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例えどんな理不尽な世界だとしても
だる絡みなんだが?
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「お待たせしました。バジリスクとエコーイノセントの討伐報酬九万三千ガロとなります。そこから今回のクエスト違約金の五千ガロを引いて、こちらが八万八千ガロとなります」
ギルドの受付嬢が差し出した袋を恐る恐る開けてみると、中には金銀のコインがたんまりと入っていた。
思わずにやけそうになる口元を手で覆い隠し、最低限の挨拶を交わして足早にその場を去る。
八万八千ガロなんて、今のハルトたちにはとんでもない大金だ。
駆け出しのEランクパーティーが一週間に稼ぐ金額は平均二万ガロ程度。既に三年冒険者をやっているハルトたちでも、今回の金額分を稼ぐには一週間以上は有しただろう。
「おーい、こっち、こっち! もう料理来ちゃってるよ!」
ギルドに併設されている酒場に向かうと三人は既に席を取り、宴の準備を整えていた。
テーブルに立ち並ぶ色とりどりな料理としゅわしゅわと陽気な音を立てる酒に、都合の良い腹の虫が早くしろと急かす。
冒険者の習わしに、新規のパーティーで初めてクエストを遂行した日はパーティーメンバー全員で大なり小なり宴を開くというものがある。
今回はクエスト自体は失敗という形に終わったが、それ以上の成果をあげたのだ。いわゆる御都合主義的宴というわけだ。
「お待たせ。じゃあ、まあ色々と積もる話もあるけど、とりあえずは……」
今回の報酬の入った袋を卓の真ん中にドサっと置いて、ハルトは酒樽型のジョッキを手にする。
「「「「かんぱーい!」」」」
四人はジョッキを勢いよく打ち鳴らす。勢いに押されて飛び出した少量の泡が宙を舞う。
豪快に酒を流し込む三人とチビチビ口に運ぶ一人。そして豪快に料理を貪る三人と、ゆっくり自分のペースで食べる一人。知らない人が見れば、モミジがとても浮いているように見えるかもしれない。しかし、モミジもいつもより口数が多い。心配ではあったが、彼女もそれなりに楽しめているようだ。
「それにしても、まさか結成したての初ディザスターでCランクの魔物と出会うなんて思いもしなかったよ。僕、バジリスク見た時生きた心地がしなかった」
「いやいや私! 昨日の夜とか心底心配だったし、なんたって魔剣士しかいないんだもん」
結局、暗躍の森からの帰り道は魔剣士によるパーティーバフについての話題で持ちきりだった。しかし、街に戻りギルドに立ち寄って受付嬢を含め、数人の職員にパーティーバフと適正区画外の魔物が二頭発見されたことを話したが、信じてもらえたのは後者のみだった。前者に関しては軽くあしらわれ、魔物の討伐成果報酬こそ出たものの、それに関しても仕方なくといった具合であった。
「魔剣士に限定せず、同じ印を持った者同士でパーティーを組んだら、俺たちみたいにパーティーバフが乗るんじゃないのか?」
ハルトは左手にぼんやりと光を放って浮かび上がる痣を見る。
「それはないと思います。以前、魔法嫌いの重タンクパーティーをお見かけしましたが、ただの火力が出ないドM集団でした」
またしてもさらりと毒舌を吐くモミジに三人は思わず吹き出す。しかし、本人に自覚は無いのか、モミジは不思議そうに首を傾げている。
「モミジってやっぱり良い性格だね。変に気取ってなくて私は好きだよ!」
「私、なんか変なこと言いましたか?」
昨日はどこか他人行儀な感じであったが、今日の難儀な出来事の連続でみんなかなり打ち解けたように思える。パーティーにおいて信頼関係というのはとても重要だ。時に背中を任せ、支え合う。それなりに信頼し合っていないと連携に支障をきたしてしまう。
初クエストを完了した日は宴という習わしも、おそらくはパーティーメンバーによる打ち解け合いが主の目的なのだろう。
「あれー? マナツじゃーん。どうしたん? 賑わってるじゃーん!」
談話に華を咲かせていると、脳裏にうっすら残るチャラチャラした声が聞こえて来た。
あからさまに卓を囲む四人の雰囲気が変わった。皆、声の主から目をそらす。マナツに関しては既に眉間にシワを寄せ、拳を震わせている。
「何の用なの、スミノ」
昨日と同じくジャラジャラと多くの装飾品をつけているスミノは、卓に置かれた肉を一掴みして口に放り込んだ。
「今日もバッチリ稼いだから、これから朝まで飲みまくるのよーん。あ、そうだマナツも一緒にどう? パーティーでは役に立たないけど、女ってだけで夜の方は役に立つからさぁ」
「あ、あんたねぇ……!」
「あのさ、今は僕たち四人で楽しんでるからさ。マナツさんは連れて行かないで欲しいかな」
今にも飛びかかりそうなマナツをなだめながら、ユキオは穏便に断る。こういう時、とっさに動くことのできるユキオにハルトは関心した。
スミノは一瞬、豆鉄砲を食らったように素っ頓狂な顔をしたが、すぐに吹き出して笑い転がる。
「うげー、こんな不遇職の集まりとか悲しくない? テンプルナイトの俺が、せっかく誘ってあげてんのに」
テンプルナイトは高火力職の一つで、自身の身体能力を大きく強化するパッシブを備えており、現冒険者職の中ではトップクラスに入る有能職だ。
「でも、Dランクじゃん。俺とここにいるモミジの元ランクよりも低いけど」
めんどくせ、と内心思いながらもハルトは気がつくと口を開いていた。
その発言に対して、スミノは鼻で笑って見せた。
「Cランクだろうが所詮魔剣士なんでしょ? ならテンプルナイトの俺の方が強いに決まってんじゃん。君とそこのお嬢ちゃんがCランクに行けたのは、元パーティーメンバーが強かったからでしょ」
確かにテトラのパーティーに所属していた時は、前衛も後衛も中途半端にこなしていた。邪魔にはなっていなかったかもしれないが、やはり他のメンバーにくらべると活躍の幅は狭かった。
しかし、ここまで煽られては流石にハルトも黙ってはいられない。しばらく沈黙が続き、ハルトとスミノの間に火花が散る。
その沈黙は、テーブルを勢いよく叩く音によって破られた。おもむろに立ち上がるマナツ。
「あーもういい加減にしてスミノ! ちょっと表に出てよ!」
一連の流れをオロオロしながら見ていたモミジは、この後起こる一抹の不安を感じるのであった。
ギルドの受付嬢が差し出した袋を恐る恐る開けてみると、中には金銀のコインがたんまりと入っていた。
思わずにやけそうになる口元を手で覆い隠し、最低限の挨拶を交わして足早にその場を去る。
八万八千ガロなんて、今のハルトたちにはとんでもない大金だ。
駆け出しのEランクパーティーが一週間に稼ぐ金額は平均二万ガロ程度。既に三年冒険者をやっているハルトたちでも、今回の金額分を稼ぐには一週間以上は有しただろう。
「おーい、こっち、こっち! もう料理来ちゃってるよ!」
ギルドに併設されている酒場に向かうと三人は既に席を取り、宴の準備を整えていた。
テーブルに立ち並ぶ色とりどりな料理としゅわしゅわと陽気な音を立てる酒に、都合の良い腹の虫が早くしろと急かす。
冒険者の習わしに、新規のパーティーで初めてクエストを遂行した日はパーティーメンバー全員で大なり小なり宴を開くというものがある。
今回はクエスト自体は失敗という形に終わったが、それ以上の成果をあげたのだ。いわゆる御都合主義的宴というわけだ。
「お待たせ。じゃあ、まあ色々と積もる話もあるけど、とりあえずは……」
今回の報酬の入った袋を卓の真ん中にドサっと置いて、ハルトは酒樽型のジョッキを手にする。
「「「「かんぱーい!」」」」
四人はジョッキを勢いよく打ち鳴らす。勢いに押されて飛び出した少量の泡が宙を舞う。
豪快に酒を流し込む三人とチビチビ口に運ぶ一人。そして豪快に料理を貪る三人と、ゆっくり自分のペースで食べる一人。知らない人が見れば、モミジがとても浮いているように見えるかもしれない。しかし、モミジもいつもより口数が多い。心配ではあったが、彼女もそれなりに楽しめているようだ。
「それにしても、まさか結成したての初ディザスターでCランクの魔物と出会うなんて思いもしなかったよ。僕、バジリスク見た時生きた心地がしなかった」
「いやいや私! 昨日の夜とか心底心配だったし、なんたって魔剣士しかいないんだもん」
結局、暗躍の森からの帰り道は魔剣士によるパーティーバフについての話題で持ちきりだった。しかし、街に戻りギルドに立ち寄って受付嬢を含め、数人の職員にパーティーバフと適正区画外の魔物が二頭発見されたことを話したが、信じてもらえたのは後者のみだった。前者に関しては軽くあしらわれ、魔物の討伐成果報酬こそ出たものの、それに関しても仕方なくといった具合であった。
「魔剣士に限定せず、同じ印を持った者同士でパーティーを組んだら、俺たちみたいにパーティーバフが乗るんじゃないのか?」
ハルトは左手にぼんやりと光を放って浮かび上がる痣を見る。
「それはないと思います。以前、魔法嫌いの重タンクパーティーをお見かけしましたが、ただの火力が出ないドM集団でした」
またしてもさらりと毒舌を吐くモミジに三人は思わず吹き出す。しかし、本人に自覚は無いのか、モミジは不思議そうに首を傾げている。
「モミジってやっぱり良い性格だね。変に気取ってなくて私は好きだよ!」
「私、なんか変なこと言いましたか?」
昨日はどこか他人行儀な感じであったが、今日の難儀な出来事の連続でみんなかなり打ち解けたように思える。パーティーにおいて信頼関係というのはとても重要だ。時に背中を任せ、支え合う。それなりに信頼し合っていないと連携に支障をきたしてしまう。
初クエストを完了した日は宴という習わしも、おそらくはパーティーメンバーによる打ち解け合いが主の目的なのだろう。
「あれー? マナツじゃーん。どうしたん? 賑わってるじゃーん!」
談話に華を咲かせていると、脳裏にうっすら残るチャラチャラした声が聞こえて来た。
あからさまに卓を囲む四人の雰囲気が変わった。皆、声の主から目をそらす。マナツに関しては既に眉間にシワを寄せ、拳を震わせている。
「何の用なの、スミノ」
昨日と同じくジャラジャラと多くの装飾品をつけているスミノは、卓に置かれた肉を一掴みして口に放り込んだ。
「今日もバッチリ稼いだから、これから朝まで飲みまくるのよーん。あ、そうだマナツも一緒にどう? パーティーでは役に立たないけど、女ってだけで夜の方は役に立つからさぁ」
「あ、あんたねぇ……!」
「あのさ、今は僕たち四人で楽しんでるからさ。マナツさんは連れて行かないで欲しいかな」
今にも飛びかかりそうなマナツをなだめながら、ユキオは穏便に断る。こういう時、とっさに動くことのできるユキオにハルトは関心した。
スミノは一瞬、豆鉄砲を食らったように素っ頓狂な顔をしたが、すぐに吹き出して笑い転がる。
「うげー、こんな不遇職の集まりとか悲しくない? テンプルナイトの俺が、せっかく誘ってあげてんのに」
テンプルナイトは高火力職の一つで、自身の身体能力を大きく強化するパッシブを備えており、現冒険者職の中ではトップクラスに入る有能職だ。
「でも、Dランクじゃん。俺とここにいるモミジの元ランクよりも低いけど」
めんどくせ、と内心思いながらもハルトは気がつくと口を開いていた。
その発言に対して、スミノは鼻で笑って見せた。
「Cランクだろうが所詮魔剣士なんでしょ? ならテンプルナイトの俺の方が強いに決まってんじゃん。君とそこのお嬢ちゃんがCランクに行けたのは、元パーティーメンバーが強かったからでしょ」
確かにテトラのパーティーに所属していた時は、前衛も後衛も中途半端にこなしていた。邪魔にはなっていなかったかもしれないが、やはり他のメンバーにくらべると活躍の幅は狭かった。
しかし、ここまで煽られては流石にハルトも黙ってはいられない。しばらく沈黙が続き、ハルトとスミノの間に火花が散る。
その沈黙は、テーブルを勢いよく叩く音によって破られた。おもむろに立ち上がるマナツ。
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