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第七話「脆弱な絆」
しおりを挟む陰鬱な雲が街を覆い、隠れ家の窓から漏れる僅かな光が彼らの顔を照らしていた。外では総理大臣の直轄部隊が街を歩き、厳しい表情で何かを探している。その厳しさはまるで、街の全てを牢獄に変えようとしているかのようだった。
キシオはミカンの側を離れなかった。彼女は肩の傷口から血を流し、少しずつ力を失っていた。キシオは彼女の手を握り、「大丈夫だ」と囁いたが、その声には確信がなかった。
「キシオ、私、怖い…」ミカンの声は震えていた。普段の明るさは影を潜め、彼女の目には涙が浮かんでいた。
「大丈夫、俺がいるから。何とか逃げる方法を見つける。」キシオは答えたが、自分自身に言い聞かせるようにも聞こえた。
「ありがとう…あなたがいてくれて…」ミカンはキシオの腕の中で身を寄せた。彼女の体温は低く、キシオは何とかして彼女を温めようと腕を強く回した。
彼らは移動を試みたが、ミカンの体力は限界に近づいていた。総理大臣の部隊がどんなに近くにいるか分からない状況で、キシオは彼女を安全な場所に移動させるリスクを計算した。
「キシオ、もしものことがあったら、私の…」ミカンが言いかけると、キシオは彼女の言葉を遮った。
「そんなこと考えるな。俺たちは一緒にいるんだ。」彼の声には決意がこもっていたが、心の中では不安が渦巻いていた。
彼らは慎重に街を進むことにした。キシオはミカンを支え、路地を曲がり、人目を避けながら移動した。総理大臣の部隊の目は厳しく、彼らを見つけ出すために全力を尽くしているようだった。
夜が更け、風が冷たく吹き抜ける中、二人は隠れて休息をとることにした。ミカンの体力はもはや限界で、キシオは彼女がこのままでは持たないことを悟った。
「キシオ…私、あなたが…いてくれて…本当に…」彼女の声はか細く、彼の名を呼ぶたびに弱まっていった。
「ミカン、俺が守る。だから、力を温存して…」キシオは彼女の冷たい頬を温かい手で包み込んだ。彼の目にも涙が滲んでいた。
ミカンの目は恐怖に満ちていたが、彼女は力を振り絞ってキシオの手を握った。彼女の手はもはや冷たく、その緊張は空気に溶けていった。キシオは彼女を守ると誓ったが、その約束は今、総理大臣の部隊によって脅かされていた。
彼らが隠れていた廃墟のドアが突然、蹴り破られた。「動くな!」厳しい声が響き、部隊の影が部屋に満ちた。キシオは立ち上がろうとしたが、重厚な手が彼の肩を押さえつけた。
「ミカンを放してくれ!」キシオの声は激しさを増していたが、武装した部隊には無力だった。彼らはミカンを引きずるようにして外へ連れ出した。彼女の目はキシオを探しており、その目が合った瞬間、彼は彼女の無言の訴えを感じた。
キシオは自身も拘束され、外に連れ出された。彼の心は混乱し、焦燥が彼を襲った。彼はミカンを守ることができなかった。彼女は彼の目の前で、総理大臣の部隊に連れ去られていた。
部隊の車列は静かに街を通り抜け、ミカンとキシオは異なる車に乗せられた。ミカンは車窓から外を見つめ、街の光が遠ざかるのを見ていた。彼女は知っていた。総理大臣の娘として、この逮捕はただの始まりに過ぎないと。
キシオの車内では、彼は拘束されながらもメガネのことを考えていた。ミカンから受け取ったメガネは、今どこにあるのだろうか。その力が真実ならば、それが彼らを救う唯一の希望かもしれない。
車が総理大臣の官邸に到着すると、ミカンはすぐに直轄部隊によって内部へ連れて行かれた。キシオは少し離れた場所で待機させられていた。彼の心は一つの思いで満ちていた。ミカンを取り戻すこと。彼女の安全が彼の全てだった。
官邸の中で、ミカンは疲弊した姿ながらも堂々と立っていた。彼女の前には総理大臣が座り、厳しい視線で娘を見つめていた。部屋の空気は重く、次の瞬間が何をもたらすのか、誰にも予想できなかった。
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