猫のモモタ

大所帯なサーカスのお友達

俺がお前の友達なのは、お前が俺より情けないから

　いつも頑張り屋さんのトラが、オリの中でため息をついていました。
　「どうしたんだい？」隣のオリのトラが訊きます。
　頑張りトラは答えました。
　「いや・・・もう無理かなって思って。
　　今まで頑張ってきたけれど玉乗りは出来ないし、火の輪ぐるりも出来ない。
　　人間に頼んで他の芸を教えてもらおうかな？」
　すると、隣のトラが言いました。
　「なに言っているんだよ。今まで頑張ってきたのに。
　　もったいないよ、続けなよ」
　そして立ち上がって「今まで頑張ってきたんだから、これからもやろうよ」と励まします。
　「そうだよな。今やめたら、今までの苦労が水の泡だもんな。」
　やる気になったトラは、調教師の人に連れられて、テントの中へと入っていきました。
　モモタがテントの中に入っていって見てみると、頑張りトラは、やる気になって頑張りました。
　外に戻ったモモタは、隣のトラに訊きました。
　「あんなに必死になってつらいことを頑張るのは体に毒だよ。
　　何がもったいなくて続けさせるの？」
　「しらねー。本人が分かってないんだから俺が知るわけないだろ」と言葉を吐き捨てます。
　じゃあ、なんでそんなこと言ったんだろう、とモモタは思いました。