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第八話 超越⁉ 本当の最強人間
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ローゼは、レイピアで宙を切り裂いて軽快な風の音を響かせた。
「さあ、後はそのかわいそーな生人間だけね、観念したほうが良いんじゃなくって? オントワーン」
「ふっ、ぬかせ。あいつらはお前の力を計るために差し向けたに過ぎない。本当のお前の相手はコイツなのさ」
そう言いながら、オントワーンは後ろ手の手下から何やら小さな壺を受け取った。口が黒く塗られた小さな壺。木蓋を外して中を覗き込むオントワーンは、何やら不気味な笑みを浮かべている。麻薬や法術の薬でも入っているのだろうか、とローゼたちは警戒した。
徐に手を突っ込んだオントワーンは中身を鷲掴みにして、勢いよくそれを生人間に塗りつける。
ズジャリジャリジャリ、と大きな音が響くほど強く塗りつけながら、「突撃ー‼」と叫んだ。
「塩かそれー――!」(ローゼ&エミリア)
と長音が伸びきる前に生人間が猛ダッシュ。めっちゃはえェェ!
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼」と叫びくる生人間にびっくりしたローゼも「ぎゃぁぁぁぁぁー」と叫び声をあげて走って逃げる。二人して闇夜に消えていった。
しばらく走ったローゼは、後ろから何やら声が聞こえてくることに気がついた。
「ファイッオー、ファイッオー、ファイッファイッオー! ファイッオー、ファイッオー、ファイッファイッオー!」
見ると、三角木馬に立ちのりしたエミリアがメガホン持って掛け声をかけている。
「頑張れっローゼ! そんなんじゃ、フルマラソン走りきれないぞ」
「何やってんのよエミリア! 遊んでないで戦ってぇぇ」
「良いんですか?」
そうお伺いを立てるエミリアは、なぜ? と疑問に思うローゼに説明する。
「生人間マッパですよ。もしわたしが戦って見てしまうことがあったら、R指定間違いないですよ?」
確かにそうだ。仕方がない。塩切れするまで走り続けるしかないか。ローゼは長距離マラソンには自身がある。軍学校で完徹マラソンを何度もしていたから、生人間に走り勝つ自信があった。
同じく三角木馬に跨ったオントワーンが、自らの尻の割れ目を刺激しながら追いついてきた。そのオントワーンにエミリアが言う。
「生人間の本領発揮はこれからだぜ」
エミリア何言ってんだよ。それオントワーンのセリフだろ?
「良いんですよ、わたしで」
そう言ってカバンの中から鷹の爪を鷲掴みにして取り出したエミリアは、ワシャワシャと握りつぶして叫ぶ。
「悪魔牙団だけに鷹の爪弾はっしゃ―!」
それと同時に、粉々になった鷹の爪を生人間の背中に浴びせかける。しかもオントワーンがそれをアカスリでゴシゴシしごく。
「ぎゃぁぁぁ~」と叫ぶ生人間。「~~~~~~~~~~~~~~~~‼‼‼‼‼」でスピードアップ。
「いやぁぁぁぁ~~~~‼‼‼」一緒に叫んでローゼが逃げる。
エミリア、上手く言ったよ、って感じの満面の笑み。全然うまくないかんね。悪魔と鷹関係ないし、牙と爪関係ないし。でもエミリア「“だん”は一緒です」と満足気。
だいぶ長い時間が過ぎて、ようやく塩と唐辛子の沁みが引いてきた生人間は、走る速度が落ちてきた。それを見たエミリアが掛け声を繰り返すが効果がない。仕方がない、とエミリアはバックから何やら瓶を取り出してコルク栓を抜いた。すごいにおいのする薬。追い風だったから、ローゼの鼻にもその匂いがツーンと届いた。
「なっなっ何する気なのよ、エミリア⁉ それ虫刺され肩こり筋肉痛に効く異国の薬でしょう? まさか、まさか――」
「そのまさかです!」
そう言ったエミリアは、バッシャぁーと生人間の背中に浴びせかける。
「ぐぎゅわぁぎゅわぁぎゅわぁぎゅわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
さっきよりひどい絶叫で猛ダッシュ。その声に振り向いたローゼの視界いっぱいに未知の形相で迫る生人間。「助けて~」ローゼもマッハの全力疾走。
「秘儀ゴールデンクラッシュ」とエミリア。秘儀っていうかそれ薬の名前。世界で一番有名なかゆみ止めのお薬なんだけれど、これが沁みるのなんって。ちょっとかいてひっかき傷があろうものなら、悶絶必死の地獄薬なのだ。
生人間、それでもなおローゼに追いつけない。もはや白目をむいて死にかけている。もう少しで走り勝てる、とローゼが思った時に、またもエミリアの声がした。
「仕方がありませんね、秘伝の奥義を繰り出さないといけないみたいです」
ゴールデンクラッシュ以上の薬なんてこの世にあるの? そう思ったローゼの鼻に、何やら沁みそうな鮮烈な、よく言えばスカッとした爽快な刺激臭、ちょっと涙が出そうなにおいが流れてきた。
ローゼには何のにおいか分からないので説明すると、実はこれ筋肉痛に効く異国の薬。塗り過ぎると、赤くなるまで火にかざした鉄ゴテを押し当てられたのではないか、と思うほどの激痛に襲われる。しばらくの間は、大やけどに似た痛みを感じるすごい薬。名前は『シデシデ』
さっきの薬と同様、患部にちょびっと塗るだけのものなのに、エミリアは最後の一滴まで惜しみ無くバッシャぁーと浴びせかけた。
「きぇぁば~~~~~~―――ぐおぉぉぉぉぉっ」
生人間から二種類の奇声が聞こえる。たぶん鉄ゴテを押し当てられた痛みと、やけど後の痛みを堪える叫びだろう。
エミリアの所業を見ていたオントワーンが猟奇的な笑みを浮かべて言った。
「ゴールデンクラッシュとシデシデを浴びせかけるなんて、何たる残虐さだ。世界一残虐な国の牢獄ですら、これらを拷問で使用するのをためらうほどなのに……」
と感嘆の極み。拷問室でも躊躇するほどなら止めてくれよ。ローゼも白目むいてグロッキー。ランナーズハイ飛び越して三途の川も飛び越しそう。
「さあ、後はそのかわいそーな生人間だけね、観念したほうが良いんじゃなくって? オントワーン」
「ふっ、ぬかせ。あいつらはお前の力を計るために差し向けたに過ぎない。本当のお前の相手はコイツなのさ」
そう言いながら、オントワーンは後ろ手の手下から何やら小さな壺を受け取った。口が黒く塗られた小さな壺。木蓋を外して中を覗き込むオントワーンは、何やら不気味な笑みを浮かべている。麻薬や法術の薬でも入っているのだろうか、とローゼたちは警戒した。
徐に手を突っ込んだオントワーンは中身を鷲掴みにして、勢いよくそれを生人間に塗りつける。
ズジャリジャリジャリ、と大きな音が響くほど強く塗りつけながら、「突撃ー‼」と叫んだ。
「塩かそれー――!」(ローゼ&エミリア)
と長音が伸びきる前に生人間が猛ダッシュ。めっちゃはえェェ!
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼」と叫びくる生人間にびっくりしたローゼも「ぎゃぁぁぁぁぁー」と叫び声をあげて走って逃げる。二人して闇夜に消えていった。
しばらく走ったローゼは、後ろから何やら声が聞こえてくることに気がついた。
「ファイッオー、ファイッオー、ファイッファイッオー! ファイッオー、ファイッオー、ファイッファイッオー!」
見ると、三角木馬に立ちのりしたエミリアがメガホン持って掛け声をかけている。
「頑張れっローゼ! そんなんじゃ、フルマラソン走りきれないぞ」
「何やってんのよエミリア! 遊んでないで戦ってぇぇ」
「良いんですか?」
そうお伺いを立てるエミリアは、なぜ? と疑問に思うローゼに説明する。
「生人間マッパですよ。もしわたしが戦って見てしまうことがあったら、R指定間違いないですよ?」
確かにそうだ。仕方がない。塩切れするまで走り続けるしかないか。ローゼは長距離マラソンには自身がある。軍学校で完徹マラソンを何度もしていたから、生人間に走り勝つ自信があった。
同じく三角木馬に跨ったオントワーンが、自らの尻の割れ目を刺激しながら追いついてきた。そのオントワーンにエミリアが言う。
「生人間の本領発揮はこれからだぜ」
エミリア何言ってんだよ。それオントワーンのセリフだろ?
「良いんですよ、わたしで」
そう言ってカバンの中から鷹の爪を鷲掴みにして取り出したエミリアは、ワシャワシャと握りつぶして叫ぶ。
「悪魔牙団だけに鷹の爪弾はっしゃ―!」
それと同時に、粉々になった鷹の爪を生人間の背中に浴びせかける。しかもオントワーンがそれをアカスリでゴシゴシしごく。
「ぎゃぁぁぁ~」と叫ぶ生人間。「~~~~~~~~~~~~~~~~‼‼‼‼‼」でスピードアップ。
「いやぁぁぁぁ~~~~‼‼‼」一緒に叫んでローゼが逃げる。
エミリア、上手く言ったよ、って感じの満面の笑み。全然うまくないかんね。悪魔と鷹関係ないし、牙と爪関係ないし。でもエミリア「“だん”は一緒です」と満足気。
だいぶ長い時間が過ぎて、ようやく塩と唐辛子の沁みが引いてきた生人間は、走る速度が落ちてきた。それを見たエミリアが掛け声を繰り返すが効果がない。仕方がない、とエミリアはバックから何やら瓶を取り出してコルク栓を抜いた。すごいにおいのする薬。追い風だったから、ローゼの鼻にもその匂いがツーンと届いた。
「なっなっ何する気なのよ、エミリア⁉ それ虫刺され肩こり筋肉痛に効く異国の薬でしょう? まさか、まさか――」
「そのまさかです!」
そう言ったエミリアは、バッシャぁーと生人間の背中に浴びせかける。
「ぐぎゅわぁぎゅわぁぎゅわぁぎゅわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
さっきよりひどい絶叫で猛ダッシュ。その声に振り向いたローゼの視界いっぱいに未知の形相で迫る生人間。「助けて~」ローゼもマッハの全力疾走。
「秘儀ゴールデンクラッシュ」とエミリア。秘儀っていうかそれ薬の名前。世界で一番有名なかゆみ止めのお薬なんだけれど、これが沁みるのなんって。ちょっとかいてひっかき傷があろうものなら、悶絶必死の地獄薬なのだ。
生人間、それでもなおローゼに追いつけない。もはや白目をむいて死にかけている。もう少しで走り勝てる、とローゼが思った時に、またもエミリアの声がした。
「仕方がありませんね、秘伝の奥義を繰り出さないといけないみたいです」
ゴールデンクラッシュ以上の薬なんてこの世にあるの? そう思ったローゼの鼻に、何やら沁みそうな鮮烈な、よく言えばスカッとした爽快な刺激臭、ちょっと涙が出そうなにおいが流れてきた。
ローゼには何のにおいか分からないので説明すると、実はこれ筋肉痛に効く異国の薬。塗り過ぎると、赤くなるまで火にかざした鉄ゴテを押し当てられたのではないか、と思うほどの激痛に襲われる。しばらくの間は、大やけどに似た痛みを感じるすごい薬。名前は『シデシデ』
さっきの薬と同様、患部にちょびっと塗るだけのものなのに、エミリアは最後の一滴まで惜しみ無くバッシャぁーと浴びせかけた。
「きぇぁば~~~~~~―――ぐおぉぉぉぉぉっ」
生人間から二種類の奇声が聞こえる。たぶん鉄ゴテを押し当てられた痛みと、やけど後の痛みを堪える叫びだろう。
エミリアの所業を見ていたオントワーンが猟奇的な笑みを浮かべて言った。
「ゴールデンクラッシュとシデシデを浴びせかけるなんて、何たる残虐さだ。世界一残虐な国の牢獄ですら、これらを拷問で使用するのをためらうほどなのに……」
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