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新たな旅立ち
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「うぇ~、ミリィさ~ん、気持ち悪いですぅ~」
「大丈夫?(お願いだから、こっちに吐かないで~!!)」
吐けそうで吐けない。サラは、そんな最悪の状況を何日も体感していた。ミリィが、ウォーロックに助けを求めるような瞳を向けると、気付かないふりをして、口笛を吹き始める。
何とかウィード公国の玄関口ムーブルまで持ちこたえ、青い顔をして口を押さえるサラは、飲食店に入るなりテーブルに倒れこんだ。
サラを除いて軽く夕食を取り、まだ空きのある宿を探して町に出る。
「もう、空きなんかないんじゃないか?」とウォーロックに、ミリィが「う~ん・・・」と唸る。
昼間なら賑わっているはずだが、既に日が暮れてだい ぶ経つ。この時間のなると、酒場以外は静まり返っている。
ちゃんとした宿屋から、みすぼらしい酒場兼宿屋までも周り、残ったのは薄気味悪い路地裏のほうしかない。もし、そこに宿屋がなければ、倉庫かどっかで寝るしかなくなる。
サラが怯えだした。
「なんか、オバケが出そうじゃありません?」
ザザッ
「きゃぁぁぁぁ! でたぁ~!!」
バコッ
「いっ、いきなり何するんですか!?」
見ると、口髭を生やした中年の男が立っていた。オデコには、ミリィに殴られできたコブがある。
一番にサラが驚くかと思いきや、真っ先に取り乱したのはミリィだった。
「ごめんなさい・・・、てっきりオバケかと・・・」
「オバケが出るなら、まだいい。6日ほど前から、この道では女性ばかりを狙った猟奇殺人があるからな」
それを聞いて、サラがミリィの後ろに隠れた。
「うぇぇ~、わたし達、危ないですよ~」
4人は、寂れていたものの一軒の宿屋を紹介してもらい、男に連れて行ってらった。
寂れた外観以上に、中は更に寂れている。床は歩くたびにギシギシなって、いかにもオバケ屋敷といった様子だ。チビリそうなくらいビビッていたミリィとサラは、同じ部屋に泊まることにした。
ミリィに呼ばれたラングとウォーロックが、向かいにあるミリィの部屋にいってみると、2人に返事を返しもせず、サラと一緒に窓の外をジッと見ている。
「どうした?」とウォーロックが声をかけた。
「見て」
ミリィにいわれるまま窓の外を見ると、昨日猟奇殺人事件があった現場が真下に見える。
ミリィは真顔で言った。
「ねぇ・・部屋、換わってくれない?」
「たかが殺人鬼にビビるな!」
「冗談よ」
本当のところ凄くビビッていたが、安心して夜を過ごすために犯人を捕まえないか、とミリィは提案した。それを手伝わせるために2人を呼んで、作戦をたてようとしていたのだ。
「――というわけで、サラがオトリ役をやってね?」
「なっ!? 何でですか!!? ミリィさんのほうが強いんだから、ミリィさんがやればいいじゃないですか!!」
立場上、なし崩し的にオトリ役がサラに決まり、それを少し離れたところから、囲むようにして3人が追尾することになった。
月も雲に隠れた暗闇の中、1人にされたサラは、少しだけ霊力を放ちながらトボトボ歩いていく。その霊力を頼りに3人が追跡するが、殺人鬼はいっこうに現れない。だんだんと4人に睡魔が忍び寄ってくる。
ついにミリィがキレた。
「もう!! いつになったら現れるのよ!?」
「殺人鬼がか?」
「そうよ!!」
次の瞬間、自分以外に誰もいないはずであることに気付いた。振り向くと、自分めがけて振り上げられる鎌が目に入った。
「ぅきゃぁぁぁぁぁぁ~!!」
とっさに石を想像して実体化させて相手にぶつけまくるが、効いている様子がない。転げるようにして鎌を避け、ソニックブームを放とうとしたときには、もう姿はなかった。
「ミリィ殿!!」
「ミリィさん!?」
少ししてラングとサラの2人が駆けつけ、遅れてウォーロックもやってきた。
「オトリはサラなのに、何でわたしに来るのよ~!!」
その後、ミリィは意地になって殺人気を探したが、見つかることはなかった。
「大丈夫?(お願いだから、こっちに吐かないで~!!)」
吐けそうで吐けない。サラは、そんな最悪の状況を何日も体感していた。ミリィが、ウォーロックに助けを求めるような瞳を向けると、気付かないふりをして、口笛を吹き始める。
何とかウィード公国の玄関口ムーブルまで持ちこたえ、青い顔をして口を押さえるサラは、飲食店に入るなりテーブルに倒れこんだ。
サラを除いて軽く夕食を取り、まだ空きのある宿を探して町に出る。
「もう、空きなんかないんじゃないか?」とウォーロックに、ミリィが「う~ん・・・」と唸る。
昼間なら賑わっているはずだが、既に日が暮れてだい ぶ経つ。この時間のなると、酒場以外は静まり返っている。
ちゃんとした宿屋から、みすぼらしい酒場兼宿屋までも周り、残ったのは薄気味悪い路地裏のほうしかない。もし、そこに宿屋がなければ、倉庫かどっかで寝るしかなくなる。
サラが怯えだした。
「なんか、オバケが出そうじゃありません?」
ザザッ
「きゃぁぁぁぁ! でたぁ~!!」
バコッ
「いっ、いきなり何するんですか!?」
見ると、口髭を生やした中年の男が立っていた。オデコには、ミリィに殴られできたコブがある。
一番にサラが驚くかと思いきや、真っ先に取り乱したのはミリィだった。
「ごめんなさい・・・、てっきりオバケかと・・・」
「オバケが出るなら、まだいい。6日ほど前から、この道では女性ばかりを狙った猟奇殺人があるからな」
それを聞いて、サラがミリィの後ろに隠れた。
「うぇぇ~、わたし達、危ないですよ~」
4人は、寂れていたものの一軒の宿屋を紹介してもらい、男に連れて行ってらった。
寂れた外観以上に、中は更に寂れている。床は歩くたびにギシギシなって、いかにもオバケ屋敷といった様子だ。チビリそうなくらいビビッていたミリィとサラは、同じ部屋に泊まることにした。
ミリィに呼ばれたラングとウォーロックが、向かいにあるミリィの部屋にいってみると、2人に返事を返しもせず、サラと一緒に窓の外をジッと見ている。
「どうした?」とウォーロックが声をかけた。
「見て」
ミリィにいわれるまま窓の外を見ると、昨日猟奇殺人事件があった現場が真下に見える。
ミリィは真顔で言った。
「ねぇ・・部屋、換わってくれない?」
「たかが殺人鬼にビビるな!」
「冗談よ」
本当のところ凄くビビッていたが、安心して夜を過ごすために犯人を捕まえないか、とミリィは提案した。それを手伝わせるために2人を呼んで、作戦をたてようとしていたのだ。
「――というわけで、サラがオトリ役をやってね?」
「なっ!? 何でですか!!? ミリィさんのほうが強いんだから、ミリィさんがやればいいじゃないですか!!」
立場上、なし崩し的にオトリ役がサラに決まり、それを少し離れたところから、囲むようにして3人が追尾することになった。
月も雲に隠れた暗闇の中、1人にされたサラは、少しだけ霊力を放ちながらトボトボ歩いていく。その霊力を頼りに3人が追跡するが、殺人鬼はいっこうに現れない。だんだんと4人に睡魔が忍び寄ってくる。
ついにミリィがキレた。
「もう!! いつになったら現れるのよ!?」
「殺人鬼がか?」
「そうよ!!」
次の瞬間、自分以外に誰もいないはずであることに気付いた。振り向くと、自分めがけて振り上げられる鎌が目に入った。
「ぅきゃぁぁぁぁぁぁ~!!」
とっさに石を想像して実体化させて相手にぶつけまくるが、効いている様子がない。転げるようにして鎌を避け、ソニックブームを放とうとしたときには、もう姿はなかった。
「ミリィ殿!!」
「ミリィさん!?」
少ししてラングとサラの2人が駆けつけ、遅れてウォーロックもやってきた。
「オトリはサラなのに、何でわたしに来るのよ~!!」
その後、ミリィは意地になって殺人気を探したが、見つかることはなかった。
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