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第六十一話 ジャージの下は如何に
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町に出て必死に追いかける二人。
「もう、どこ行っちゃったのよ」ローゼは少しイラついている。
「ローゼさん、わたしたちで捕まえられるんでしょうか。アンドレイさんたち牙が数人がかりで捕まえられなかった俊足ですよ」
確かに。実際は幹部の牙たちだけではなく、彼らの部下もいたはずだから、百人で追いかけても捕まえられないかも。
「――て、ローゼさん、その格好……」
エミリアにそう言われてローゼが自分を見やると、紺のセーラー服? しかも肘丈。足ジャージ。
「ださっ」とエミリア。「なんか、だっさい古びた感じのルージュのジャージ? どこの田舎のファッションですか?」
せめてスカートの下にして。
「にしても、相当な自信家ですね」と言うエミリアに、「何?」とローゼが訊く。
「この期に及んでもでべそ出しですか?」
“で”がよけいだよ。
デコぴん代わりにローゼ反撃。
「そう言うあんたは自分を心配したりしないの?」
「大丈夫ですよ。ずっと警戒していましたから。空手家の動体視力は伊達ではありません」
ぐるぐる丸眼鏡をかけたエミリアが、自信たっぷりに言い放つ。
「胸に3‐1って書いてあるけど」ローゼ、ざまぁ、と笑み浮かべる。
「ああっ、いつの間に!」
体操着の上を着て、どこかの王様か王子様がご着用していそうな膨らんだ紅白縦縞キラキラのズボンを穿いている。股間には長い首の白鳥の頭。背中にはサンバガールがつけてそうな羽がたくさん立っていた。妙な中腰でがに股、かかとに羽の生えたつま先の長い靴を履いている。
「さすがね、小学校三年生の体操着を着られるなんて、若さがなせる業ね」とローゼが嫌味を言う。
「今に見返してやる。成長はこれからだからっ」と負け犬の遠吠え。エミリア歯ぎしり。
ぐるぐる丸眼鏡をかけているせいか、なんか口の動きがへらへらしているように見えて、バカっぽい。
エミリアがローゼに手を伸ばす。
「そのジャージ返してください」
「エミリアのじゃないでしょ?」
「上が体操着で下がジャージが普通じゃないですか?」
「じゃあ、わたしはどうするのよ」
「ブーメランパンツでいてくださいよ」
穿いてねーよ。
「ノーパンですか?」
そういう意味じゃないよ。
「せめて白鳥貴族渡しなさいよ」ローゼが提案。
「だめです、これ持って帰りますから」
ほんとに追う気あるのかコイツら……、と天のため息。
ややあって追いかけっこ再開。
「ああっ」
いつの間にか、ローゼモヒカン姿。縦一列全部がたくさんの三つ編みで、先っちょ全部に小さなリボン。しかも胸しか隠れないほど短い丈のぴちぴちチビティ並みなセーラー服。肩は何列ものフリルで覆われている。
「やっだー、こんな恰好じゃ外歩けなーい」
もう初めっから外だから、みんなのいい笑い者。
ケラケラ、ヘラヘラ笑うエミリアの横で顔面を真っ赤に染めて泣き叫ぶローゼ。走り回ってようやく美穂を見つけた。なんか隠れてモジモジしている。
「どうしたの?」とローゼが話しかけると、「しっ」と唇の前で人差し指を立てる美穂。
「もしかして、あれ……」とエミリア。向こうから茶色い髪でしっかりとした眉の可愛い男の子が歩いてくる。ロベルト君のようだ。
「わたしあげる物なにもないよ」美穂が不安げに言った。
ローゼは、「急いで何か買ってきましょう」とエミリアと美穂をファンシーグッズのお店にやって、自分はロベルト君を足止めに行く。
「うわぁぁぁぁっ」と叫びだすロベルト君。
「やばい、忘れてた。わたし今変な格好だったんだ」
「助けてー」
ローゼは、逃げるロベルト君を思わずひきとめる。
「何やっているんだ女!」と町のセレブたちが駆けつけた。
ローゼ大慌て。
「いや、わたし怪しい者じゃありません」
「嘘つけ」「そんな見た目で誤魔化せると思っているのか?」
おっしゃる通りでございます。
それでも何とかローゼは言った。
「わたし、美穂ちゃんの――佐藤美穂ちゃんのお友だちなの」
それを聞いて、ローゼの格好に合点がいったロベルト君、騒ぐのをやめた。被害者同士だ。同情してくれているのが瞳から窺える。今心で繋がる二人。
そこにやって来た美穂、勇気を出して、
「ロベルト君――」
「美穂ちゃん」
「ロベルト君、これ……あげる」
「え?」
潰れて目が飛び出したヒキガエルのバックチャーム。手のひらサイズ。
「あ、間違えた。これあげる」
可愛いトラ猫のモモちゃんストラップ。どんな間違えしてんだよ。
「ペチャさんの趣味悪すぎ」美穂が頬を膨らます。
ああ納得。てか名前ペチャさん呼ばわり?
エミリアは、「間違ってあがちゃわないでね」とバックチャームを受け取って白鳥の首にぶら下げた。
「ローゼさん、行くとこまでいっちゃいましたね」エミリアが、顎をちょい、と上げて上から目線で、小ばかにしたように言う。
「ペチャさんはどうなのよ」
「はい、わたしは大丈夫です。ずっとお手手繋いでいましたから」
“ペチャさん”のとこスルーなのね?
ローゼ言わないけど、エミリアの頭頂部ザビザビ風。ザビザビより何回りも大きい。結構な割合でツルぴかりん。なんでか口がおちょこ口でしっかりつむいでいる。
ショーウィンドーに映った姿を見て、エミリアようやく気がついた。
「あぎゃっ! いつの間に⁉」
その横でいい感じの2人。
「ありがとう、美穂ちゃん」
ロベルト君まんざらでもなさそう。でも下半身すっぽんぽん。襯衣(Tシャツ)長くて助かった。短かったらR確実。
「やめてよ美穂ちゃん!」慌ててズボンを穿くロベルト君「もう美穂ちゃんなんか大っ嫌い」と叫んで走って逃げて行った。
「ああ~、あああ~」と手だけ伸ばして追いすがる美穂。その場でナヨナヨとへたれ込む。
「うそつき! フラれちゃったじゃん」
いや、それ脱がせたせいだよね。
「ペチャの言う通りだ」とローゼを睨みつける美穂「偽ボイン。いたいけない少女を騙して最低!」。
“さん”すらつけなくなったよ。
ローゼの言うことを聞いたことをとても後悔している様子で、怒りを膨らませて屹立する美穂ちゃんでした。
「もう、どこ行っちゃったのよ」ローゼは少しイラついている。
「ローゼさん、わたしたちで捕まえられるんでしょうか。アンドレイさんたち牙が数人がかりで捕まえられなかった俊足ですよ」
確かに。実際は幹部の牙たちだけではなく、彼らの部下もいたはずだから、百人で追いかけても捕まえられないかも。
「――て、ローゼさん、その格好……」
エミリアにそう言われてローゼが自分を見やると、紺のセーラー服? しかも肘丈。足ジャージ。
「ださっ」とエミリア。「なんか、だっさい古びた感じのルージュのジャージ? どこの田舎のファッションですか?」
せめてスカートの下にして。
「にしても、相当な自信家ですね」と言うエミリアに、「何?」とローゼが訊く。
「この期に及んでもでべそ出しですか?」
“で”がよけいだよ。
デコぴん代わりにローゼ反撃。
「そう言うあんたは自分を心配したりしないの?」
「大丈夫ですよ。ずっと警戒していましたから。空手家の動体視力は伊達ではありません」
ぐるぐる丸眼鏡をかけたエミリアが、自信たっぷりに言い放つ。
「胸に3‐1って書いてあるけど」ローゼ、ざまぁ、と笑み浮かべる。
「ああっ、いつの間に!」
体操着の上を着て、どこかの王様か王子様がご着用していそうな膨らんだ紅白縦縞キラキラのズボンを穿いている。股間には長い首の白鳥の頭。背中にはサンバガールがつけてそうな羽がたくさん立っていた。妙な中腰でがに股、かかとに羽の生えたつま先の長い靴を履いている。
「さすがね、小学校三年生の体操着を着られるなんて、若さがなせる業ね」とローゼが嫌味を言う。
「今に見返してやる。成長はこれからだからっ」と負け犬の遠吠え。エミリア歯ぎしり。
ぐるぐる丸眼鏡をかけているせいか、なんか口の動きがへらへらしているように見えて、バカっぽい。
エミリアがローゼに手を伸ばす。
「そのジャージ返してください」
「エミリアのじゃないでしょ?」
「上が体操着で下がジャージが普通じゃないですか?」
「じゃあ、わたしはどうするのよ」
「ブーメランパンツでいてくださいよ」
穿いてねーよ。
「ノーパンですか?」
そういう意味じゃないよ。
「せめて白鳥貴族渡しなさいよ」ローゼが提案。
「だめです、これ持って帰りますから」
ほんとに追う気あるのかコイツら……、と天のため息。
ややあって追いかけっこ再開。
「ああっ」
いつの間にか、ローゼモヒカン姿。縦一列全部がたくさんの三つ編みで、先っちょ全部に小さなリボン。しかも胸しか隠れないほど短い丈のぴちぴちチビティ並みなセーラー服。肩は何列ものフリルで覆われている。
「やっだー、こんな恰好じゃ外歩けなーい」
もう初めっから外だから、みんなのいい笑い者。
ケラケラ、ヘラヘラ笑うエミリアの横で顔面を真っ赤に染めて泣き叫ぶローゼ。走り回ってようやく美穂を見つけた。なんか隠れてモジモジしている。
「どうしたの?」とローゼが話しかけると、「しっ」と唇の前で人差し指を立てる美穂。
「もしかして、あれ……」とエミリア。向こうから茶色い髪でしっかりとした眉の可愛い男の子が歩いてくる。ロベルト君のようだ。
「わたしあげる物なにもないよ」美穂が不安げに言った。
ローゼは、「急いで何か買ってきましょう」とエミリアと美穂をファンシーグッズのお店にやって、自分はロベルト君を足止めに行く。
「うわぁぁぁぁっ」と叫びだすロベルト君。
「やばい、忘れてた。わたし今変な格好だったんだ」
「助けてー」
ローゼは、逃げるロベルト君を思わずひきとめる。
「何やっているんだ女!」と町のセレブたちが駆けつけた。
ローゼ大慌て。
「いや、わたし怪しい者じゃありません」
「嘘つけ」「そんな見た目で誤魔化せると思っているのか?」
おっしゃる通りでございます。
それでも何とかローゼは言った。
「わたし、美穂ちゃんの――佐藤美穂ちゃんのお友だちなの」
それを聞いて、ローゼの格好に合点がいったロベルト君、騒ぐのをやめた。被害者同士だ。同情してくれているのが瞳から窺える。今心で繋がる二人。
そこにやって来た美穂、勇気を出して、
「ロベルト君――」
「美穂ちゃん」
「ロベルト君、これ……あげる」
「え?」
潰れて目が飛び出したヒキガエルのバックチャーム。手のひらサイズ。
「あ、間違えた。これあげる」
可愛いトラ猫のモモちゃんストラップ。どんな間違えしてんだよ。
「ペチャさんの趣味悪すぎ」美穂が頬を膨らます。
ああ納得。てか名前ペチャさん呼ばわり?
エミリアは、「間違ってあがちゃわないでね」とバックチャームを受け取って白鳥の首にぶら下げた。
「ローゼさん、行くとこまでいっちゃいましたね」エミリアが、顎をちょい、と上げて上から目線で、小ばかにしたように言う。
「ペチャさんはどうなのよ」
「はい、わたしは大丈夫です。ずっとお手手繋いでいましたから」
“ペチャさん”のとこスルーなのね?
ローゼ言わないけど、エミリアの頭頂部ザビザビ風。ザビザビより何回りも大きい。結構な割合でツルぴかりん。なんでか口がおちょこ口でしっかりつむいでいる。
ショーウィンドーに映った姿を見て、エミリアようやく気がついた。
「あぎゃっ! いつの間に⁉」
その横でいい感じの2人。
「ありがとう、美穂ちゃん」
ロベルト君まんざらでもなさそう。でも下半身すっぽんぽん。襯衣(Tシャツ)長くて助かった。短かったらR確実。
「やめてよ美穂ちゃん!」慌ててズボンを穿くロベルト君「もう美穂ちゃんなんか大っ嫌い」と叫んで走って逃げて行った。
「ああ~、あああ~」と手だけ伸ばして追いすがる美穂。その場でナヨナヨとへたれ込む。
「うそつき! フラれちゃったじゃん」
いや、それ脱がせたせいだよね。
「ペチャの言う通りだ」とローゼを睨みつける美穂「偽ボイン。いたいけない少女を騙して最低!」。
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