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発芽
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「おい、大丈夫かよ」
体育の授業の見学をしている明彦のもとへ、洋二と健が駆け寄ってきた。ベンチにうずくまっている様子が気になってのことだ。
「そこの二人、サボるな! 準備運動のスクワットを追加するぞー」
体育教師の吉田がマッチョな身体をいからせて、こちらに近づいてきた。こいつは外見どおり、脳筋熱血教師。なにかと言えば、筋トレ筋トレとうるさい。
「サボってねーよ。明彦が具合悪そうなんだよっ」
「センセー、こいつ限界っぽいよ。朝もフラフラしてたし」
どれどれ、と明彦の様子を見にきた。
「顔色悪いな。冷や汗もかいてるじゃないか。
おまえら、指示通りにチームに別れてサッカーを続けていろ。
先生は岡崎を保健室に連れていく」
二人に授業に戻るように指示し、急いで保健室に運んだ。途中、明彦に声を何度かかけるが返事はない。意識も朦朧としているようだ。
「先生、生徒が体調悪いのでベッドをお願いします」
保健室の校医に状況を話しベッドに寝かせるが、問いかけにやはり返答はない。時おり漏れる細いうめき声は、痛みのためなのだろうか。
「......だぃ...じょうぶ......です......」
やっとのこと喋れるようになったのか、途切れ途切れに答える。
「どこが痛いの? 言える?」
意識がハッキリしているかの確認もあるのだろう。病状を聞かれる。
「......お腹...頭......全身...の関節......が...だる痛い」
病状を伝えると、しばらく安静にして良くならなければ救急車を呼ぶということで、生理食塩水のドリンクを渡された。校医の判断では熱中症のようだ、ということだった。
「担任の青島先生には連絡をしておきます。じゃあ、あとはお願いします」
校医に明彦を委ね、吉田は残りの授業のため足早にグラウンドに戻った。
吉田の遠ざかる足音が、静かな保健室に微かに響く。明彦は身体を縮めて痛みと言い知れぬ不安に震えていた。
(まさか......、あれが俺の中で増殖しているのか?)
身体の中を得体の知れないモノが、じわじわと浸食していく。
(こ、こんなに短い時間で......)
その、得体の知れないモノは、自分の肉体を尋常じゃないものに変えてしまうだろう。
更に激痛が、津波のように腹部を襲う。
「いってえ、いてえよぉぉーーーーっ」
腹部を押さえてベッドの上を転げ回った。
「岡崎君、どうしたの! お腹痛いの? どの辺が痛むの?
すごい汗だわ。ちょっと、お腹触るわよ?」
校医が痛む部分を触診しようとすると、腹部の異変に気がついた。
お臍の辺りが赤黒く腫れて盛り上がっているように見える。腹痛の原因は、明らかにこれだろう。炎症を起こしているのだろうか。それにしても、こんな腫れ方は見たことがない。
近くの救急病院に搬送する手配を慌ただしく始める。
(死にたくない......。俺、まだ死にたくない......)
激痛で遠退いていく意識がわずかに捉えたのは、救急車のサイレンだった。それは、あの男が笑う不気味な声と似ていた。
体育の授業の見学をしている明彦のもとへ、洋二と健が駆け寄ってきた。ベンチにうずくまっている様子が気になってのことだ。
「そこの二人、サボるな! 準備運動のスクワットを追加するぞー」
体育教師の吉田がマッチョな身体をいからせて、こちらに近づいてきた。こいつは外見どおり、脳筋熱血教師。なにかと言えば、筋トレ筋トレとうるさい。
「サボってねーよ。明彦が具合悪そうなんだよっ」
「センセー、こいつ限界っぽいよ。朝もフラフラしてたし」
どれどれ、と明彦の様子を見にきた。
「顔色悪いな。冷や汗もかいてるじゃないか。
おまえら、指示通りにチームに別れてサッカーを続けていろ。
先生は岡崎を保健室に連れていく」
二人に授業に戻るように指示し、急いで保健室に運んだ。途中、明彦に声を何度かかけるが返事はない。意識も朦朧としているようだ。
「先生、生徒が体調悪いのでベッドをお願いします」
保健室の校医に状況を話しベッドに寝かせるが、問いかけにやはり返答はない。時おり漏れる細いうめき声は、痛みのためなのだろうか。
「......だぃ...じょうぶ......です......」
やっとのこと喋れるようになったのか、途切れ途切れに答える。
「どこが痛いの? 言える?」
意識がハッキリしているかの確認もあるのだろう。病状を聞かれる。
「......お腹...頭......全身...の関節......が...だる痛い」
病状を伝えると、しばらく安静にして良くならなければ救急車を呼ぶということで、生理食塩水のドリンクを渡された。校医の判断では熱中症のようだ、ということだった。
「担任の青島先生には連絡をしておきます。じゃあ、あとはお願いします」
校医に明彦を委ね、吉田は残りの授業のため足早にグラウンドに戻った。
吉田の遠ざかる足音が、静かな保健室に微かに響く。明彦は身体を縮めて痛みと言い知れぬ不安に震えていた。
(まさか......、あれが俺の中で増殖しているのか?)
身体の中を得体の知れないモノが、じわじわと浸食していく。
(こ、こんなに短い時間で......)
その、得体の知れないモノは、自分の肉体を尋常じゃないものに変えてしまうだろう。
更に激痛が、津波のように腹部を襲う。
「いってえ、いてえよぉぉーーーーっ」
腹部を押さえてベッドの上を転げ回った。
「岡崎君、どうしたの! お腹痛いの? どの辺が痛むの?
すごい汗だわ。ちょっと、お腹触るわよ?」
校医が痛む部分を触診しようとすると、腹部の異変に気がついた。
お臍の辺りが赤黒く腫れて盛り上がっているように見える。腹痛の原因は、明らかにこれだろう。炎症を起こしているのだろうか。それにしても、こんな腫れ方は見たことがない。
近くの救急病院に搬送する手配を慌ただしく始める。
(死にたくない......。俺、まだ死にたくない......)
激痛で遠退いていく意識がわずかに捉えたのは、救急車のサイレンだった。それは、あの男が笑う不気味な声と似ていた。
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