猫のモモタ

緒方宗谷

文字の大きさ
267 / 514
怖いもの知らずな日本猿の話

見下す姿勢が成長を止める

しおりを挟む
 猿たちは、毎日毎日畑を荒らしにやってきます。
 おじいちゃんは、自分達が食べるためにお野菜を作っているのに、サルたちに食べられてばかりでは、自分達の食べる分がなくなってしまうと思って、サルたちを追い返す策を考えました。
 モモタが見ている前で、たくさんのロケット花火を用意しています。そして、畑の数か所に柱を立てて、センサーを取り付けました。
 もし猿がやってきたら、センサーが作動して、ロケット花火が発射される仕組みです。
 おじいちゃんは妙案が思いついたと思って、自分で自分を褒めています。
 ひゅるるるるぅぅ~・・・パーン!!
 猿たちがびっくりして逃げていくのをお部屋の中から見ていたおじいちゃんは、とても大喜びです。
 ですが、しばらくすると、音になれたサルたちは、大きな音を立てて空ではじけるロケット花火に目もくれず、パクパクむしゃむしゃ、お野菜を食べるようになりました。
 おじいちゃんに「こらー!!」と追いかけられて茂みに入った猿たちは、叫びます。
 「バカにんげーん、お尻ペンペン、真っ赤だペン」
 おじいちゃんはカンカンになって、今度は畑をトゲトゲの針金の柵で囲いました。
 モモタがお鼻でトゲトゲを触ってみると、とっても痛い。これなら猿たちも来れないだろうな、と思いました。
 そうとは知らずにやって来た猿たちは、柵を登ろうとしてチクッ!
 「痛い!」
 チクチクッ
 「痛痛ぁい!」
 みんなびっくりして、柵には登らなくなりました。それをお家の中で見ていたおじいちゃんは、「ようし、やったっ」と手をたたいて喜びました。
 ですが、猿たちが柵の外でウロウロしていたのは、初めだけ。トゲとトゲの間に手足を引っ掛けて、悠々上って中に入るようになりました。
 でも、いちいちトゲを気にして上り下りしていたら、「こらー!」と追いかけてくるおじいちゃんに捕まるだろうな、とモモタは思いました。
 ですがそうはなりません。どうしてだろう? とモモタが見に行くと、柵の下に穴を掘ってあって、トンネルが出来ていたのです。
 これなら、追い詰められても猿たちは捕まらずに逃げられます。
 「もう、許さねえぞ」と怒り心頭のおじいちゃんは、今度はトゲトゲのない柵を立てて、柵の下にコンクリートを流しました。
 猿たちは笑いました。
 「なんだ、こんなの。トゲがあった前の方が、まだましじゃないか」
 ですが今度は、さすがのサルも度肝を抜かれました。 
 ビリビリビリビリ
 雷がほとばしって、猿の骨が透けたり透けなかったりして、真っ黒こげ。煙を吹かしながらやぶの中に逃げていきます。
 人間とお猿の知恵比べ、やっぱり人間が勝ちましたとさ。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ノースキャンプの見張り台

こいちろう
児童書・童話
 時代劇で見かけるような、古めかしい木づくりの橋。それを渡ると、向こう岸にノースキャンプがある。アーミーグリーンの北門と、その傍の監視塔。まるで映画村のセットだ。 進駐軍のキャンプ跡。周りを鉄さびた有刺鉄線に囲まれた、まるで要塞みたいな町だった。進駐軍が去ってからは住宅地になって、たくさんの子どもが暮らしていた。  赤茶色にさび付いた監視塔。その下に広がる広っぱは、子どもたちの最高の遊び場だ。見張っているのか、見守っているのか、鉄塔の、あのてっぺんから、いつも誰かに見られているんじゃないか?ユーイチはいつもそんな風に感じていた。

あだ名が242個ある男(実はこれ実話なんですよ25)

tomoharu
児童書・童話
え?こんな話絶対ありえない!作り話でしょと思うような話からあるある話まで幅広い範囲で物語を考えました!ぜひ読んでみてください!数年後には大ヒット間違いなし!! 作品情報【伝説の物語(都道府県問題)】【伝説の話題(あだ名とコミュニケーションアプリ)】【マーライオン】【愛学両道】【やりすぎヒーロー伝説&ドリームストーリー】【トモレオ突破椿】など ・【やりすぎヒーロー伝説&ドリームストーリー】とは、その話はさすがに言いすぎでしょと言われているほぼ実話ストーリーです。 小さい頃から今まで主人公である【紘】はどのような体験をしたのかがわかります。ぜひよんでくださいね! ・【トモレオ突破椿】は、公務員試験合格なおかつ様々な問題を解決させる話です。 頭の悪かった人でも公務員になれることを証明させる話でもあるので、ぜひ読んでみてください! 特別記念として実話を元に作った【呪われし◯◯シリーズ】も公開します! トランプ男と呼ばれている切札勝が、トランプゲームに例えて次々と問題を解決していく【トランプ男】シリーズも大人気! 人気者になるために、ウソばかりついて周りの人を誘導し、すべて自分のものにしようとするウソヒコをガチヒコが止める【嘘つきは、嘘治の始まり】というホラーサスペンスミステリー小説

「いっすん坊」てなんなんだ

こいちろう
児童書・童話
 ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。  自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・           

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

美少女仮面とその愉快な仲間たち(一般作)

ヒロイン小説研究所
児童書・童話
未来からやってきた高校生の白鳥希望は、変身して美少女仮面エスポワールとなり、3人の子ども達と事件を解決していく。未来からきて現代感覚が分からない望みにいたずらっ子の3人組が絡んで、ややコミカルな一面をもった年齢指定のない作品です。

独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。

猫菜こん
児童書・童話
 小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。  中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!  そう意気込んでいたのに……。 「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」  私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。  巻き込まれ体質の不憫な中学生  ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主  咲城和凜(さきしろかりん)  ×  圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良  和凜以外に容赦がない  天狼絆那(てんろうきずな)  些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。  彼曰く、私に一目惚れしたらしく……? 「おい、俺の和凜に何しやがる。」 「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」 「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」  王道で溺愛、甘すぎる恋物語。  最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。

黒地蔵

紫音みけ🐾書籍発売中
児童書・童話
友人と肝試しにやってきた中学一年生の少女・ましろは、誤って転倒した際に頭を打ち、人知れず幽体離脱してしまう。元に戻る方法もわからず孤独に怯える彼女のもとへ、たったひとり救いの手を差し伸べたのは、自らを『黒地蔵』と名乗る不思議な少年だった。黒地蔵というのは地元で有名な『呪いの地蔵』なのだが、果たしてこの少年を信じても良いのだろうか……。目には見えない真実をめぐる現代ファンタジー。 ※表紙イラスト=ミカスケ様

童話短編集

木野もくば
児童書・童話
一話完結の物語をまとめています。

処理中です...