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第13話 最悪の魔獣

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「・・・でだ ショウスケよ。どのような魔法が欲しい? 心に刻むことのできる呪文のルーンは限られておるが希望画ればもうしてみよ。がははは」

クロレラが心配そうにやってきた。
「自然系の魔法と言えば自然を操り、または姿を変えて補助にも攻撃にも使うことが出来る万能魔法です。
ですが複数のルーンを心に書き込んでしまえば当然ですが力が弱くなってしまいます。
そこで 人間には秘密なのですが天人の間では「火」と「水」と半分ずつ心に書き込んで 後は魔道具をしようするのです。ショウスケさんもそうなさいませんか?」

「俺がずっと思っていたことを魔法にできるならそれを心に刻んでほしい。それは・・」

「それは?」

「ゴミを自然物に還す魔法だ」

「なんと!ゴミを自然物に還す魔法か?うむ・・・それでは・・いいや なるほど。よい魔法じゃ!がははは」

「cabin02には 金属以外ならほとんどのものを浄化する機能はあるけどそれでも ゴミをすべて消せるわけじゃない。だから 地球で旅をしている間、ずっと何とかしたいと思っていたんだ」

ガネーシャは納得したようにうなずくと 額に手を乗せた。
そして ガネーシャの唱えた呪文を復唱していく
「すべてのゴミなるものよ・・・自然のゆりかごに身をゆだね・・・・万物へ還るがよい・・・」

呪文は時々知らない言葉も混じっていたけど呪文という物はそう言うものなのかもしれない。
だけど ときどき魔王が最後の必殺技を使う前に言いそうなセルフが多いと思った。まさかな。
そして・・・ 心の中にルーンが刻まれた感触があり、復唱した言葉はもう頭で呪文を思い出すことはできなくなってしまったが魔法を身につけたようだ。

「さあ ショウスケよ その力を示すのだ がはは」

試しに俺は バザーのゴミに魔法を使う。

「スキル:ネイチャーリバース!!!」

バザーの周辺にあった散らかったゴミたちが 土や花や水と言った自然物へと変わっていった。

「自然物はお前のイメージ通りになるはず。それにしてもこの世界の住人でもないのにこれほどの魔法を使うとは やるではないか。はっはは」
「初魔法 おめでとうございます」

「便利そうな魔法だろ? リザリア?」

せっかくの初魔法だったのにリザリアはいないようだった。
どこへ行ってしまったのだろう。
・・・・
「ねえ ショウスケをいつやるのよ?」
「シアノバ その事だけど・・」
「私たちは天女なのよ わかってる? あなたはいいわよね。神様から魔獣の玉を頂いたでしょ?どうしてあなたばかり特別扱いをされるのかしら?」

リザリアは 天界で女神にもらったガラスの玉を取り出した。
「この玉には魔獣が入っていたの?だから使うなとおっしゃったのね。でも 魔獣だなんてひどいわ・・。」

「何言ってるのよ。 その玉をショウスケに放り投げれば済む話じゃない?」
・・・・
リザリアは ヒョッコリと表れると自然物に還ったゴミを見て「便利な魔法ね」と言っていた。
その後は 新しい魔法と勝利の余韻に浸りながら湖で 最後の夜のキャンプを始める。
織物の店では 結局のところ 織り上がるのに1カ月ほどかかると言われたのでリザリアは村に留まることになるだろう。
俺は 「天のイカズチ」のことがあるので留まれないし 明日にはお別れするつもりだ。
ガネーシャを誘って一緒に旅をするのもいいかもしれない。
cabin02で移動できるなら 二人も喜んでついてきてくれるだろう。

だけど 去る前にきちんと聞いておかなきゃいけない事がある。
結局、最後の最後まで聞くことはできなかったけど 
どちらにしても明日にはこの旅は終わるんだ。 俺たちもここで終わりにするんだ!!
目の前を トコトコと枝を探して歩くリザリアの背中はいつもと同じように見える。今日で終わるのに。

「いい枝がないわね~ 湖だから湿気が多いのかしら?」
「なあ リザリア。クロレラから話を聞いたよ。本当は俺を殺すために異世界へ来たんだろ?」

リザリアの動きが止まった。
少しうつむいて考えているのか? 体は少し震えているようにも見える

「神のイカズチの話 覚えてる? イカズチが落ちたら村ぐらい消えてなくなっちゃうのよ。それに私は天女なの!!」

リザリアは 右手を横に突き出すと手にはガラス玉が握られていた

「これは 神様が私たち天女のために用意してくれた玉よ。おそらくショウスケだけを狙い続ける魔獣のようなものが入っているわ」

リザリアの伸ばした手が小刻みに震えている
ブルブル・・。

しかし 緑色のガラス玉は リザリアの手からそっと地面に置かれた。

「でも いいの。もう 私はショウスケを殺せない。羽衣が完成したら天界に帰って神様にショウスケを殺さないで!って 女神様にお願いするつもりよ。だから 今日でお別れよ」

「cabin02なら地の果てまでも逃げられるぜ ははは」

ふふふと笑って振り返ったリザリアの顔にはいっぱいの涙が浮かんでいた。
本当に お別れなんだな。
リザリアを抱きしめたい。

俺は 手を広げるとリザリアも両手を広げた。
さよなら リザリア。と抱きしめようと思ったその瞬間!!

ガサガサガサ!! ガサガサガサ!!

バキ! バキ! ガッシャ!!!


地面に置かれた召喚玉が はじけて中から植物系の魔物が現れた。
こぶし大の大きさの それはウネウネとツタを伸ばして地面に根っこを突き立てると
心臓の様に鼓動を始める。

ドクン ドクン ドクン

たちまち周囲の草木は枯れ始め、周囲の木々も枯れだすと魔物は大きく育ちツタの先端のすべてが
花が咲いたかのように 目玉が見開かれた。

逃げるか?

だけど リザリアは魔獣に叫ぶ
「なんて ひどい事をするの!!森が死んでいくわ 女神様!!」

成長した植物は すぐそばにいたリザリアをウネウネしたツタでからめとり中吊りにしてしまった。
ショウスケは 枝払いに使っていたナイフを取り出し助け出そうと飛び掛かったが
しかし ナイフは便利なだけが取りえのキャンプ用ナイフ、剣ではないので太刀打ちできない。
ショウスケも捕まり 中吊りになると植物系の魔物は パックリと二つに割れて食虫植物のような大きな口を広げた。

「ショウスケ! あなただけでも逃げて!」

リザリアは 羽衣の糸を取り出して何かしらの力を使おうと身構えたがショウスケの姿を見て手が止まる。

ピ!ピ!ピ!

中吊りになったショウスケが スマートフォンを操作している。
この状況に動じないのは いい事かもしれないが最後の最後がスマートフォン。
死ぬ間際にやっておかなければいけない事なんてないだろう。

「よし できたぞ」

スマートフォンの何が出来たと言うのか?

ガサガサと 茂みをかき分けるもう一つの音がする
現れたのは 遠隔操作でやってきたcabin02だ。

「リザリア 目をつむるんだ!! cabin02、ライト オン!!」

照射された強烈な光が魔物の目を襲った
あまりの光に 二人は口の中ではなく ウネウネしたツタの中に落とされた。
目くらましの時間はそう長くはないだろう。
一人で逃げるならできるかもしれない。だけど リザリアの立場だったらショウスケを置いて逃げることはしないだろう。
だからショウスケも逃げない

「リザリア! リザリアぁ~!!」

ウネウネとしたツタの海の中を必死にかき分けるがヌルヌルとしたツタが二人の邪魔をする。

「ショウスケ」

声が聞こえた。ツタの奥の方からリザリアの声がした。

そのとき、ショウスケの左の薬指に結ばれていた天女の羽衣の糸が実体化している事に気が付いた。
二人の手と手は 羽衣の糸によって以前結ばれていたのだった。
ショウスケは力の限りに糸を引っ張り 衰弱したリザリアを抱きかかえるとcabin02に駆け込んだ。
ビスナトの村まで自動操縦で逃げるんだ。
cabin02の中で衰弱したリザリアを見るとツタの下の方まで落ちたために息が出来ずに窒息しかけているようだった。

人工呼吸するか?
ふくよかな唇に自分の唇を重ねるときの快感が頭の中を駆け巡る。
俺がリザリアの王子様になってもいいのか? 
意を決して唇を近づけると cabin02が左右に揺れ始めるた

・・チュ・・。

ドスン! 

ドスン!

地面をムチでたたくような音がすると 障害物を感知してcabin02は左右に回避しているようだ。
何が起こったんだ?
モニターを外の映像に切り替えると 魔物が根っこを切り離して追いかけてきているようだ。
自らの体をやつれさせながら 干からびながらもムチを振るってcabin02を攻撃してくる。

バシン! バシン! 

ショウスケは ため息をつくとcabin02の後ろのドアを開けた。
風が入り込み cabin02からは 安全のための警報音がけたたましく鳴っている。
風に髪をなびかせて右手を前に突き出したショウスケは「スキル:ネイチャーリバース!!!」を唱えた。

するとやつれた魔獣の触手は自然物へと還り始めた。
「これで逃げれるか。無理でも時間稼ぎぐらいには・・え!!」

魔法に侵食を去れるかのように消えていった。

「うっ ううう?」

リザリアが目を覚ましたようだ。

「大丈夫か?」

「私 夢を見たの。天界でキャンプをする夢よ。」

「ああ 天界キャンプなんて楽しそうだ。ははは」

こうして俺たちは ビスナトの村へ戻ることになった。
だけど あの召喚獣はリザリアの命も狙っていたんじゃないか?
それが事実だとしたらこのまま天界に帰るのはまずいだろう。
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