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モモタとママと虹の架け橋
第五十四話 みんなでやれば、楽ちんちん
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みんなは、心配そうにするばかりで何もせず、ハッサムの両親を見ていました。ですが、段々とその数も減っていきます。まっさきにいなくなったのは、ただただ騒ぎが好きなだけの鳥たちでした。寒さに耐えかねたのか、震えながら家路へと急ぐ者もいるようです。残ったは、この辺りにお家のある鳥たちだけでした。
若くて勇敢そうな胸筋モリモリの山鳩が言いました。
「それじゃあ、僕が見てこよう。クジラの話が本当かどうかも含めて、ハッサムの様子を見てくるよ」
「それじゃあ、俺も」と仲間のハトたちが言いました。みんなハトらしい鳩胸の山鳩たちです。
四羽の山鳩たちは、すぐに飛び立っていきました。
港に近づくと、すぐにクジラの群れが沖にいるのが見えました。そのすぐそばには流氷の大地が広がっていて、大分離れたところに微かに藍色に輝く雪原があります。
勇敢な山鳩がその方に飛んでいくと、ハッサムがいるのが見えました。キキも一緒です。話に訊いた通り、茶トラの猫と他に何かいるようです。
他の何かとは、アゲハちゃんとチュウ太のことでしたが、二匹は小さいので、山鳩たちには遠すぎてよく見えません。
勇敢な四羽であるとはいえ、山鳩たちにオオタカのそばまで飛んでいく勇気はありませんでした。それに、キキたちのそばには、食べられたなにかの動物が置いてあったので、大変怖く感じた様子で顔をゆがめました。
そこで山鳩たちは、ゆっくりと雪原に降り立ちました。
その中の一羽が言いました。
「普通の雪だな」
「ああ、塩だなんて嘘じゃないか」
後ろを振り向いた勇敢な山鳩が言いました。
「あのオオタカが、僕たちに塩を掘るのを手伝ってほしって言っていただろう? ハッサムがいる辺りにクジラが埋まっているんじゃないかな。もう少し近づけば、塩になるかもしれないぞ」
それを聞いた三羽は、勇敢な山鳩の後に続いて、ハッサムとキキがいるほうに歩いていきました。
間もなくして「あっ」と一羽が叫びました。
「塩だ。塩になっているぞ」
みんなでつついてみると、確かに塩です。
勇敢な山鳩が言いました。
「あのオオタカが言っていたことは嘘じゃなかったんだな」
そう言って、もっとハッサムの方へと近づきます。確かに、猫の他に揚羽蝶とクマネズミがいるようでした。
一番後ろにいた山鳩が言いました。
「クジラって言ったら、どんでもなくデカいぞ。この塩の大地を吐き出すほどだから、とても子供とは思えない。ハッサムたちだけじゃ、いくら頑張ってもクジラは助けられまい」
他の山鳩たちが口々に言いました。
「それにしても、なんて美味しい塩なんだ。こんな美味しい塩食べたことないよ」
「ああ、みんなにも教えてやりたいな」
それを聞いた勇敢な山鳩は、三羽に言いました。
「それではどうだ、あのオオタカを助けてみんなを連れてきてやるのは」
みんなは渋ります。
一番後ろの山鳩が言いました。
「オオタカをか・・・」
それを聞いて、勇敢な山鳩が言いかえます。
「ハッサムを助けて、みんなを呼ぼう。このままでは、ハッサムが凍傷にかかってしまうよ。あんな子供でも一生懸命クジラを助けようとしているんだ。我々が見ているだけだなんてできやしない」
「そうだな」と前の一羽が賛同すると、後ろの二羽も同意します。
そこで、四羽はお家のある山に踵を返して飛んでいきました。
モモタたちは、頑張って大きな穴を掘ったのですが、一向にクジラの鼻は見えてきません。ハッサムは一生懸命頑張りましたが、まだ子供ですからうまく掘れません。大変美味しい塩でしたが、塩ばかりをお腹いっぱい食べられませんから、穴掘りをするのはもう限界を迎えていました。
モモタたちも疲れ切っています。キキは、ハッサムとここに来る道すがら白ウサギを見つけて捕食していましたが、満腹となっていても体力まで回復したわけではありません。ですから、同じように限界を迎えていました。
今日はもう無理だと諦めかけたその時です。遠くから、「おーい」と呼ぶ声が聞こえてきました。
モモタたちが見やると、大空を青紫がかった緑色と灰色に染める集団がやってきます。それは数えきれないほどの山鳩の大群でした。
「みんあぁ」とハッサムが喜びます。
その中には両親の姿もありました。
山に戻った若者たちが、みんなに報告。説得して連れてきてくれたのです。
すぐさまキキが飛び立ちました。山鳩を仕留めるためにではありません。方々から丸見えの山鳩たちを守るためにです。キキは、山鳩の上を旋回し始めました。ここは自分の縄張りだと言わんばかりに、「ヒューイー」と鳴きました。
ハッサムからキキの事情を聞いたモモタは、“地上は僕に任せて”とばかりに、キツネやイタチを警戒します。モモタの頭の上、少し高いところを飛んでいるアゲハちゃんレーダーで、隠れるイタチもお見通しです。
モモタではキツネに敵いませんが、足止めくらいは出来るでしょう。その間に飛んで逃げてもらう算段です。
山鳩たちは、「美味しい美味しい」「旨いぞこれは」「美味しいわぁ」と大喜び。噂が噂を呼んで、塩好きの山鳩たちが別の山からもやってきました。
「岩場と違って波にさらわれないから、安全に食べられる」と言って、みんなパクパク。楽しげに歌いながら、穴を掘っていきます。
🎼ハーントゥトゥ みんなで ここ掘れ
ハーントゥトゥ 歌えや 騒げや
ハーントゥトゥ ご馳走 たくさん
ハーントゥトゥ 祭りだ 宴だ🎼
ゆかいなリズムに乗って、瞬く間に穴は大きく深くなっていきます。モモタたちは、あと少しでクジラに辿り着く、と期待で胸を膨らませました。
若くて勇敢そうな胸筋モリモリの山鳩が言いました。
「それじゃあ、僕が見てこよう。クジラの話が本当かどうかも含めて、ハッサムの様子を見てくるよ」
「それじゃあ、俺も」と仲間のハトたちが言いました。みんなハトらしい鳩胸の山鳩たちです。
四羽の山鳩たちは、すぐに飛び立っていきました。
港に近づくと、すぐにクジラの群れが沖にいるのが見えました。そのすぐそばには流氷の大地が広がっていて、大分離れたところに微かに藍色に輝く雪原があります。
勇敢な山鳩がその方に飛んでいくと、ハッサムがいるのが見えました。キキも一緒です。話に訊いた通り、茶トラの猫と他に何かいるようです。
他の何かとは、アゲハちゃんとチュウ太のことでしたが、二匹は小さいので、山鳩たちには遠すぎてよく見えません。
勇敢な四羽であるとはいえ、山鳩たちにオオタカのそばまで飛んでいく勇気はありませんでした。それに、キキたちのそばには、食べられたなにかの動物が置いてあったので、大変怖く感じた様子で顔をゆがめました。
そこで山鳩たちは、ゆっくりと雪原に降り立ちました。
その中の一羽が言いました。
「普通の雪だな」
「ああ、塩だなんて嘘じゃないか」
後ろを振り向いた勇敢な山鳩が言いました。
「あのオオタカが、僕たちに塩を掘るのを手伝ってほしって言っていただろう? ハッサムがいる辺りにクジラが埋まっているんじゃないかな。もう少し近づけば、塩になるかもしれないぞ」
それを聞いた三羽は、勇敢な山鳩の後に続いて、ハッサムとキキがいるほうに歩いていきました。
間もなくして「あっ」と一羽が叫びました。
「塩だ。塩になっているぞ」
みんなでつついてみると、確かに塩です。
勇敢な山鳩が言いました。
「あのオオタカが言っていたことは嘘じゃなかったんだな」
そう言って、もっとハッサムの方へと近づきます。確かに、猫の他に揚羽蝶とクマネズミがいるようでした。
一番後ろにいた山鳩が言いました。
「クジラって言ったら、どんでもなくデカいぞ。この塩の大地を吐き出すほどだから、とても子供とは思えない。ハッサムたちだけじゃ、いくら頑張ってもクジラは助けられまい」
他の山鳩たちが口々に言いました。
「それにしても、なんて美味しい塩なんだ。こんな美味しい塩食べたことないよ」
「ああ、みんなにも教えてやりたいな」
それを聞いた勇敢な山鳩は、三羽に言いました。
「それではどうだ、あのオオタカを助けてみんなを連れてきてやるのは」
みんなは渋ります。
一番後ろの山鳩が言いました。
「オオタカをか・・・」
それを聞いて、勇敢な山鳩が言いかえます。
「ハッサムを助けて、みんなを呼ぼう。このままでは、ハッサムが凍傷にかかってしまうよ。あんな子供でも一生懸命クジラを助けようとしているんだ。我々が見ているだけだなんてできやしない」
「そうだな」と前の一羽が賛同すると、後ろの二羽も同意します。
そこで、四羽はお家のある山に踵を返して飛んでいきました。
モモタたちは、頑張って大きな穴を掘ったのですが、一向にクジラの鼻は見えてきません。ハッサムは一生懸命頑張りましたが、まだ子供ですからうまく掘れません。大変美味しい塩でしたが、塩ばかりをお腹いっぱい食べられませんから、穴掘りをするのはもう限界を迎えていました。
モモタたちも疲れ切っています。キキは、ハッサムとここに来る道すがら白ウサギを見つけて捕食していましたが、満腹となっていても体力まで回復したわけではありません。ですから、同じように限界を迎えていました。
今日はもう無理だと諦めかけたその時です。遠くから、「おーい」と呼ぶ声が聞こえてきました。
モモタたちが見やると、大空を青紫がかった緑色と灰色に染める集団がやってきます。それは数えきれないほどの山鳩の大群でした。
「みんあぁ」とハッサムが喜びます。
その中には両親の姿もありました。
山に戻った若者たちが、みんなに報告。説得して連れてきてくれたのです。
すぐさまキキが飛び立ちました。山鳩を仕留めるためにではありません。方々から丸見えの山鳩たちを守るためにです。キキは、山鳩の上を旋回し始めました。ここは自分の縄張りだと言わんばかりに、「ヒューイー」と鳴きました。
ハッサムからキキの事情を聞いたモモタは、“地上は僕に任せて”とばかりに、キツネやイタチを警戒します。モモタの頭の上、少し高いところを飛んでいるアゲハちゃんレーダーで、隠れるイタチもお見通しです。
モモタではキツネに敵いませんが、足止めくらいは出来るでしょう。その間に飛んで逃げてもらう算段です。
山鳩たちは、「美味しい美味しい」「旨いぞこれは」「美味しいわぁ」と大喜び。噂が噂を呼んで、塩好きの山鳩たちが別の山からもやってきました。
「岩場と違って波にさらわれないから、安全に食べられる」と言って、みんなパクパク。楽しげに歌いながら、穴を掘っていきます。
🎼ハーントゥトゥ みんなで ここ掘れ
ハーントゥトゥ 歌えや 騒げや
ハーントゥトゥ ご馳走 たくさん
ハーントゥトゥ 祭りだ 宴だ🎼
ゆかいなリズムに乗って、瞬く間に穴は大きく深くなっていきます。モモタたちは、あと少しでクジラに辿り着く、と期待で胸を膨らませました。
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