルバートは落ち着かなかった。
「ギル…」
マーガレットに声を掛けられ、思わず飛び上がってしまうほどだった。
「マーガレット嬢…返事を聞かせてくれるのかい?」
ギルバートは人生で一番と言って過言ではない程に緊張していた。
「あの…私も…」
マーガレットは一度深呼吸をして、ギルバートを見た。
「私もギルバート殿下をお慕いしています!」
緊張していたマーガレットは、思ったよりも大きな声で言ってしまった。
聞き耳を立てていたケナード家の者達には聞かれていた事だろう。
「本当かい?夢では無いんだね…?」
「えぇ、私もギルと一緒に過ごす時間が楽しくて、気が付いたら好きになっていたの…」
「マーガレット嬢、ありがとう!」
ギルバートがマーガレットの手を取った瞬間、何処かに隠れていたビクトールが慌てて出てきた。
「私のメグの手を取る許可は出していないよ!」
「お父様…」
ビクトールはいつまでもビクトールのままだった。
その様子を見ていた影は、すぐにシルベスタ帝国に手紙を送った。手紙は影から影へと届けられ、すぐに皇帝の元に届くだろう。
ケナード領では盛大な宴が行われた。どこの街でもマーガレットの話で持ちきりだった。
「マーガレット様の相手はシルベスタ帝国の皇太子殿下らしい!」
「さすが我らのマーガレット様だ!」
「でも、何処で出会ったのかしら…?」
「マーガレット様に助けられて、身分を隠して執事として側にいたらしいよ?」
「いつも側にいた人?あの二人なら納得ね!」
「いつくっつくのかって見ているこっちが焦れったかったもんね!」
プラムはマーガレットの新しいドレスを作り始めた。
「メグお姉ちゃん、おめでとう!皇太子だからって、泣かせたら懲らしめてやるんだから!」
トムは宴のために張り切って料理をしていた。
「俺の料理を上手いって食べてた人が皇太子殿下だったんだ!」
マーガレットを祝う宴は三日三晩続いたのだった。
そして四日目の朝…
「マーガレット嬢、私と共にシルベスタへ行ってくれるね?私はすぐに戻らなければならないんだ」
「ちょ、ちょっと待ってくれるかい…?そんな話は一言も聞いていないのだけど…?」
ビクトールは慌てて止めに入ったが、すかさずスザンヌが了承した。
「マーガレット、幸せになるのよ?」
「いつでも帰って来て良いからね?嫌なことがあったらすぐに言うんだよ?お父様が殴り飛ばしてあげるからね」
マーガレット達は屋敷の皆と領民の皆に祝福され、シルベスタ帝国へと向かったのだった。
一緒に連れて行くのは、オリビアとセバス。そして、前回同様に頑なに動かない三匹の動物達だった。
馬車に揺られながら、マーガレットは色んな事を考えていた。両親の事、使用人達の事、領民の事、そしてギルバートの事。
(前と同じ道のりなのに、一年経つとこうも違って見えるのね…)
マーガレット達は前回と同様に同じ街や集落に泊まり、前回よりも更に歓迎されたのだった。
― 一方その頃のシルベスタ帝国では ―
今まで決まらなかった皇太子殿下の婚約者が決まったと、国中が騒いでいた。
「心配かけおって…期限ギリギリまで使ってからに…」
皇帝は誰もいない私室で呟き、厳しい顔をしながらも、口は弧を描いていた。
「お父様!ついに決まったのね!」
「あぁ、今度の夜会で発表されるようだよ」
「遂に私が選ばれたんだわ!こうしてはいられないわ!全身を磨き上げなくては!」
「だが…王家からは知らせもないし、バイオレットではないと思う…行ってしまったか。悪い癖が出なければ良いのだが…」
父の言葉を最後まで聞かずに、バイオレットは浮足立って侍女たちに手入れをさせたのだった。
「ギル…」
マーガレットに声を掛けられ、思わず飛び上がってしまうほどだった。
「マーガレット嬢…返事を聞かせてくれるのかい?」
ギルバートは人生で一番と言って過言ではない程に緊張していた。
「あの…私も…」
マーガレットは一度深呼吸をして、ギルバートを見た。
「私もギルバート殿下をお慕いしています!」
緊張していたマーガレットは、思ったよりも大きな声で言ってしまった。
聞き耳を立てていたケナード家の者達には聞かれていた事だろう。
「本当かい?夢では無いんだね…?」
「えぇ、私もギルと一緒に過ごす時間が楽しくて、気が付いたら好きになっていたの…」
「マーガレット嬢、ありがとう!」
ギルバートがマーガレットの手を取った瞬間、何処かに隠れていたビクトールが慌てて出てきた。
「私のメグの手を取る許可は出していないよ!」
「お父様…」
ビクトールはいつまでもビクトールのままだった。
その様子を見ていた影は、すぐにシルベスタ帝国に手紙を送った。手紙は影から影へと届けられ、すぐに皇帝の元に届くだろう。
ケナード領では盛大な宴が行われた。どこの街でもマーガレットの話で持ちきりだった。
「マーガレット様の相手はシルベスタ帝国の皇太子殿下らしい!」
「さすが我らのマーガレット様だ!」
「でも、何処で出会ったのかしら…?」
「マーガレット様に助けられて、身分を隠して執事として側にいたらしいよ?」
「いつも側にいた人?あの二人なら納得ね!」
「いつくっつくのかって見ているこっちが焦れったかったもんね!」
プラムはマーガレットの新しいドレスを作り始めた。
「メグお姉ちゃん、おめでとう!皇太子だからって、泣かせたら懲らしめてやるんだから!」
トムは宴のために張り切って料理をしていた。
「俺の料理を上手いって食べてた人が皇太子殿下だったんだ!」
マーガレットを祝う宴は三日三晩続いたのだった。
そして四日目の朝…
「マーガレット嬢、私と共にシルベスタへ行ってくれるね?私はすぐに戻らなければならないんだ」
「ちょ、ちょっと待ってくれるかい…?そんな話は一言も聞いていないのだけど…?」
ビクトールは慌てて止めに入ったが、すかさずスザンヌが了承した。
「マーガレット、幸せになるのよ?」
「いつでも帰って来て良いからね?嫌なことがあったらすぐに言うんだよ?お父様が殴り飛ばしてあげるからね」
マーガレット達は屋敷の皆と領民の皆に祝福され、シルベスタ帝国へと向かったのだった。
一緒に連れて行くのは、オリビアとセバス。そして、前回同様に頑なに動かない三匹の動物達だった。
馬車に揺られながら、マーガレットは色んな事を考えていた。両親の事、使用人達の事、領民の事、そしてギルバートの事。
(前と同じ道のりなのに、一年経つとこうも違って見えるのね…)
マーガレット達は前回と同様に同じ街や集落に泊まり、前回よりも更に歓迎されたのだった。
― 一方その頃のシルベスタ帝国では ―
今まで決まらなかった皇太子殿下の婚約者が決まったと、国中が騒いでいた。
「心配かけおって…期限ギリギリまで使ってからに…」
皇帝は誰もいない私室で呟き、厳しい顔をしながらも、口は弧を描いていた。
「お父様!ついに決まったのね!」
「あぁ、今度の夜会で発表されるようだよ」
「遂に私が選ばれたんだわ!こうしてはいられないわ!全身を磨き上げなくては!」
「だが…王家からは知らせもないし、バイオレットではないと思う…行ってしまったか。悪い癖が出なければ良いのだが…」
父の言葉を最後まで聞かずに、バイオレットは浮足立って侍女たちに手入れをさせたのだった。
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