猫のモモタ

緒方宗谷

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愛情たっぷりキツネの話

頼らないのが強さの証

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 モモタがコンちゃんのお家に遊びに行く途中、森の中に幼い子供の叫び声が響きました。
 「痛い!痛いよママ!やめて!」
 それを聞いたモモタが、急いで声が聞こえる方に行ってみました。すると、そこにいたのは、自分の子供に暴力を振るうママキツネがいました。
 モモタは駆け寄って言いました。
 「何してるの?暴力はいけないよ」
 「猫のくせに邪魔しないでちょうだい!それにこれは暴力じゃないわ。しつけだもの」
 「しつけ?しつけじゃないよ。
  そんなにかじったら、ほら見てよ、歯あとがついてるじゃない」
 庇ってくれたモモタの後ろに、幼いキツネが隠れます。それを覗き込んで、ママキツネが言いました。
 「かわいい、かわいい、わたしの坊や、良い子だから出てきなさい」
 幼いキツネは出てきません。
 言うことを聞かない子供に、ママキツネは少し怒って言いました。
 「そうなの、悪い子ね。
  あなたはわたしの事が嫌いなのね、わたしがこんなにあなたのこと愛しているのに。
  わたしはあなたのためにしているのよ」
 何も言えずに震えている幼いキツネの代わりに、モモタが言いました。
 「愛しているなら、かじるのはやめてよ。
  この子だってママが嫌いで隠れてるわけじゃないよ」
 「わたしはこの子に強いキツネに育ってほしいのよ。
  わたしは、言うことを聞かない子供のために罰を与えて教育しているの」
 「それじゃあ、罰が怖いから言うこと聞く子になっちゃうよ?
  ママが良いこと言うから、言うこと聞くのが良いんじゃないの?」
 「わたしが言うことが悪いことだって言うの?」
 「暴力が悪い事って言ってるんだ」
 ママギツネは、「猫には関係ないでしょう」と言って幼いキツネを呼んで巣に帰って行きました。
 幼いキツネが心配だったモモタは、しばらくしてから親子の巣に来ました。ですがそこにはママキツネしかいません。
 幼いキツネはお母さんが大好きだったのですが、毎日毎日かじられてばかりだったので、しぶしぶ巣を離れていってしまったのです。
 寂しそうにしていた母キツネは、遊びに来たモモタを労っておやつを振る舞ってくれました。
 モモタはそれを食べてから、顔をあげてママキツネを見ました。
 「確かに巣立つ必要はあるけど、暴力はしつけにならないよ。
  だって、あの子1匹ぽっちになっちゃったもん。
  結局お母さんも寂しそう」
 そうモモタが言うと、ママキツネが言いました。
 「愛しているから、かみつくのです」
 「愛しているのとかみつくのは別の事だよ。
  今なんて、僕におやつを別けてくれてるじゃない。
  そう言う愛情の伝え方だってあるよ」
 ママキツネは間を置かずに言いました。
 「あなたの事は愛していないもの。
  あなたが1匹で生きていけなくて困っても、私は何とも思わないから」
 モモタには全く理解できません。
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