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二年生の一学期
🖼️
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こよみが口を挟む。
「水どうするんです?」
「刷毛で塗るか、じょうろでかな」
「途中怖くないですか? ふやけて崩れたりして」
奈緒が答える。
「そうなった時に映える絵を描くの」
「どうやってです?」
「知らない」
エンドレスな問答を断ち切るように、心愛が胸の前でぴしゃりと手のひらを叩いた。
「じゃあこの課題は、わたしたちの一年間の宿題だね。来年の一年のために考えておこうよ」
「はい」と頷く二人の一年の横で奈緒も頷いて口を開く。
「じゃあ、これに絵を描く。『木んメダル』」そう言って、首から輪切りの切り株を取ってベンチに置いて、自らも座る。
ケトルコーンが入っていた紙袋をパレット代わりに絵の具を盛るこの子に、心愛が声をかけた。
「じゃあ、しばらくの間はわたしたち三人が接客するから、お客さんが同時に四人来たらお願いね」
「うん」
それから途切れることなく、二、三人のお客さんが入れ代わり立ち代わりやって来たが、心愛の言葉通り、その都度美術部員が対応してくれた。そのためか、奈緒は見て分かるほどの勢いで絵に没入していく。
心置きなく絵を描き続けたこの子が満足しきった様子で身を起こすと、二本目のカフェラテを飲みながら出来上がった作品を見やる。幸せが満ち満ちた笑顔で頷くと、フェス中だということに気がついたかのように、みんなのほうに身を向けた。そして、一本目のペットボトルで作った金魚浮沈子で遊びつつ、たまに子供たちの様子をベンチから朗らかに眺める。そうこうしているうちに、ついに四人目のお客さんが来たので立ち上がって、就学前後の男児を出迎えて席へと招き入れた。
パイプ椅子に腰かけて机の向かいではがきに筆で絵を描く子供たちの相手をしていたこよみがそれに気がついて、後ろを振り返ってから顔を戻すと、左隣の彩音に耳打ちした。
((なんか、後ろのベンチの左端が、成瀬先輩の専用展示スペースと化しているんですけど。大将ラテのペットといびつなかんな屑のブーケと花だんごに加えて、さっき絵を描いていた輪切りのやつ))
((うん。なんか変に整然としていて、妙な存在感あるよね。置いてあるっていうか、陳列してあるのかな、もしかして))
((だったらすごいよね。だって、ここに来る子供たちも親御さんたちも、必ず一目見るもん。でも結局あれなんだろうね))
🐿️成瀬菜緒🍭
🖌️上原こよみ🎨
🖌️二宮綾音🎨
作画:緒方宗谷
「水どうするんです?」
「刷毛で塗るか、じょうろでかな」
「途中怖くないですか? ふやけて崩れたりして」
奈緒が答える。
「そうなった時に映える絵を描くの」
「どうやってです?」
「知らない」
エンドレスな問答を断ち切るように、心愛が胸の前でぴしゃりと手のひらを叩いた。
「じゃあこの課題は、わたしたちの一年間の宿題だね。来年の一年のために考えておこうよ」
「はい」と頷く二人の一年の横で奈緒も頷いて口を開く。
「じゃあ、これに絵を描く。『木んメダル』」そう言って、首から輪切りの切り株を取ってベンチに置いて、自らも座る。
ケトルコーンが入っていた紙袋をパレット代わりに絵の具を盛るこの子に、心愛が声をかけた。
「じゃあ、しばらくの間はわたしたち三人が接客するから、お客さんが同時に四人来たらお願いね」
「うん」
それから途切れることなく、二、三人のお客さんが入れ代わり立ち代わりやって来たが、心愛の言葉通り、その都度美術部員が対応してくれた。そのためか、奈緒は見て分かるほどの勢いで絵に没入していく。
心置きなく絵を描き続けたこの子が満足しきった様子で身を起こすと、二本目のカフェラテを飲みながら出来上がった作品を見やる。幸せが満ち満ちた笑顔で頷くと、フェス中だということに気がついたかのように、みんなのほうに身を向けた。そして、一本目のペットボトルで作った金魚浮沈子で遊びつつ、たまに子供たちの様子をベンチから朗らかに眺める。そうこうしているうちに、ついに四人目のお客さんが来たので立ち上がって、就学前後の男児を出迎えて席へと招き入れた。
パイプ椅子に腰かけて机の向かいではがきに筆で絵を描く子供たちの相手をしていたこよみがそれに気がついて、後ろを振り返ってから顔を戻すと、左隣の彩音に耳打ちした。
((なんか、後ろのベンチの左端が、成瀬先輩の専用展示スペースと化しているんですけど。大将ラテのペットといびつなかんな屑のブーケと花だんごに加えて、さっき絵を描いていた輪切りのやつ))
((うん。なんか変に整然としていて、妙な存在感あるよね。置いてあるっていうか、陳列してあるのかな、もしかして))
((だったらすごいよね。だって、ここに来る子供たちも親御さんたちも、必ず一目見るもん。でも結局あれなんだろうね))
🐿️成瀬菜緒🍭
🖌️上原こよみ🎨
🖌️二宮綾音🎨
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