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カモミールとミルク 4
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仕事で海外に長期滞在しがちなノアの両親は、日ごろからノアに無理強いすることをしなかった。
ノアが自分で決めて学校を休んでアロマダウザーという専門職を目指すと決めた時も、では、学校に行かなくても知識や思考方法や職業柄必要になるコミュニケーション術などを学べる環境を整えてくれたのだ。
そうした中、極端に環境を変えるのもよくないだろうと、ノアを母親の弟の夢惣に預けることにしたのだった。
ちょっと変わったところはあるが、ノアが幼いころから馴染んでいて、穏やかで、真面目で、面倒見もいい彼のところなら安心できるだろうとの判断だった。
夢惣が開いているアロマダウジングのラボルームの隣りの住居スペースの6室あるアパートの一部屋に間借りして、そこでホームワークをしながら、アロマダウジングのレッスンを受けながら暮らすことになったのだ。
アパートの1室は、ホームワーク用に開放されているとのことだった。
今のところ利用者はノア一人だったが、希望があれでも受け入れるよ、と夢惣は言っている。
教員免許を持っている夢惣の大学の後輩も、勉強をみてくれる。
ノアの通っている特区の学校は、多様性と柔軟性がベースになっているので、友だちも自然に受け入れてくれた。
特別に賞賛するでもなく、異物扱いするでもなく、選択を尊重するのが当たり前と身についているのだった。
とは言うものの、子どもたちはまだまだ成長の過程で精神的には未熟なので、けんかや対立といったことも子どもたちの日常の自然な風景だった。
一人でしんとした中でじっとしていると、からだがすーっと透き通っていくような気がする。
集中しているからか、声や音が消えると、他の感覚が研ぎ澄まされていく。
とくにノアは、鼻がきくようになったみたいだった。
引っ込み思案なのは相変わらずだけれど、それでも前よりはまわりが気にならなくなった。
ヤなことがあった時にはにおいをイメージすれば、ある程度は気持ちがおさまる。
けれど、頻繁にこみ上げてくる、自分自身にうんざりしてしまう、もやもやする心をなんとかしたい、というのは残ったままだった。
だから、そんな時にもう一人の自分、時空双子と出会ったのは、今こそが、きっと、行動を起こす時なのだ、とノアは思った。
アロマダウザーという仕事は、まだ未熟とはいえ自分に合っているとノアは思っていた。
アロマダウジングは人の心と人生に深く関わることになるわけだから、向かないタイプだと、その心の世界のあまりの広大さに、人生の重さに、恐怖に支配されてパニックに陥ることもあるといわれている。
だが、ノアにはそれはいっさいなかった。
なぜなら、お手軽に要領よくいく人生なんてそうはありえない、と学校での立ち回りがうまくできない自分を見つめるうちに、自然と思うようになったからだ。
そんなことから、このまま行けば自分が将来継ぐことになる職業として望ましいなと思っていた。
そんなノアを、叔父の夢惣は、まだまだあぶなっかしいなと思ってはいるものの、うれしくはあるようだった。
他にこのラボルームに関わっているのは、二人。
助手の礼基は、夢惣の大学の研究室の後輩。
クールでいながらまめでかいがいしい。
気に入ったけれど自分は目はいいのでかけられないから、ぜったいきみに似合うから、と夢惣が勝手に贈ったフレームを時々かけているのが微笑ましい。
もっともそれは、たいてい夢惣がお茶うけにかけてみてとリクエストしてるのだ。
そして、凍汰。
彼はノアにとってなんとも微妙な存在なのだ。
自分の時空双子が同じくらいの年の美少年らしいと知ってからも、それは変わりはなかった。
時空双子は自分の一部のような感じで好きとか嫌いとか超越してしまっているような感じなのだ。
けれど、現実、目の前にいる少年には、幼なじみというだけではないものを、この頃感じるようになっていた。
ノアが自分で決めて学校を休んでアロマダウザーという専門職を目指すと決めた時も、では、学校に行かなくても知識や思考方法や職業柄必要になるコミュニケーション術などを学べる環境を整えてくれたのだ。
そうした中、極端に環境を変えるのもよくないだろうと、ノアを母親の弟の夢惣に預けることにしたのだった。
ちょっと変わったところはあるが、ノアが幼いころから馴染んでいて、穏やかで、真面目で、面倒見もいい彼のところなら安心できるだろうとの判断だった。
夢惣が開いているアロマダウジングのラボルームの隣りの住居スペースの6室あるアパートの一部屋に間借りして、そこでホームワークをしながら、アロマダウジングのレッスンを受けながら暮らすことになったのだ。
アパートの1室は、ホームワーク用に開放されているとのことだった。
今のところ利用者はノア一人だったが、希望があれでも受け入れるよ、と夢惣は言っている。
教員免許を持っている夢惣の大学の後輩も、勉強をみてくれる。
ノアの通っている特区の学校は、多様性と柔軟性がベースになっているので、友だちも自然に受け入れてくれた。
特別に賞賛するでもなく、異物扱いするでもなく、選択を尊重するのが当たり前と身についているのだった。
とは言うものの、子どもたちはまだまだ成長の過程で精神的には未熟なので、けんかや対立といったことも子どもたちの日常の自然な風景だった。
一人でしんとした中でじっとしていると、からだがすーっと透き通っていくような気がする。
集中しているからか、声や音が消えると、他の感覚が研ぎ澄まされていく。
とくにノアは、鼻がきくようになったみたいだった。
引っ込み思案なのは相変わらずだけれど、それでも前よりはまわりが気にならなくなった。
ヤなことがあった時にはにおいをイメージすれば、ある程度は気持ちがおさまる。
けれど、頻繁にこみ上げてくる、自分自身にうんざりしてしまう、もやもやする心をなんとかしたい、というのは残ったままだった。
だから、そんな時にもう一人の自分、時空双子と出会ったのは、今こそが、きっと、行動を起こす時なのだ、とノアは思った。
アロマダウザーという仕事は、まだ未熟とはいえ自分に合っているとノアは思っていた。
アロマダウジングは人の心と人生に深く関わることになるわけだから、向かないタイプだと、その心の世界のあまりの広大さに、人生の重さに、恐怖に支配されてパニックに陥ることもあるといわれている。
だが、ノアにはそれはいっさいなかった。
なぜなら、お手軽に要領よくいく人生なんてそうはありえない、と学校での立ち回りがうまくできない自分を見つめるうちに、自然と思うようになったからだ。
そんなことから、このまま行けば自分が将来継ぐことになる職業として望ましいなと思っていた。
そんなノアを、叔父の夢惣は、まだまだあぶなっかしいなと思ってはいるものの、うれしくはあるようだった。
他にこのラボルームに関わっているのは、二人。
助手の礼基は、夢惣の大学の研究室の後輩。
クールでいながらまめでかいがいしい。
気に入ったけれど自分は目はいいのでかけられないから、ぜったいきみに似合うから、と夢惣が勝手に贈ったフレームを時々かけているのが微笑ましい。
もっともそれは、たいてい夢惣がお茶うけにかけてみてとリクエストしてるのだ。
そして、凍汰。
彼はノアにとってなんとも微妙な存在なのだ。
自分の時空双子が同じくらいの年の美少年らしいと知ってからも、それは変わりはなかった。
時空双子は自分の一部のような感じで好きとか嫌いとか超越してしまっているような感じなのだ。
けれど、現実、目の前にいる少年には、幼なじみというだけではないものを、この頃感じるようになっていた。
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