猫のモモタ

緒方宗谷

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嫉妬深いカッコウの話

思い方で見え方違う

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 モモタが森の中をお散歩していたとき、カッコウが他の鳥の巣に下り立つのを見つけました。
 何をするのだろう、と不思議に思ったモモタは、その様子を見ていました。
 「あっ!カッコウさん、何てことするの!?」
 辺りをキョロキョロしていたカッコウは、なんと巣にあった卵を1つまた1つと捨てていきます。
 「カッコウさんだって、知ってるでしょう?
  卵は赤ちゃんになるんだよ、それを捨てちゃうなんて、どうしてそんなひどいことできるの?」
 すると、カッコウは驚くことを言いました。
 「良いのよ、だってあの奥さん、とても幸せそうだったから」
 「幸せそう?幸せそうならそれでいいじゃない?温かく見守ってあげようよ。
  卵だって生きてるんだよ、生きるために食べるならまだしも、意味なく捨てるなんて良くないじゃない?」
 「意味はあるわよ、こうすると私幸せになれるの」
 「誰かを不幸にすることで?おかしーの、そんなことってないじゃない。
  幸せを見てると、幸せになれるものだよ」
 「ダメよ、不幸にならないと。
  みんな不幸にならないと、わたし幸せになれないの」
 無駄に命を奪うカッコウをモモタはたしなめましたが、カッコウは無視して、巣にあった卵を全部捨てしまいました。
 「あー、いけないんだ!全部捨てちゃった」
 怒って叫んだモモタに、カッコウが言います。
 「とても幸せそうなのが許せないの。
  同じような鳥なのに、とても幸せそうな夫婦なんだもの」
 とても理解できる理屈ではありません。
 「見てよ、私の卵、あの夫婦、私の卵だと気が付かずに温めるのよ」
 「なんてひどいことするの?」
 「ひどい?ひどくなんてないわ、私が不幸なのに、幸福でいるのがいけないのよ」
 ワケが分かりません。
 「自分が不幸なのと、この巣の夫婦は関係ないんじゃない?」
 「ないかもしれないわね」
 モモタは、どうして不幸なのか訊きました。
 「毎日なにも無いの。
  朝起きたらご飯を食べて、お昼になったご飯を食べて、夜になったらご飯を食べるの。
  そして夜になったら寝るのよ、こんなのって耐えられないわ。
  猫ちゃんだって耐えられないでしょう?」
 「普通じゃないの?この巣の鳥さんだって同じだと思うよ」
 「違うわ。
  この巣の奥さんは、とても良い朝を目覚めるの。
  美味しそうなご飯を食べて、温かいお昼を迎えると、新鮮なお昼を食べるのよ。
  星が煌めく夜になる前に、お腹いっぱいお夕食を食べるの。
  そして、月の光に抱かれて、素晴らしい夢を見るの」
 それを聞き終わったモモタは言いました。
 「へんなのー。同じ森に住んでるんだから、同じ朝を迎えて、同じ昼を迎えて、同じ夜を迎えるでしょう?
  食べる物もそう変わらないでしょ?そもそも自分で選べるんだから」
 違いがあるとしたら、見る夢くらいだとモモタは思いました。
 でも確かに、同じイワシでも、自分がお魚屋さんからもらったイワシよりも、別の子がもらったイワシの方が大きくて美味しそうに思えることがあることを思い出したモモタでした。
 「でも、比べてみると、僕の方が大きかったりするんだよね」

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