エスパー&ソーサラー

緒方宗谷

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ゴブリン

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 がらんと静まり返った村の広場を抜け、3人は外と繋がる大きな扉の前で止まった。
 「精霊たちが騒いでる。もう近くにゴブリンが来てますよ」
 耳元でささやく精霊たちの声に耳を澄まして聞いていたサラが、得た情報を2人に伝えた。不安そうなサラにミリィが微笑む。意気往々と自己分析しながら背伸びをした。
 「まぁ、お腹も一杯だし、負けることは無いでしょ」
 「昨日みたいなごぼうパンチじゃ、沢山のゴブリンは倒せませんよ」
 後ろからつつくように発せられたサラの言葉に、ミリィはギロッと振り向いて、異常に大きなソニッククロウをチラつかせた。
 「何ですって?」
 ミリィの殺気にビビッたサラは、冷や汗をかきながら何でもありません、と慌てて取り繕う。
 扉の横に添って設置された大きな歯車の下にある棒のついた車輪を手動でまわすと、ゴゴゴ・・・、と重々しい音を立てて扉が開いていく。塀の外に出た途端ゴブリン独特の嫌な臭いが鼻を突き、ボブッガボッボブッ、と明らかに30匹以上はいるかと思われる低い唸り声が辺りに木霊していた。
 「ひぇ~、なんか沢山いますよ!? ミリィさん!!」
 「そうみたいね・・・、厄介なことに巻き込んでくれちゃって・・・」
 ミリィの頬を一筋の汗が流れ落ちていく。せいぜい10匹程度かと思っていた。ゴブリンと戦うには、できるだけ接近戦を避けたほうが有利だ。ミリィの場合、中距離戦闘を得意とする上、装備している武器はレディソード、盾は持っていない。
 トロルより力は無いとはいえ、人間の頭蓋骨なんてワンパンで砕くだけの力はある。オリハルコンとはいえ、細身の剣なんて簡単に折れてしまうだろう。刀身に霊力を注ぎ込みつづければ圧倒的な強度を誇るが、ミリィは長時間それが出来るほど器用ではないし、キャパシティもそれほど高くは無い。
 文句タラタラのミリィを前にして、相当居づらそうなラングが言う。
 「スマン、でも、向こうから襲ってきたんだ。新兵の監督をしていたら・・・」
 「言い訳しない!!」
 「はい・・・」
 ミリィの一喝で、ラングは黙り込んだ。
外に出ると、3人に着いて来た若者が車輪をまわして扉を閉める。その音で空気が震えるのを背中で感じながら進んでいった。扉はすぐに完全に閉まってしまった。もう逃げ道は無い。
 ラングの鎧についた血の匂いを嗅ぎつけ、すでに3人は取り囲まれている。四方八方にいるゴブリンは、その場所場所でブロック化している。殺されたゴブリンは地位が高かったらしく、一部族だけではなく周辺の部族も出てきているようだ。
 下位の剣士であるファイタークラスでもいいから数人ほしい。ファイターより3つも位の高いナイトクラスのラングがいるのは有難いが、ゴブリンの数を考えると、1人だけではツライ。
 それに、ナイトクラスといっても頭にローがつく、国境警備小隊小隊長という下の下の下の騎士、ラング隊の部下は5人しかいない。下級騎士のくせに何故高価な銀の鎧を装備しているのだか。そもそも銀は脆いので肉体のない魔族と戦うには良いが、肉弾戦等には向かない。

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