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閑話集その1
第67話 出会いと別れと、猫と、悲しむ人
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冒険者ギルドに珍しく一人で行ったある日の事。
カウンターで依頼の報告を行った。
「リニアさんの行先は結局分からずだった」
「そうご苦労様。依頼をキャンセルしてもいいわよ」
「いや、まだ続けるよ」
そう言って俺はギルドを後にした。
「マイラ、今日は逃がさないぞ」
んっ、マイラが誰かに追われているのか。
俺は声のした路地に駆け込んで後を追い始めた。
くそう、追いつかない。
「ならば、【身体強化】」
スペルブックを開いて身体強化の魔法を掛ける。
走る速度がぐんと加速した。
「こら待て」
「待つもんか」
追いかけているのはエプロンを着けてフライパンを持った露店の親父だった。
逃げているのは子供だがマイラとは似ても似つかない。
同名の別人か。
「ほら捕まえたぞ」
「放せよ」
どうやら捕まったらしい。
子供は女子で、盗んだと思われる串に刺したソーセージを慌てて頬張った。
「許さん」
フライパンを振り上げる親父。
俺はその腕にしがみついた。
「仲間がいたのか?」
「フライパンで殴打はやり過ぎだ。お尻ぺんぺんぐらいで許してやろうぜ」
「こちとら生活が懸かってる」
「この子が盗んだ商品の金額を倍払う」
「ほんとだな」
俺は財布から銅貨を出すと親父に支払った。
「今度またやったら、痛い目に遭わすからな。覚えてろ」
「へへーんだ。あっかんべー」
糞ガキなところはマイラを思わせる。
歳の頃も大体同じだ。
マイラはもっと殺伐としているがな。
犯罪集団に入らなければこの子のように育っていたかも。
親父は子供を威嚇すると、俺を一瞥してから去って行った。
「盗む元気があれば働けよ」
「説教するんだな」
「フライパンで殴られれば最悪は死ぬ。お前が死んだら悲しむ人もいるだろう」
「いないさ。そんな人は」
「じゃあ、俺がその最初の一人だ。俺はタイト」
「僕はサイラ。礼は言わないぜ。じゃあな」
この子の名前はサイラか。
マイラと聞き違いしたんだな。
「待て、仕事を紹介してやる」
俺はサイラを引き止めた。
「一食の義理で話だけは聞いてやる」
「クラッド商会という所がある。そこで雇ってもらえ。今、紹介状を書いてやる」
紹介状と地図を書いてサイラに持たせてやった。
「気が向いたら行ってみる。じゃ、あばよ」
サイラが去って行き、俺は何となくサイラがクラッド商会に、行かないんじゃないかと思った。
訳ありを全て救ってやる訳じゃない。
ただマイラに名前が似てるから気になっただけだ。
俺は姿隠しの魔法を使うとサイラの後を追い始めた。
サイラは路地をどんどん進んで行き、樹が沢山生えている庭がある邸宅に出た。
見ると子猫が枝に登りミィミィ鳴いている。
「待ってろ。いま僕が降ろしてやる」
サイラはそう言うとするすると樹を登り始めた。
「じっとしてろよ」
枝にまたがり子猫の方に懸命に腕を伸ばすサイラ。
落ちそうだ。
俺は姿隠しの魔法をキャンセルして、身体強化を使い、下で身構えた。
べきべきと音がして枝が折れサイラが落下。
サイラは空中で子猫を抱きしめた。
俺はなんとか下で彼女を受け止める事に成功。
「何時まで触ってるんだ」
「悪い悪い」
お姫様だっこから、サイラを地上に降ろしてやる。
「もうお行き。今度は枝になんか登るんじゃないよ」
「優しいんだな」
「あんた、僕の後をつけたのか?」
「気になったんでな」
「まあなんだ。商会に行ってやるよ。もう一度地図と紹介状をくれ」
今度は商会に行くような気がした。
俺は後をつけるのを辞めた。
そして、次の日クラッド商会で。
「サイラ、いる?」
「サイラなあ、あいつ馴染みの商人にもらわれていったぞ」
そう元締めが教えてくれた。
「急だね」
「俺も驚いている。何でも死んだ娘にそっくりなんだって。商会でサイラと商人が出会った時には大騒ぎだったぞ。そうだ急げば出立に間に合うかもな」
俺は身体強化の魔法を掛けると街の門目掛けて駆け出して行った。
門を出て見ると荷台に乗ったサイラが見えた。
「元気でな!!」
俺は力の限り叫んで大きく手を振った。
サイラが俺に気づき手を振る。
「僕、絶対に手紙書くからさ!!」
サイラが俺に答える。
見えなくなるまでサイラは手を振っていた。
あいつ字が書けるのかよ。
一ヶ月ほど経ったある日、手紙が届いた。
サイラからだ。
宛名はちゃんと書いてある。
でもこれは大人の字だな。
親が書いたんだな。
中の手紙を読む。
『ついたまちはすはらしいところです。たいとにもみせてやりたい。しんあいなるしんぱいしてくれるひとだいいちごうへサイラ』
元気でやっているようで安心した。
字はミミズがのたくった様な感じだけどもな。
「なに、ニマニマして。ラブレター?」
マイラが手紙を覗き込む。
「ただの友達だよ」
「へったくそな字」
「マイラだって」
「私はもっと上手いわよ」
「そうだ、マイラも友達になってやれよ。性格が似ているから気が合うかも知れない」
「そうね。私も手紙を書くわ。字の練習にもなるし」
文通仲間が出来てサイラも喜ぶだろう。
カウンターで依頼の報告を行った。
「リニアさんの行先は結局分からずだった」
「そうご苦労様。依頼をキャンセルしてもいいわよ」
「いや、まだ続けるよ」
そう言って俺はギルドを後にした。
「マイラ、今日は逃がさないぞ」
んっ、マイラが誰かに追われているのか。
俺は声のした路地に駆け込んで後を追い始めた。
くそう、追いつかない。
「ならば、【身体強化】」
スペルブックを開いて身体強化の魔法を掛ける。
走る速度がぐんと加速した。
「こら待て」
「待つもんか」
追いかけているのはエプロンを着けてフライパンを持った露店の親父だった。
逃げているのは子供だがマイラとは似ても似つかない。
同名の別人か。
「ほら捕まえたぞ」
「放せよ」
どうやら捕まったらしい。
子供は女子で、盗んだと思われる串に刺したソーセージを慌てて頬張った。
「許さん」
フライパンを振り上げる親父。
俺はその腕にしがみついた。
「仲間がいたのか?」
「フライパンで殴打はやり過ぎだ。お尻ぺんぺんぐらいで許してやろうぜ」
「こちとら生活が懸かってる」
「この子が盗んだ商品の金額を倍払う」
「ほんとだな」
俺は財布から銅貨を出すと親父に支払った。
「今度またやったら、痛い目に遭わすからな。覚えてろ」
「へへーんだ。あっかんべー」
糞ガキなところはマイラを思わせる。
歳の頃も大体同じだ。
マイラはもっと殺伐としているがな。
犯罪集団に入らなければこの子のように育っていたかも。
親父は子供を威嚇すると、俺を一瞥してから去って行った。
「盗む元気があれば働けよ」
「説教するんだな」
「フライパンで殴られれば最悪は死ぬ。お前が死んだら悲しむ人もいるだろう」
「いないさ。そんな人は」
「じゃあ、俺がその最初の一人だ。俺はタイト」
「僕はサイラ。礼は言わないぜ。じゃあな」
この子の名前はサイラか。
マイラと聞き違いしたんだな。
「待て、仕事を紹介してやる」
俺はサイラを引き止めた。
「一食の義理で話だけは聞いてやる」
「クラッド商会という所がある。そこで雇ってもらえ。今、紹介状を書いてやる」
紹介状と地図を書いてサイラに持たせてやった。
「気が向いたら行ってみる。じゃ、あばよ」
サイラが去って行き、俺は何となくサイラがクラッド商会に、行かないんじゃないかと思った。
訳ありを全て救ってやる訳じゃない。
ただマイラに名前が似てるから気になっただけだ。
俺は姿隠しの魔法を使うとサイラの後を追い始めた。
サイラは路地をどんどん進んで行き、樹が沢山生えている庭がある邸宅に出た。
見ると子猫が枝に登りミィミィ鳴いている。
「待ってろ。いま僕が降ろしてやる」
サイラはそう言うとするすると樹を登り始めた。
「じっとしてろよ」
枝にまたがり子猫の方に懸命に腕を伸ばすサイラ。
落ちそうだ。
俺は姿隠しの魔法をキャンセルして、身体強化を使い、下で身構えた。
べきべきと音がして枝が折れサイラが落下。
サイラは空中で子猫を抱きしめた。
俺はなんとか下で彼女を受け止める事に成功。
「何時まで触ってるんだ」
「悪い悪い」
お姫様だっこから、サイラを地上に降ろしてやる。
「もうお行き。今度は枝になんか登るんじゃないよ」
「優しいんだな」
「あんた、僕の後をつけたのか?」
「気になったんでな」
「まあなんだ。商会に行ってやるよ。もう一度地図と紹介状をくれ」
今度は商会に行くような気がした。
俺は後をつけるのを辞めた。
そして、次の日クラッド商会で。
「サイラ、いる?」
「サイラなあ、あいつ馴染みの商人にもらわれていったぞ」
そう元締めが教えてくれた。
「急だね」
「俺も驚いている。何でも死んだ娘にそっくりなんだって。商会でサイラと商人が出会った時には大騒ぎだったぞ。そうだ急げば出立に間に合うかもな」
俺は身体強化の魔法を掛けると街の門目掛けて駆け出して行った。
門を出て見ると荷台に乗ったサイラが見えた。
「元気でな!!」
俺は力の限り叫んで大きく手を振った。
サイラが俺に気づき手を振る。
「僕、絶対に手紙書くからさ!!」
サイラが俺に答える。
見えなくなるまでサイラは手を振っていた。
あいつ字が書けるのかよ。
一ヶ月ほど経ったある日、手紙が届いた。
サイラからだ。
宛名はちゃんと書いてある。
でもこれは大人の字だな。
親が書いたんだな。
中の手紙を読む。
『ついたまちはすはらしいところです。たいとにもみせてやりたい。しんあいなるしんぱいしてくれるひとだいいちごうへサイラ』
元気でやっているようで安心した。
字はミミズがのたくった様な感じだけどもな。
「なに、ニマニマして。ラブレター?」
マイラが手紙を覗き込む。
「ただの友達だよ」
「へったくそな字」
「マイラだって」
「私はもっと上手いわよ」
「そうだ、マイラも友達になってやれよ。性格が似ているから気が合うかも知れない」
「そうね。私も手紙を書くわ。字の練習にもなるし」
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