猫のモモタ

緒方宗谷

文字の大きさ
150 / 514
強すぎて強くなれないオオタカの話

前ばかりみているといつの間にか大変だよ

しおりを挟む
 お兄ちゃんのオオタカが遠くへ飛び立った日のお昼、オオタカの巣の下にやって来たタヌキは言いました。
 「お兄さんが、むこうの山へ飛んで行きましたよ」
 「本当?すごいなお兄ちゃん」
 タヌキは、2羽の弟達を見比べて、右側のヒナに言いました。
 「君もだいぶ羽毛がなくなってきましたね。もう飛べるんじゃありませんか?」
 「まだまだだよ、ほらお尻のほうは羽毛がいっぱい」
 そう言ってタヌキにお尻を見せてあげました。確かに羽毛でもわもわしています。
 「でも、もうすぐ生え変わるよ。だってムズかゆいからね」
 タヌキは感心しました。とても成長が早いと褒めそやしたので、オオタカの二男は良い気分です。
 そこでタヌキは、初飛行の心得を教えてあげる事にしました。
 「お兄さんですら、最初は高く飛べなかったんですよ。
  朝ごはん前に高く飛べるようになりましたが、それまでに何度も飛ぶ練習をしていました。
  お兄さんの話によると、木々の間を飛ぶのはぶつかって大変だから、砂利道で練習するのが良いらしいです。
  もしものために、僕が見ていてあげますから、飛び立つときは教えてください」
 「本当?それは助かるな。じゃあ、お願いしようかな」
 暫くしたある日、殆どの羽毛が生え変わった二男は、最後の羽毛のムズムズに耐えていました。
 そんな時にタヌキがやって来て、言いました。
 「もう羽毛は生え変わっていますね、明日に飛ぶなんてどうです?」
 「うーん、まだお尻に3つの羽毛が残っているんだ」
 「そんなもの自分で抜いてしまいなさい。そうやって自ら成長する者だけが、天空を舞う空の王者になれるのです」
 いつも優しいタヌキは、一転して厳しくしかりました。
 「そうか、そうだね」
 そう自分に言い聞かせるようにタヌキに言った二男のオオタカは、残りの羽毛を3つとも自分で抜いて巣から出ると、すくっと枝の上に立って、羽ばたく練習を始めました。
 それを見たタヌキは、満足そうに言いました。
 「さすがはオオタカの子、なんて勇ましいのでしょう。
  あなたのように勇ましい鳥は、この森が広いと言えどもどこにもいません」
 次の日の早朝、オオタカの二男は、タヌキがやって来るのを待って巣から出ると、静かに羽をはばたかせて、「えいやあっ」と宙に飛び出しました。
 案の定、高く飛べずに地面すれすれです。目の前にはたくさんの木が迫って来て、ぶつかりそう。
 「そういえば、砂利道で練習するのが良いって、お兄ちゃんが言っていたんだ」
 タヌキの助言を思い出したオオタカは、砂利道の方に向きを変えて飛んで行きました。うまく木にぶつからずに、砂利道に落ちたオオタカが後ろを振り向くと、タヌキが走ってきます。
 彼の事を待たずに、オオタカは飛ぶ練習を続けました。でもすぐポテッと地面に落ちます。
 森から出てきたタヌキは、オオタカを見失いませんでした。
 白い砂利道に対して、巣だったばかりのオオタカは薄茶色い羽をしていましたから、とても目立ったのです。
 タヌキは、オオタカ目指して一直線に走って行きました。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ノースキャンプの見張り台

こいちろう
児童書・童話
 時代劇で見かけるような、古めかしい木づくりの橋。それを渡ると、向こう岸にノースキャンプがある。アーミーグリーンの北門と、その傍の監視塔。まるで映画村のセットだ。 進駐軍のキャンプ跡。周りを鉄さびた有刺鉄線に囲まれた、まるで要塞みたいな町だった。進駐軍が去ってからは住宅地になって、たくさんの子どもが暮らしていた。  赤茶色にさび付いた監視塔。その下に広がる広っぱは、子どもたちの最高の遊び場だ。見張っているのか、見守っているのか、鉄塔の、あのてっぺんから、いつも誰かに見られているんじゃないか?ユーイチはいつもそんな風に感じていた。

あだ名が242個ある男(実はこれ実話なんですよ25)

tomoharu
児童書・童話
え?こんな話絶対ありえない!作り話でしょと思うような話からあるある話まで幅広い範囲で物語を考えました!ぜひ読んでみてください!数年後には大ヒット間違いなし!! 作品情報【伝説の物語(都道府県問題)】【伝説の話題(あだ名とコミュニケーションアプリ)】【マーライオン】【愛学両道】【やりすぎヒーロー伝説&ドリームストーリー】【トモレオ突破椿】など ・【やりすぎヒーロー伝説&ドリームストーリー】とは、その話はさすがに言いすぎでしょと言われているほぼ実話ストーリーです。 小さい頃から今まで主人公である【紘】はどのような体験をしたのかがわかります。ぜひよんでくださいね! ・【トモレオ突破椿】は、公務員試験合格なおかつ様々な問題を解決させる話です。 頭の悪かった人でも公務員になれることを証明させる話でもあるので、ぜひ読んでみてください! 特別記念として実話を元に作った【呪われし◯◯シリーズ】も公開します! トランプ男と呼ばれている切札勝が、トランプゲームに例えて次々と問題を解決していく【トランプ男】シリーズも大人気! 人気者になるために、ウソばかりついて周りの人を誘導し、すべて自分のものにしようとするウソヒコをガチヒコが止める【嘘つきは、嘘治の始まり】というホラーサスペンスミステリー小説

こわモテ男子と激あま婚!? 〜2人を繋ぐ1on1〜

おうぎまちこ(あきたこまち)
児童書・童話
 お母さんを失くし、ひとりぼっちになってしまったワケアリ女子高生の百合(ゆり)。  とある事情で百合が一緒に住むことになったのは、学校で一番人気、百合の推しに似ているんだけど偉そうで怖いイケメン・瀬戸先輩だった。  最初は怖くて仕方がなかったけれど、「好きなものは好きでいて良い」って言って励ましてくれたり、困った時には優しいし、「俺から離れるなよ」って、いつも一緒にいてくれる先輩から段々目が離せなくなっていって……。    先輩、毎日バスケをするくせに「バスケが嫌い」だっていうのは、どうして――?    推しによく似た こわモテ不良イケメン御曹司×真面目なワケアリ貧乏女子高生との、大豪邸で繰り広げられる溺愛同居生活開幕! ※じれじれ? ※ヒーローは第2話から登場。 ※5万字前後で完結予定。 ※1日1話更新。 ※noichigoさんに転載。 ※ブザービートからはじまる恋

ぽんちゃん、しっぽ!

こいちろう
児童書・童話
 タケルは一人、じいちゃんとばあちゃんの島に引っ越してきた。島の小学校は三年生のタケルと六年生の女子が二人だけ。昼休みなんか広い校庭にひとりぼっちだ。ひとりぼっちはやっぱりつまらない。サッカーをしたって、いつだってゴールだもん。こんなにゴールした小学生ってタケルだけだ。と思っていたら、みかん畑から飛び出してきた。たぬきだ!タケルのけったボールに向かっていちもくさん、あっという間にゴールだ!やった、相手ができたんだ。よし、これで面白くなるぞ・・・

「いっすん坊」てなんなんだ

こいちろう
児童書・童話
 ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。  自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・           

美少女仮面とその愉快な仲間たち(一般作)

ヒロイン小説研究所
児童書・童話
未来からやってきた高校生の白鳥希望は、変身して美少女仮面エスポワールとなり、3人の子ども達と事件を解決していく。未来からきて現代感覚が分からない望みにいたずらっ子の3人組が絡んで、ややコミカルな一面をもった年齢指定のない作品です。

クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました

藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。 相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。 さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!? 「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」 星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。 「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」 「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」 ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や 帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……? 「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」 「お前のこと、誰にも渡したくない」 クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。

笑いの授業

ひろみ透夏
児童書・童話
大好きだった先先が別人のように変わってしまった。 文化祭前夜に突如始まった『笑いの授業』――。 それは身の毛もよだつほどに怖ろしく凄惨な課外授業だった。 伏線となる【神楽坂の章】から急展開する【高城の章】。 追い詰められた《神楽坂先生》が起こした教師としてありえない行動と、その真意とは……。

処理中です...