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48.Wデート
2.加奈♡有紀 💕💕
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何十足履いただろうか。有紀子は、加奈子のイメージに合うデザインの靴を見つけられずにいた。加奈子もしっくりくるシューズが見つからない。
大会までまだ日数があるから、今日は買わずに範囲を広げて探そう、と提案した有紀子は、ためし履きした靴で店内を小走りする加奈子の足元を見ながらふと気が付いて言った。
「そう言えば、いつも履いてるあの靴のブランドないね、どこで買ったの? あのブランドから探したらいいの見つかるかも」
「ああ、あれ? あれ東京で買った」
(ここも東京なんだけどね)と思いつつ、どこで買ったのか訊ねて返ってきた話に、有紀子はビックリして顔をあげる。
「じゃあ、あれが一番いいじゃん! あれで走んなよ!」
「うーん、でも有紀子の応援が欲しいんだよ」
今からじゃ新しい靴をオーダーしても間に合わない、と思った有紀子は、1つの提案をした。
「インソールだけ買うのはどう? それに私が応援メッセージを書くの」
「え? それ嬉しいかも」
「でしょ! 今使ってる靴だって、今まで加奈子が頑張ってきた汗の結晶が滲み込んでるんだから、走る時の力になってくれるよ。
そこに私が心を込めたインソールを入れれば、100万人力‼」
背もたれのない四角いソファに座る有紀子のもとへ、大好きなご主人様にじゃれつこう、と無我夢中で駆け寄るわんこのようにやって来て横に座った加奈子は、言葉が唇から出ずに、気持ちのまま胸から直接出た。目一杯の気持ちを表したくて、有紀子の手を取る。
「それいい! 断然いい! それなら絶対10位に入れるよ‼」
随分と大きな夢だと思った有紀子は、どうして10位なのかを訊いた。そして、わけを聞くや否や、加奈子がゴールする姿と、駆け寄って健闘を称える自分の姿、そして抱き合って喜び合うというその時の情景が頭いっぱいに広がって、達成感と喜びが溢れてくる。加奈子がゴールした時、有紀子はずっと後ろをまだ走っているはずだが、そんなことお構いなしに――というか、気が付けもせずに、思わず頬を緩めて言った。
「すごい! さすが加奈子! 私が思っていた通りの頑張り屋さんだ。
もともと運動神経よくて、私性能よすぎって思っていたけど、それにかまけて練習サボったりするような子じゃなかったもんね。
テニスでも勉強でもいつも一生懸命で、でもそれを顔に出さないで、私も頑張らなきゃって思わせてくれる。加奈子のそういうところ私大好き」
あからさまに加奈子は喜んで照れた。手持ち無沙汰な指で髪を梳く姿がとても可愛い。
でれでれもじもじする加奈子に、有紀子が言った。
「じゃあさ、加奈、今日は買うのやめよう。さっそく今日水道橋のお店に電話して、インソールを取り置きしてもらいましょう?」
「そうね、後で電話する」
チラッと壁の時計を見た加奈子につられて、有紀子も時計を見た。そして向き直って顔を寄せて、言葉に気持ちを乗せて加奈子に送る。
「ねえ加奈、インソールならそんなに高くないから、私にプレゼントさせて」
「いいの? じゃあさぁっ、今日私がディナーおごってあげるっ」
食いしん坊の有紀子は、今まで瞳に浮かんでいた星々とは違う星々を瞳にちりばめて、新たに瞳を輝かせる。
もう一度時計を見た加奈子が言った。
「もう午後2時ちょい過ぎだし、お昼ご飯は軽く済まそうよ、夜に備えてさ。
そうだ、近くにたこ焼き屋さんがあるから食べに行こうよ、半分こしよう?」
そう言って、店員さんに買わないことを謝りながら靴を返して、有紀子の手を引いて店を出た。
大会までまだ日数があるから、今日は買わずに範囲を広げて探そう、と提案した有紀子は、ためし履きした靴で店内を小走りする加奈子の足元を見ながらふと気が付いて言った。
「そう言えば、いつも履いてるあの靴のブランドないね、どこで買ったの? あのブランドから探したらいいの見つかるかも」
「ああ、あれ? あれ東京で買った」
(ここも東京なんだけどね)と思いつつ、どこで買ったのか訊ねて返ってきた話に、有紀子はビックリして顔をあげる。
「じゃあ、あれが一番いいじゃん! あれで走んなよ!」
「うーん、でも有紀子の応援が欲しいんだよ」
今からじゃ新しい靴をオーダーしても間に合わない、と思った有紀子は、1つの提案をした。
「インソールだけ買うのはどう? それに私が応援メッセージを書くの」
「え? それ嬉しいかも」
「でしょ! 今使ってる靴だって、今まで加奈子が頑張ってきた汗の結晶が滲み込んでるんだから、走る時の力になってくれるよ。
そこに私が心を込めたインソールを入れれば、100万人力‼」
背もたれのない四角いソファに座る有紀子のもとへ、大好きなご主人様にじゃれつこう、と無我夢中で駆け寄るわんこのようにやって来て横に座った加奈子は、言葉が唇から出ずに、気持ちのまま胸から直接出た。目一杯の気持ちを表したくて、有紀子の手を取る。
「それいい! 断然いい! それなら絶対10位に入れるよ‼」
随分と大きな夢だと思った有紀子は、どうして10位なのかを訊いた。そして、わけを聞くや否や、加奈子がゴールする姿と、駆け寄って健闘を称える自分の姿、そして抱き合って喜び合うというその時の情景が頭いっぱいに広がって、達成感と喜びが溢れてくる。加奈子がゴールした時、有紀子はずっと後ろをまだ走っているはずだが、そんなことお構いなしに――というか、気が付けもせずに、思わず頬を緩めて言った。
「すごい! さすが加奈子! 私が思っていた通りの頑張り屋さんだ。
もともと運動神経よくて、私性能よすぎって思っていたけど、それにかまけて練習サボったりするような子じゃなかったもんね。
テニスでも勉強でもいつも一生懸命で、でもそれを顔に出さないで、私も頑張らなきゃって思わせてくれる。加奈子のそういうところ私大好き」
あからさまに加奈子は喜んで照れた。手持ち無沙汰な指で髪を梳く姿がとても可愛い。
でれでれもじもじする加奈子に、有紀子が言った。
「じゃあさ、加奈、今日は買うのやめよう。さっそく今日水道橋のお店に電話して、インソールを取り置きしてもらいましょう?」
「そうね、後で電話する」
チラッと壁の時計を見た加奈子につられて、有紀子も時計を見た。そして向き直って顔を寄せて、言葉に気持ちを乗せて加奈子に送る。
「ねえ加奈、インソールならそんなに高くないから、私にプレゼントさせて」
「いいの? じゃあさぁっ、今日私がディナーおごってあげるっ」
食いしん坊の有紀子は、今まで瞳に浮かんでいた星々とは違う星々を瞳にちりばめて、新たに瞳を輝かせる。
もう一度時計を見た加奈子が言った。
「もう午後2時ちょい過ぎだし、お昼ご飯は軽く済まそうよ、夜に備えてさ。
そうだ、近くにたこ焼き屋さんがあるから食べに行こうよ、半分こしよう?」
そう言って、店員さんに買わないことを謝りながら靴を返して、有紀子の手を引いて店を出た。
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