20 / 40
手紙
しおりを挟む
こんにちは、真一。
遅くなりましたが、みのるの進級おめでとうございます。みのるは4年生になったのですね、とても格好良く成長しているのではないかと想像する次第です。
さて今回、そのみのるの学校の事で手紙を書きました。
先日、みのるの事で、家庭支援センターから職員の方が2人お見えになりました。中学校の先生から、10月に入って以降一度も登校していないので心配していると相談を受けたそうです。
真一も1月に1カ月間仕事をお休みして、みのるの不登校について色々考えたり行動したりしたと思います。
みのるのお母さんは東京だし、真一も仕事をしているので、家事や教育についてやりたいことがうまくいかずに悩んでいると思いますし、これからの事に不安を抱いているのではないでしょうか。
先日にも手紙で伝えしましたが、妻や僕としてはみのるを寮に入れてちゃんとした生活を送れるように教育をしてもらう方が良いと思います。
父親としては大切な我が子と離れて暮らすのはとても心苦しいことと思うけれども、みのるの将来や真一の将来を考えると早いうちに決断した方が良いです。
妻も僕もいつもみのるのことは心配していますし、離れて暮らすのはさびしいですが、みのるの義務教育が終わった後の事を考えると、我慢をする時と考えています。
学校の先生やセンターの方が訪問してくださっているのもみのるが義務教育に守られているからです。
それに、18歳以降も子育てや教育に関してセンターから支援を受けられるわけではありません。
年初にみのるを東京に送り出すという話をお母さんから聞いていますので、それまでの間でもいいのですが、東京に行かないのであれば中学卒業まで寮に入れて就職させて自活させるとか、寮生のまま高校に行かせるとかも考えておいた方が良いでしょう。
将来の事を考えてみてください。
もしひきこもった状態のまま中学卒業となれば、高校受験もしないでしょう。バイトも就職もしないでしょう。
20歳になっても30歳になってもひきこもったままの若者は多くいます。
みのるが30代40代の時、真一は50代60代です。その時も真一はひきこもったみのるとの生活の面倒を見なければなりません。
真一自身が老後の入り口にさしかっているのに、どうなるのでしょうか。僕達も80代90代で自分の老後のまっただ中で四苦八苦でしょうから、余裕はないでしょう。
昨年、真一は自分の老後を心配していましたね、自分自身の老後のためにも、みのるの自立心を養い、自立した一個の人間として自らの2本の足で立てるように教育を施設でしてもらいましょう。
度々テレビでひきこもりが起こす事件が報道されています。
先日も同居家族を殺害し、連絡が取れないことを心配して見に来た兄弟の妻を殺害、さらに訪れた近所の男性を殺害するという事件がありました。
過去には10代前半の少女を誘拐し、10年くらい自室に監禁していた事件も起きていますし、探せば似たような事件はたくさん見つかると思います。
ひきこもりがひきこもっていられるのは、衣食住を提供している者がいるからです。具体的に言えば家族、みのるに対しての真一です。
犯罪の話は極端な例ですが、みのるが中年になっても引きこもっているとか、その生活費の負担のために真一の老後生活が立ち行かないとかと言う想定は、リアルにしておくべきです。
お母さんもお父さんもみのると遊んでいて、みのるはなんて頭の良い子なのだろうと感心することが度々あしました。
特にカードゲームを作ることに関してはすごい才能だと思います。無数のキャラクターを描き、いくつもの複雑なルールを考え出したりします。
僕が12歳の時、僕も友達もそんなことはできませんでした。ほとんどは外で鬼ごっこなどをして走り回っていましたし、ボードゲームやカードゲームは市販のトランプや花札で遊ぶにとどまっていました。
カードゲーム的なものは何度か作ったことはありますが、みのるのように複雑で高度なものはできませんでした。
みのるが世に出れば、必ず成功すると思います。どんな夢を描いたとしてもみのるなら現実にできることでしょう。真一も僕達と同じくみのるの成功した将来を思い描いていると思います。
ですが、今のままではどんな才能も何にもなることなく無くなってしまいます。
狭く閉ざされた部屋に閉じこもっていては、無限に広がるみのるの可能性を殺してしまいかねません。今が残り少ない決断の時と思います。
みのるは寮生活など嫌がるでしょうが、親子の情に流されることなく、真一がそれを決断し実行してくれることを願っています。
2016年11月27日
正雄
少し前、父親の正雄からの手紙がポストに入っていた。切手も消印も無いから、わざわざこの家にまで来てくれたのだろう。真一は何度も読み返したが、ピンとこない。
父親だからだろうか、我が子がニュースで報道されているような行為に及ぶなど、いくら考えても思い浮かばない。
正雄は、とても気を使って手紙を書いていた。初めに進学のお祝いを述べて成長したみのるを褒め、親心をくすぐる。その上で養育の大変さに理解を示し、真一の努力をねぎらい称賛した。
持ち上げておいてからまず結論を述べて、重い現実を続ける。不安感と義務感を掻き立て、実例を出して恐怖を植える。落ち込んで拒絶しようと思った矢先に、急にみのるを褒めちぎる。
前途揚々なみのるの未来を想像させてから、1歩踏み出す勇気を与え、最後に決断を迫った。
真一の頭に残ったのは、みのるを褒め讃える文のみだ。
父は、この様な手紙を書くような人ではない。たぶん母に促されて書いたのだろう。真一はそう思った。
しかし、真一の深層心理の奥では、正雄にかき混ぜられた不安が渦を巻いて、段々と粘りを帯び始める。教育する立場としての無能さに気が付いていた。
遅くなりましたが、みのるの進級おめでとうございます。みのるは4年生になったのですね、とても格好良く成長しているのではないかと想像する次第です。
さて今回、そのみのるの学校の事で手紙を書きました。
先日、みのるの事で、家庭支援センターから職員の方が2人お見えになりました。中学校の先生から、10月に入って以降一度も登校していないので心配していると相談を受けたそうです。
真一も1月に1カ月間仕事をお休みして、みのるの不登校について色々考えたり行動したりしたと思います。
みのるのお母さんは東京だし、真一も仕事をしているので、家事や教育についてやりたいことがうまくいかずに悩んでいると思いますし、これからの事に不安を抱いているのではないでしょうか。
先日にも手紙で伝えしましたが、妻や僕としてはみのるを寮に入れてちゃんとした生活を送れるように教育をしてもらう方が良いと思います。
父親としては大切な我が子と離れて暮らすのはとても心苦しいことと思うけれども、みのるの将来や真一の将来を考えると早いうちに決断した方が良いです。
妻も僕もいつもみのるのことは心配していますし、離れて暮らすのはさびしいですが、みのるの義務教育が終わった後の事を考えると、我慢をする時と考えています。
学校の先生やセンターの方が訪問してくださっているのもみのるが義務教育に守られているからです。
それに、18歳以降も子育てや教育に関してセンターから支援を受けられるわけではありません。
年初にみのるを東京に送り出すという話をお母さんから聞いていますので、それまでの間でもいいのですが、東京に行かないのであれば中学卒業まで寮に入れて就職させて自活させるとか、寮生のまま高校に行かせるとかも考えておいた方が良いでしょう。
将来の事を考えてみてください。
もしひきこもった状態のまま中学卒業となれば、高校受験もしないでしょう。バイトも就職もしないでしょう。
20歳になっても30歳になってもひきこもったままの若者は多くいます。
みのるが30代40代の時、真一は50代60代です。その時も真一はひきこもったみのるとの生活の面倒を見なければなりません。
真一自身が老後の入り口にさしかっているのに、どうなるのでしょうか。僕達も80代90代で自分の老後のまっただ中で四苦八苦でしょうから、余裕はないでしょう。
昨年、真一は自分の老後を心配していましたね、自分自身の老後のためにも、みのるの自立心を養い、自立した一個の人間として自らの2本の足で立てるように教育を施設でしてもらいましょう。
度々テレビでひきこもりが起こす事件が報道されています。
先日も同居家族を殺害し、連絡が取れないことを心配して見に来た兄弟の妻を殺害、さらに訪れた近所の男性を殺害するという事件がありました。
過去には10代前半の少女を誘拐し、10年くらい自室に監禁していた事件も起きていますし、探せば似たような事件はたくさん見つかると思います。
ひきこもりがひきこもっていられるのは、衣食住を提供している者がいるからです。具体的に言えば家族、みのるに対しての真一です。
犯罪の話は極端な例ですが、みのるが中年になっても引きこもっているとか、その生活費の負担のために真一の老後生活が立ち行かないとかと言う想定は、リアルにしておくべきです。
お母さんもお父さんもみのると遊んでいて、みのるはなんて頭の良い子なのだろうと感心することが度々あしました。
特にカードゲームを作ることに関してはすごい才能だと思います。無数のキャラクターを描き、いくつもの複雑なルールを考え出したりします。
僕が12歳の時、僕も友達もそんなことはできませんでした。ほとんどは外で鬼ごっこなどをして走り回っていましたし、ボードゲームやカードゲームは市販のトランプや花札で遊ぶにとどまっていました。
カードゲーム的なものは何度か作ったことはありますが、みのるのように複雑で高度なものはできませんでした。
みのるが世に出れば、必ず成功すると思います。どんな夢を描いたとしてもみのるなら現実にできることでしょう。真一も僕達と同じくみのるの成功した将来を思い描いていると思います。
ですが、今のままではどんな才能も何にもなることなく無くなってしまいます。
狭く閉ざされた部屋に閉じこもっていては、無限に広がるみのるの可能性を殺してしまいかねません。今が残り少ない決断の時と思います。
みのるは寮生活など嫌がるでしょうが、親子の情に流されることなく、真一がそれを決断し実行してくれることを願っています。
2016年11月27日
正雄
少し前、父親の正雄からの手紙がポストに入っていた。切手も消印も無いから、わざわざこの家にまで来てくれたのだろう。真一は何度も読み返したが、ピンとこない。
父親だからだろうか、我が子がニュースで報道されているような行為に及ぶなど、いくら考えても思い浮かばない。
正雄は、とても気を使って手紙を書いていた。初めに進学のお祝いを述べて成長したみのるを褒め、親心をくすぐる。その上で養育の大変さに理解を示し、真一の努力をねぎらい称賛した。
持ち上げておいてからまず結論を述べて、重い現実を続ける。不安感と義務感を掻き立て、実例を出して恐怖を植える。落ち込んで拒絶しようと思った矢先に、急にみのるを褒めちぎる。
前途揚々なみのるの未来を想像させてから、1歩踏み出す勇気を与え、最後に決断を迫った。
真一の頭に残ったのは、みのるを褒め讃える文のみだ。
父は、この様な手紙を書くような人ではない。たぶん母に促されて書いたのだろう。真一はそう思った。
しかし、真一の深層心理の奥では、正雄にかき混ぜられた不安が渦を巻いて、段々と粘りを帯び始める。教育する立場としての無能さに気が付いていた。
0
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
現代文学
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる