猫のモモタ

心配性の足長蜂の話

不安な想像、現実を超える

　「大変だー大変だー！」
　いつまで騒いでいる気なのでしょう。いつもの様に足長蜂が騒いでいます。
　「今度はどうしたの？」とモモタが尋ねました。
　「熊だよ。熊がやって来たんだ。この養蜂園ももう終わりだよ」
　実は養蜂家たちは旅行中。それを知った熊が、蜜をなめようと、樹海の奥から出てきたのです。
　蜜蜂たちは言いました。
　「大丈夫だよ、さすがに襲っては来れないさ。
　　だって仕返しに人からひどい目にあるんだから」
　ですが、熊は巣を壊して蜜をナメナメ、蜜蜂達は大パニックとなりました。
　戦う針がない西洋蜜蜂でしたから、戦う術が無くてされるがまま。それを見ていた別の熊もやって来て、壊れた巣をむしゃむしゃ食べはじめます。
　更には、遅れまじともう１頭出てきて、まだ壊されていない巣を壊し始めました。
　戦おうとした働き蜂はたくさん食べられて、女王様は途方に暮れています。
　遠くで見ていた足長蜂は、「もうだめだー」と騒ぎ立てて、惨状を言いふらします。
　「蜜蜂達は生きていけないぞー」と飛び回りながら叫んでいます。「みんな熊のご飯にされちゃうぞー」と嘆きながら、みんなに言って回っていました。
　養蜂園に住んでいた虫たちは、みんな逃げ出していきます。蜜蜂がいなくなったら、こんどは自分たちが熊に食べられてしまうからです。
　熊は、「ぐふぐふ」笑いながら言いました。
　「これからは、養蜂園は俺のもの。俺のためにたっぷり蜜を作るんだぞ」
　３頭はそれぞれの縄張りを作って蜜が出てくるのを待ちました。
　ですが、待てど暮らせど蜜は出来てきません。蜜蜂が蜜を集めなければ、蜜が溜まるわけがないのです。
　壊された箱から勝手に蜜が出てくるわけではありません。
　足長蜂は、遠くからその様子を見て騒ぎ立てます。
　「蜜熊の誕生だー！お腹いっぱい蜜を食べれる熊は、今の倍の大きさになるぞー！もうこの辺りは熊だらけだー！」
　それを聞いた鳥たちは、足長蜂を信じて逃げ出しました。
　ですが、騒ぎを聞きつけたお留守番の人がすぐにやって来て、熊を追い払います。
　それでも足長蜂は、「女王が死んだら終わりだ」と騒ぎ続けています。
　１箱に１匹ずついる女王様はみんな無事でしたが、みんなはこの広場に次ぎ住むのは誰だろう、と思いました。
　巣が壊されたというだけで、蜜蜂の殆どは無事なのに。