猫のモモタ

緒方宗谷

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荷物を背負うカニと背負わないカニの話

考えるって考える

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 モモタがカエルを食べるアラモト君とお話ししていると、突然、食べないオオ君がやってきました。
 「どうしたの?」アラモト君が訊きました。
 「うん、もう疲れちゃって。君のところで1泊させてくれないかなぁ?」
 「仕方がないなぁ。でも明日には帰るんだよ」
 「うん、今日休ませてくれたら、また帰って頑張れる気がする」
 「前にも言ったけど、それじゃあ、根本的な解決にならないよ」
 「解決しようとしているさ。だから、お隣のお家に頼んでみたり、君に頼んでみたりしたんだ。断られたけれどね。
  それで別の方法を考えたのさ」
 「どんな?」モモタが訊きました。
 「こんなだよ」
 それを聞いたアラモト君は、少しイラッとした様子で言いました。
 「だから、それでは根本的な解決になっていないだろ」
 「でも今までだってそれでうまくやってきたんだ。
  これからだってうまくやっていけるさ」
 「上手くやってきていないから、こんなになっちゃったんだろ?」
 「でもずっとこうだったんだ。イシカワ君が沈んでいるままでもいい方法を考えようよ」
 「今までそうだったからって、これからもそうでなきゃいけないってことはないぞ。
  君は悩んでいるように見えて、その実悩んでなんかいやしない。
  悩んでいるふうを装うことで満足しているんだ。何も考えてなんかいやしない」
 「考えてるよ。考えてるから相談しているんだ」
 オオ君が反論します。
 ですがアラモト君は、平然として言いました。
 「考えていないさ。今までずっとほったらかしてきたのがいい証拠だよ。
  その気になれば、そのハサミで挟んで引っ張りだせるのにさ」
 「そんな事できないよ。可哀想じゃないか」
 「じゃあ、君は可哀想でもいいのかい?
  カエルを可哀想にしないことに気を使って、代わりに君が可哀想になれっていうのかい?」
 「違うよ。だから猫と君の話を聞いているんだよ」
 「それは、君の可哀想をハサミで切り取って、僕たちにおすそ分けしているだけさ。  
  前にも言ったけれど、僕に負担を転嫁しようとしているだけなのさ」
 「うん、うん」
 オオ君は気のない返事をして、巣の中に入っていきます。
 唖然とそれを見送るアラモト君でしたが、しばらくして我に返り、モモタに言いました。
 「老いガニになっても続ける気かな?
  君もなんか言われても協力しちゃだめだよ。共倒れになるから」
 言葉はきついけど、アラモト君はそこそこ良い奴のようです。
 モモタは答えて言いました。
 「オオ君が自分で考えだしたら、世界は変わるのに」





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