585 / 838
二年生の二学期
第百八十八話 手紙に書ききれなかった心情
しおりを挟む
横道を少し行った所で、また奈緒が甲高い歓声を上げると、続けて「ああ~ん、たこ焼き食べた~い」と、とろけるような甘い声を発し、力をためるモンスターのように縮こまって肩とおしりをふりふりしてから、一目散に駆け出す。
小さくて古めかしい居酒屋兼たこ焼き屋さんに向かって、ぴょこぴょこと飛び跳ねて行く少女の背中を、南が呼び止めた。
「ちょっとちょっと、今買ったメロンパンどうする気、食べきれないでしょ」
「両方食べられる」
そう言葉を転がり落とすように後ろへと放つ。
なんかかわいいおもちゃみたいなこの子の後ろ姿を見つめる南と務が、親御さんのようにあとからついて来る。
瞬く間に注文を終えた奈緒がたこ焼きを受け取って、それをフードパックごと務に渡す。そして輪ゴムをはずすと、中に並んだたこ焼きの一つに串をさして掬い上げ、開いた唇へと運ぶ。
見守っていた南が呆れた。
「あげるのかと思ったら、持たせただけで自分で食べるの」
「うーん、外はふわふわ、中はとろとろで、おーいしーい」
十個入りを買った奈緒から一つ「あーん」としてもらった南が、たこ焼きの熱気に乗せて感嘆の言葉を吐いた。
「おいしい。わたし、カリカリのたこ焼きしか食べたことないから新鮮。小麦粉のしっかりとした甘みがあって、ほのかに鰹だしの風味がする。青のりがかかっていないのも新鮮、大抵かかってるのに。六個三百、八個四百で、十個五百円か、値段も良心的」
奈緒は艶羨でもするかのような視線を務に送る。
「いいなぁ、務君は。おうちの近くに商店街があって。毎日おやつ三昧で、食べ 放 題」
「成瀬さんもおやつ三昧でしょ。僕と違って幅広く活動的だし。戸越公園、荏原中延、旗の台の商店街のお土産くれるじゃない」
「うん、今度 戸越銀座にも 南ちゃんと行くの。しかも電車賃半額。いいね、ありがたくて、いいね」奈緒が納得に納得を重ねるように頷く。「あっ、でもうちの近くにたこ焼き屋さんがない。ここに来るしかないよ、これからは」
小さくて古めかしい居酒屋兼たこ焼き屋さんに向かって、ぴょこぴょこと飛び跳ねて行く少女の背中を、南が呼び止めた。
「ちょっとちょっと、今買ったメロンパンどうする気、食べきれないでしょ」
「両方食べられる」
そう言葉を転がり落とすように後ろへと放つ。
なんかかわいいおもちゃみたいなこの子の後ろ姿を見つめる南と務が、親御さんのようにあとからついて来る。
瞬く間に注文を終えた奈緒がたこ焼きを受け取って、それをフードパックごと務に渡す。そして輪ゴムをはずすと、中に並んだたこ焼きの一つに串をさして掬い上げ、開いた唇へと運ぶ。
見守っていた南が呆れた。
「あげるのかと思ったら、持たせただけで自分で食べるの」
「うーん、外はふわふわ、中はとろとろで、おーいしーい」
十個入りを買った奈緒から一つ「あーん」としてもらった南が、たこ焼きの熱気に乗せて感嘆の言葉を吐いた。
「おいしい。わたし、カリカリのたこ焼きしか食べたことないから新鮮。小麦粉のしっかりとした甘みがあって、ほのかに鰹だしの風味がする。青のりがかかっていないのも新鮮、大抵かかってるのに。六個三百、八個四百で、十個五百円か、値段も良心的」
奈緒は艶羨でもするかのような視線を務に送る。
「いいなぁ、務君は。おうちの近くに商店街があって。毎日おやつ三昧で、食べ 放 題」
「成瀬さんもおやつ三昧でしょ。僕と違って幅広く活動的だし。戸越公園、荏原中延、旗の台の商店街のお土産くれるじゃない」
「うん、今度 戸越銀座にも 南ちゃんと行くの。しかも電車賃半額。いいね、ありがたくて、いいね」奈緒が納得に納得を重ねるように頷く。「あっ、でもうちの近くにたこ焼き屋さんがない。ここに来るしかないよ、これからは」
0
あなたにおすすめの小説
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜
遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった!
木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。
「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」
そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。
妹の仇 兄の復讐
MisakiNonagase
青春
神奈川県の海に近い住宅街。夏の終わりが、夕焼けに溶けていく季節だった。
僕、寺内勇人は高校三年生。妹の茜は高校一年生。父と母との四人暮らし。ごく普通の家庭で、僕と茜は、ブラコンやシスコンと騒がれるほどではないが、それなりに仲の良い兄妹だった。茜は少し内気で、真面目な顔をしているが、家族の前ではよく笑う。特に、幼馴染で僕の交際相手でもある佑香が来ると、姉のように慕って明るくなる。
その平穏が、ほんの些細な噂によって、静かに、しかし深く切り裂かれようとは、その時はまだ知らなかった。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。
昼寝部
キャラ文芸
俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。
その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。
とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。
まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。
これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。
遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。
彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。
……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。
でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!?
もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー!
ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。)
略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる