猫のモモタ

緒方宗谷

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南国の海のお友達

気持ちは言葉、言葉は気持ち

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 モモタがごはんを食べていると、ヤンバルクイナがやってきました。
 飛べない上に力の弱い鳥です。しかも大きいので食べごたえがありそうですが、モモタはお腹が空いていないのでごはんには見えません。なので、一緒に遊ぶことにしました。
 思いっきり鬼ごっこを楽しんだ後、ヤンバルクイナがいつものように旅行の思い出話を聞かせてくれ、と言ってきました。
 「北国に行った時は、とても寒かったなぁ。雪って言う白いのが降ってくるんだよ。
  とても冷たくて、溶けると水になるんだ」
 ここは南国なので、雪は見たことないだろう、と思ったモモタは、ヤンバルクイナが驚いてくれると思っていましたが、何てことなさそうです。
 ヤンバルクイナが言いました。
 「そんな寒いところには行きたくないなぁ。わざわざ凍えに行く意味なんてないからね」
 次にモモタは、動物園の事を話して聞かせてやりました。
 「みんながそれぞれお家を持っていて、のんびり過ごしているんだよ。
  ふだん会えないお友達もいて楽しかったなぁ」
 すると、ヤンバルクイナが水を差します。
 「ふだん会えないなら、別に会えないままでも困らないよね。
  わざわざ会いに行かなくてもいいや」
 モモタの頭の中にも心の中にも、言葉にし切れないたくさんの思い出があります。それを伝えきれなくて、モモタはとてももどかしく思いました。
 少しでも旅行の楽しさを知ってもらおうと、モモタは言いました。
 「話を聞くより、実際に旅行に出かけるほうが何十倍も楽しいよ。今度一緒に海まで遊びに行こうよ」
 「いいよ僕は。色々やることだってあるし、また今度にするよ」
 モモタは、ヤンバルクイナが飛べないことや力が弱いことを気にしていて、森の外に出られないのかな? と思って励まして言いました。
 「こうやって遊んでいれば、だんだんと足も速くなるし、空も飛べるようなるよ。
  そうしたら一緒に遊びに行こうね」
 「なんでそんなこと。そんなの自分で決めるよ。
  ていうか、そう言う君は何ができて旅行に出ようと思ったの?」
 「僕? 僕素早く走れるし、高いところから落ちてもくるりと受け身をとるのが上手なんだ。
  見て。爪や牙もあるんだよ。海で泳いだこともあるんだよ」
 ヤンバルクイナは、冷ややかな眼差しでいました。
「でもさぁ、鳥はもっと早いよ。
 アリは高いところから落ちても、受け身をとらなくてもびくともしないよ。
 イリオモテヤマネコ見たことある? 彼らの爪や牙の方がすごいよ。
 サメから見れば溺れているのと同じじゃないの?」
 「もっとできるお友達と比べても仕方がないよ」
どうも心を折る達人のようです。






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