猫のモモタ

緒方宗谷

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貸し菜園のお友達

みんながしてても危険があるよ

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 ムシャムシャムシャムシャ、アブラムシが大発生しています。
 この畑は無農薬の有機栽培でしたので、お野菜を作っている人間はお薬を撒きません。自然の力に任せて、お野菜を育てています。
 ですから、この畑にはたくさんの虫が住んでいました。
 土はふかふかの腐葉土でしたし、お薬が撒かれていないので、葉っぱには気持ちの悪くなる苦さはありません。優しい苦さだけです。
 実るお野菜もとても甘かったので、虫たちが子育てするにはうってつけ。ですから、その虫たちをごはんにするアリの巣もたくさんありました。
 その巣に住むアリは大黒アリでしたので、テントウムシは寄りつけません。そのため、天敵がいないアブラムシは、たくさん増えていきました。
 アブラムシだらけの葉っぱを見て、モモタが言いました。
 「ねえ、アブラムシさん。そんなに数がいたら、この1本のお野菜じゃ足りないんじゃないの?」
 「そんなことないよ、もしそうなら、みんな別の葉っぱに行くはずだもん」
 確かにそうだと思ったモモタは、心配するのをやめて、蝶々を追いかけていきました。
 いい陽気なので、モモタは、毎日畑の隅っこの草の上で日向ぼっこをしています。他にはネズミを追いかけたり、地面でピチピチはねるミミズを見て過ごしていました。
 のんびりしていたモモタがふと気が付くと、畑の葉っぱがだいぶなくなっています。
 「ねえ、アブラムシさん。やっぱり足りないんじゃないの?他の葉っぱにお引越ししたら?」
 「んー?大丈夫さ、何とかなるだろ。
  もし何とかなりそうにならないなら、もうみんな他の草に移っているさ」
 モモタがだれに言っても、そんな答えしか返ってきません。
 モモタが辺りを見渡すと、畑の葉っぱはみんなアブラムシに覆われています。すごい勢いで葉っぱを食べていくので、すぐにでも食べ尽くされてしまいそう。
 次の葉っぱを探してあげよう、とモモタは隣の菜園を見に行きましたが、ここのお野菜には、お薬が撒かれています。他の畑も同じでした。
 青々と葉っぱの茂る畑は、どれもお薬が撒かれています。アブラムシのお家だけが無農薬でとても美味しいお野菜が出来ていましたが、美味しすぎて虫食いどころではありません。遂に葉っぱは全部なくなってしまいました。
 土の上に落ちたアブラムシたちは、アリに助けを求めます。
 初めのうちは、アリも彼らを助けて、草のあるところまで連れて行ってくれていましたが、薬で苦い葉っぱを食べたがらないアブラムシたちは、次第に甘いジュースを出さなくなりました。
 アブラムシは、アリに頼みました。
 「別のところに連れて行ってよ。
  苦くない葉っぱがある所。お野菜じゃなきゃいやだよ。野草は固いからね」
 ですがアリは知らんぷり。それもそのはず。だってアリたちは、甘いジュースが貰えるから、アブラムシの言うことを聞いていたのですから。
 モモタは、アブラムシたちに言いました。
 「だから言ったのに。後悔してからじゃ遅いんだよ」
 アブラムシたちは、どうする事もできずに、途方にくれました。




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