猫のモモタ

緒方宗谷

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自分で自分を認められない白鳥の話

他と比べたらキリがない

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 ある日、人間のお家から巣立った白鳥のショニー君が、池のほとりにやってきました。生まれて初めて自分でご飯を捕る日です。
 ショニー君は、朝から晩まで1日中池の中でパクパクしていました。モモタは水辺までやって来て言いました。
 「頑張るね」
 「うん、ひもじい生活は嫌だもん、ゲップ」
 「お腹お腹いっぱいなのにまだ食べるの?」
 「すごいだろ?お腹いっぱいでもまだ食べれるくらい、ご飯とりの名人なんだ」
 ショニー君は、キョロキョロしながら続けます。
 「これだけ取れれば、他に1羽や2羽養えてもおかしくないね」
 遠くから飛んできて羽を休めている白鳥の女の子をチラチラ見やって、随分とソワソワした様子です。
 しばらくして、モモタがまた遊びに行くと、ショニーがいる池には、女の子1羽がいるだけでした。
 「あれ?ショニー君はどうしたの?」
 「うん、お家を作ってるわ、安心して休みたいんだって」
 モモタが探してみると、せっせと小枝を拾っていったり来たりしています。
 モモタは、そばによって話しかけました。
 「彼女を放って何してるの?温かくなったら北に行くんだから、立派なお家なんていらないんじゃない?」
 「ここらあたりで白鳥は珍しいだろ?バカにされないようにでっかい家に住んでやるのさ。
  想像してごらんよ、あそこの白鳥すごいぞって噂されるんだ」
 「ショニー君は白くて大きいから、それだけでもうすごいって思われてるよ」
 「それだけじゃ足りないよ、もっとすごいぞってって思われたいんだ。
  大きウチに住んでいれば、遠くからも見えるだろう?
  そしたらあそこには白鳥がいるから近づかないようにしようってみんな思うじゃない?
  そうしたら、安心して眠れるじゃない」
 モモタは、ショニー君の言うことはもっともだと思いました。
  今まで旅行をしてきて、泊まるお家がない時はとても不安だったからです。
 モモタは言いました。
 「でもちょっと頑張り過ぎじゃない?彼女と遊ぶ時間を大切にした方が良いよ」
 「彼女のためでもあるのさ。彼女を安心させてやりたいんだよ」
 「手伝ってもらったら?一緒にした方がはかどるし、楽しいよ」
 「こんなことも1羽でできないなんて思われたくないから、ダメ」
 いっぱいご飯が食べられてお家があることは大事だけれど、何か違うと思ったモモタは考えました。
 「彼女のためって言ったけど、自分のためなんじゃないの?」
 しばらくして、ショニー君のお家が完成したと聞いたモモタは、遊びに言ってみました。
 すると、ショニー君はまだ一生懸命はご飯を捕っています。この池にいる水鳥たちは優雅に泳いでいるのに、ショニー君はジャバジャバジャバジャバご飯を捕るのに一生懸命。
 モモタは言いました。
 「お家があるんだから、のんびりしたら?」
 「みんなに僕の凄さを見せつけたいんだ」
 結局何時まで経っても休まらない白鳥です。
 たくさんご飯が捕れる、と思われたい。立派なお家に住んでいる、と思われたい。そう思われたいという気持ちを満たすために頑張っているんだなぁ、とモモタは思いました。
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