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夏休み

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僕…松原虹希(まつばらこうき)の通っている西上高等学校は、今日から夏休みである。
と、言うことで今、僕の家には“いつめん”と呼ぶべき4人が来ている。
「夏休みと言えば肝試しだろ!」
と、さっそく提案を持ちかけてきたのが遊佐遥馬(ゆさはるま)。
その隣で「え~怖いよ~」と声を揃えて言ったのは高木愛純(たかぎあすみ)と小野寺律(おのでらりつ)。
そして「僕は遊佐に賛成かな」と微笑んだのが平野薫(ひらのかおる)だ。
僕達5人は皆同じクラスでとても仲が良い。
今日うちに集まったのは遊佐曰く、[夏休み充実計画]を立てるためらしい。
「だいたい、肝試しってどこに行くつもりなんだ?」
と、僕が尋ねると遊佐はよくぞ聞いてくれましたと言わんばかりにスマホをかざした。
「呪い歌だよ!の、ろ、い、う、た!」
遊佐のスマホにも[呪い歌]と書かれたサイトが表示されているのが見えた。
「なぁに、それ」
愛純がスマホを覗き込む。
「呪い歌のやり方が書いてあるサイトさ!みんな1度は噂で聞いたことあるだろ?」
そこから薫と遊佐がそれぞれ言葉を投げ合う。
「あ…!歌を唱ったら女の子に追いかけられるってやつか?」
「さっすが薫!話が早い!」
「で、その歌は?」
「とりあえずはこれを見たまえ!」
そう言って遊佐は皆の中心にスマホを置いた。

『 都市伝説サイト:[呪い歌]について 

◎[呪い歌]を始める前に
1、白い紙を用意してください。大きさは構いません。
2、次にハサミで棒人間に肉を付けたような人形の形に紙を切り取りましょう。
すると頭、手、足がざっくりとわかる紙人形が出来ると思います。
それを呪い歌を行う際に使います。
※詳しくは下の説明をご覧下さい
なお、[呪い歌]は必ず5人で行ってください。
それを前後した人数の場合、[呪い歌]は無効となります。

◎[呪い歌]のやり方
1、夕方、8時40分までに踏み切り前に円を作るようにして紙人形を5人で持ちます。
2、紙人形の右手、左手、右足、左足、頭のうち、どれか1つを必ず持ち、目を閉じます。
※持つパーツは1人1つなので、あらかじめ決めておくと良いでしょう。
3、目を閉じると、踏み切りの音が聞こえてきます。
4、3回目のカンカン…と言う音と同時に列車が通るので、その時にそれぞれ持っている紙人形のパーツを自分の方向へ他のパーツと切り離すよう、思い切り引っ張りましょう。
5、電車が通り過ぎるのが確認出来たら目を明けます。
※それぞれ紙人形のちぎれたパーツが手元にあるはずなので、それはこれから決して手放さずに、肌身離さず日頃から持ち歩くようにしてください。
6、目を開けたら、円の状態のまま、呪い歌を5人で唱えてください。
7、唱い終わったら、各自解散して大丈夫です。

◎注意事項
[呪い歌]が成功すると、女の子が貴方達にところへ会いに来ます。
万が一 その後何かが起こってしまった場合につきましては全て自己責任でお願いいたします。

◎呪い歌
【 赤いランドセル背負ったのは
小さな子供だほら走れ
魂が消える夜の前に
子供を探して見つけ出せ
囁き声が聞こえたら
そなたの命はもう無いぞ
1本貰うぞお終いだ
踏み切り前のオトモダチ 】 』

「ええええええ怖っ!!」
記事を読み終え最初に声を上げたのはやはり律だった。
「どーだ、楽しそうだろ!?」
「いやいやいやいや怖いって!」
「律、皆で行くんだから大丈夫だよ、な?虹希」
とここで急に薫から話題を振られたので「あぁ」ととりあえずは僕も賛成の意思を見せた。
「特別夜中にやるわけでも無いんだし、だめかな?」
薫が女子達にも同様に尋ねる。
「……せっかくの夏休みだしね!ちょっと怖いけど私も賛成する!」
愛純が先に了承し、律も最後は
「しゃーないなぁ」
なんて言って了解してくれた。

全員が賛成したところで、
「じゃ!役割分担しよ~ぜ!」
とかなりノリ気な遊佐が言った。
役割分担と言うのはつまり……
「右手、右足、左手、左足、頭の事だな」
「あぁ!ナイス虹希」
遊佐がこちらに向かってウインクをする。
その途端、
「遊佐、きもい!」
と、僕の隣に座ってた律が腹を抱えて笑った。

「僕は左手でいいかな?」
薫が遊佐に尋ねる。
「ああ、皆好きなとこ選べ!俺は~………右足に決めた!」
それに続け、
愛純が右手、律が左足。
そして僕はみんなが選ばなかった“頭”となった。
「みんな、変更はなくていいか?!」
最終確認、と言った形で遊佐が聞く。
そして皆が頷いた。
「じゃあ決定!紙人形は俺の方で作っとくから!」
「日にちは?」
と僕が聞いたところで
「明日!」と遊佐が元気よく言った。
「えぇ~!?」
皆が一気に声を上げる。
「みんなどーせ特に予定ないだろ?こーゆーのは早いうちにやりたいからよ!」
遊佐はいつも急すぎる……と誰もが思いつつも遊佐の言う通り、特に予定もないので結局は全員了承した。
「明日が楽しみだなあ~!」

こうして、僕たちの[夏休み充実計画]は決定した。
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