猫のモモタ

緒方宗谷

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昔を懐かしむ老犬の話

やなことは忘れよう

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 あるお家のお庭に、おじいちゃんの犬がいました。
 「昔は良かったの-」
 塀の上を歩いていたモモタに、門の外を見ていたおじいちゃんが呟いたので、モモタは家並みを見渡して、訊きました。
 「どう良かったの?」
 「昔、この辺りは空き地が多くて、遊ぶところがたくさんあったのじゃ」
 「そうなんだねー、空き地があるとススキや猫じゃらしがあって楽しんだー」
 今は、空き地なんて1つもありません。
 「友達の犬も多くての、よく集まって遊んだんじゃよ」
 「今でも、良く集まっているよ。
  向こうの公園とか、ワンちゃん猫ちゃんカフェで遊んでいるよ」
 おじいちゃんは笑って言います。
 「そんなもんじゃないよ。
  みんなでどこまでも走っていけたんじゃ、どこまでも、どこまでも。
  道も今みたいに硬くなかったし、真夏でも暑くならなかったから、歩きやすかったしな」
 「そうなの?今は肉球が焼けるほど熱い時もあるもんね」
 おじいちゃんは夢を見ているかのように、若い頃の話をしてくれました。
 モモタにとっては、体験した事のない内容でしたので、面白い話ばかりです。
 「土がいっぱいだと、色々なお友達に会えるから、楽しいんだよね。
  良いなー、僕も昔みたいな町に住んでみたいなー」
 それを聞いていたお隣に住んでいる若い犬が言いました。
 「でも、野良犬が多いし、飼い犬もクサリで繋がれていなかったり、教育がなってなかったりして、大変だったらしいよ」
 「話を聞いてると、そんな風には聞こえないけどな。
  君は、どう思ってるの?」
 「今が良いに決まってるじゃん。
  ご飯は美味しいし、おやつは貰えるしね。
  昔は猫まんまばかりだったらしいよ、犬なのに」
 「僕、猫まんま大好きだよ」
 「でも、毎日それじゃ、飽きちゃうだろ?」
 「うーん、そうかな。
  それじゃあ、お散歩するにはどう?今より楽しかったりするのかも」
 「土が多かったとは言っても、道路のことだから、そこにお友達は住んでいないよ。
  それに砂っぽくて、車が通る度に、いつも砂が目に入って痛かったらしいし。
  昔が常にいいと思うのは、思い出だからさ」
 思い出の価値って、みんな次第。
 だからこそ価値があるのかなぁ、と思うモモタでした。

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感想 1

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