どうぞ、おかまいなく

こだま。

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「クラリス、用事があるからと呼び出されて来たけど……友達と一緒なのかい?」

噂をすれば、御本人様が……スーパーアイドルのイアン様がカフェの2階に来た~。
はじめてご尊顔を拝見いたします。素晴らしい景色です。
今まで知らなかったのが、人生の損失ぐらいの美丈夫です。そんな気持ちを掻き消す悲鳴が起こりました。

「きゃ~~~っ!!
ラナのイアン様が、ラナのイアン様がっ!」

――別に貴女のイアン様ではないし、スティーヴンはどうした、妹キャラよ……。
スティーヴンが隣でドン引きしているわよ。

呆気に取られ、呆然とラナ嬢をみる私たち。すると、イアン様がラナ嬢を見て口を開く。

「あれ?随分雰囲気が変わったけど、君は……」

「はいっ、貴方のラナです!」

そんな即答は要らないのよ。

「確か、僕に接近禁止だったよね。しまったなあ……」

バツが悪そうにしていても、美丈夫は爽やかである。

「今、こちらのスティーヴン·セヴル伯爵令息とお付き合いしているのですって。
相思相愛だそうだから、イアンお兄様の事はもう大丈夫なのではなくて?
ね?ラナさん」

クラリスは笑顔でイアンに経緯を少し説明する。余計な事をイアンに吹き込まれたラナはワナワナ震えながら、

「貴女、随分イアン様と親しげにしているけれど、
何様なの?」

と、食ってかかった。

「何様って……親戚よ?
イアンお兄様は従兄弟なの。それが、何か?」

「あなた、ただのファンクラブの会員じゃ……」

「私が会長なのよ。
身内でイアンお兄様を女狐達から守っているの」

思いもよらないカミングアウトに、ラナがえっ?と怯んで少し後ずさる。
あんな事やこんな事が、よもや、本人に確実に知れ渡っているのだろう。
今日のステュとのやり取りも、後で事細かく告げ口されるに違いない。
諦めたとはいえ、イアンを目の前にしたら想いが再燃してしまった。
そして、スティーヴンとの事を少し後悔した。
こんなに近くで話が出来るなら、イアン様を無理矢理忘れることなんかなかった、と。

二人のやり取りをただ見ているだけのアンジェラは、スティーヴンとラナの事より目の前のカオス的な事案に集中力を全部持っていかれていた。

――クラリスの従兄弟がイアン様?
そう言えば、クラリスに呼び出されたって言っていたけど……。
色々知っている訳だわ。ファンクラブを仕切っているのが身内のクラリスだから安全なのね……。
いや、そんなことよりこの雌牛、顔面が蒼白になっている……。
あら?もう一人、横にいるスティーヴンの顔色も落ちて白いわ……。
面白いから、このまま傍観に徹しようかしら。

もはや、アンジェラのスティーヴンへの思いは、ゴッソリ削ぎ落とされてなくなっていた。ただの野次馬と化している。

付き合う人を選ぶって、すごく大事よね……。
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