85 / 113
第八十五話 想像力捻って絞り出してみよう
しおりを挟む
ドラゴンの生息域の外とはいえ、ローゼたちが歩む細い山道は、まだ樹海の中。本来ならゴブリンなどの邪霊獣や人獣の類が人間の匂いを嗅ぎつけてわんさかと出てきてもおかしくないのだが、雑魚一匹出てこない。まして殺気立った気配すらない。
そんな中、「あっ」とローゼの口から声が発せられると同時に、「え?」とエミリアも声を出した。気配もなく目の前に忽然と男が現れたのだ。白い上着に紺のスカート(剣道の道着)? 見たこともない不思議な格好。
でもなかなかのいい男。唇にかかるくらいの左右の前髪は二股外跳ねで甕覗色(かめのぞきいろ。白っぽい薄い青)。
「お風呂上りでしょうか?」とエミリア。
バスローブじゃないんだから、とズッコケるローゼと男。
「空手やってて分かんないの?」
ローゼは本物を見るのは初めてだったが、たぶんジパングの武術のユニホーム。絵では見たことがある。
「えへへーっ、冗談ですっ☆」エミリア笑う。
照れているから多分ウソ。
ローゼは即座に男へと視線を戻す。
すると、鞘に左手を添えた男が言葉を発する。
「赤毛の者よ。その腰の物を置いてゆけ」
「ふん、剣を置くのはあなたの方よ、真野佐間之介」
ローゼはレイピアを抜いてユニコーンに構える。
「ほう、拙者の名を知っていて来るとは酔狂な。ならば、我が霊剣“草なぎの剣”の餌食にしてやろう」
第一幕 草なぎの剣
「草なぎの剣? 聞いたことないわね」とローゼがエミリアにアイコンタクトすると、「わたしも初耳ですー」と答えが返ってきた。
それを聞いて驚く佐間之介。
「なぬ? ジパングが誇る聖なる霊剣を知らぬと申すか」
ローゼ「知んない」
エミリア「そもそも、ジパングがどこか分かりません」
「そうなの?」ローゼびっくり。
「はい、名前だけは知ってますけど。黄金の国ジパングって」
ぽかーん、とした様子の二人に、佐間之介がご丁寧に説明してやる。
「これはな、幾多の紀元を隔てた遠い昔にジパングを襲ったという八岐大蛇を退治した伝説の剣なのだ」
「やまたのおろち?」とローゼ。
エミリアが「知らなーい」と首かしげる。
「くっ」とあからさまに気を悪くする佐間之介、我慢我慢で話を続ける。
「八岐大蛇とはな、八つの股がある竜蛇のことだ」
ほわほわほわ~ん、と想像する二人。まずエミリアが口を開いた。
「あはっ、ローゼさんの想像可愛いです。靴下の蛇みたい」
「でっしょー、靴下とか手袋でよく遊んだわ」
「でもなんか歩きにくそうですね」
「トイレどうするのかしら?」
「ランダムですよ」
好き勝手言う二人。足が九本ある直立のヘビを想像している様子。
「足一本多くないですか?」と唇に指を置くエミリア。
「一本少ないのよ」
すると佐間之介が叫ぶ。
「バカっ、よけい歩きにくいわ!――じゃない、そっちの股ではない。首の股だ」
「首の股?」(ローゼ&エミリア)
ほわほわほわ~ん、と想像する二人。今度はローゼが口を開く。
「エミリア、桃みたいなお尻の大群」
ヘビの首、九つお尻でいっぱい。
「おならしたら臭そう」とエミリアがケラケラ笑う。
「ちがーう!」とつっこむ佐間之介に、ローゼぴんぽーん、とボタンを叩いて「ヒトデみたいなやつ?」と即回答。
首がまたまたになった円盤状のヘビ。首九つ。
「あ、なんか一匹カメの頭のやつがいますよ」エミリアばかウケ。
めっちゃたれ目だ。アホっぽい。
ローゼが「なんか、食べた物が反対側の口から出てきそうね」と一言つけた。
「分かった」と、今度はエミリアがぴんぽーん。「これ引っ掛け問題です」と自信満々。「頭は一つなんです。首が九つあるんですよ」
「ちがーう」と想像を全否定する佐間之介「胴体から尻尾は普通のヘビなの。頭が九つあるの。
「つまりこうでしょ?」とローゼが言う。
ヒトデみたいなさっきの蛇の背中から尻尾が天に向かって伸びているヤツ。
「どう歩くんですか?」とエミリア。
答えてローゼが「野球のあれみたいによ。リーリーリーってベースから離れる横歩き」
「なるほど」
「聞いていれば、勝手なことをぬかしおって」と佐間之介はもはや我慢の限界にきた感じ。「見た感じは普通のヘビ。魔物にも二つ首のあるヘビとか犬とかがいるだろ! あんな感じだ」
「ああなんだ」とローゼ納得。エミリア「普通ですね」とつまんなそう。
「ご飯どうするのかしら」と、ローゼがエミリアに疑問を呈した。
「たしかに、その疑問は残りますね」
「一度に食べたら詰まっちゃうわね」
話に割り入る佐間之介。
「詰まらないようにできておるのだ」
「また知ったかぶっちゃって」とローゼ呆れ気味。
今度はエミリアが疑問を呈する。
「でも、山をも喰らう大蛇ですよね? そんな小さな剣でどう退治したんですか?」
「うむ、それはな」と説明する佐間之介。「カクカクシカジカこういうことだ」
「何それ」と開口一番ローゼが言った。「お酒で酔いつぶれるって、何でヘビっていつもそうなのかしら。ばっかじゃないの?」
「ぬぐぐぐ~! もう許せん!」
怒った佐間之介が剣を抜く。
「しょぼっ!」と思わずローゼが吹き出した。「鋳造製?」
めっちゃ錆びてて青緑になっている。使えんのか?
「うぷぷぷぷ」とローゼに笑われて憤慨する佐間之介が凄む。
「この剣は、八岐大蛇の尾から出現したという我が国最強の霊剣ぞ! 竜すら屠ると言われているこの伝説の剣を愚弄するのか⁉」
「ん?」とローゼ「尾からって言った?」
それ倒した剣じゃないんじゃね?
「拙者が推察するところ、尾から出てきたこの剣によって、全ての首が斬り散らされたってすんぽうなのだろう」
無理やり過ぎだろ。
「尾から出てきたってことはうんこ製か?」
なんか聞こえた‼‼‼
三人に戦慄が走る。間違いないよ。なんかいるよ。
ビビる佐間之介を見やって、ローゼが言った。
「あんたも苦手なのね、あいつのこと」
「うむ、刀で切れんからな」
「そうなの?」とエミリア。
「だってあれだから――」とローゼ言葉を濁した。
長い沈黙――
「まさかいるのか?」と佐間之介が恐る恐る言った。
「まさかー、入るわけ――」
ローゼ言いかけて、また沈黙。みんな揃ってすっげーさぶいぼ。羽毟られた鶏並みのが全身に湧く。
エミリアが小さく口を開いた。
「……でも…今までの戦いではいたんですよね?」
三人して足の裏を一斉に確認する。踏んでない。
「アヤツはうんこ空間をワープできるって言うからな」と恐る恐る呟き、キョロキョロする佐間之介。
なんだよ、うんこ空間て。
「もう魔物ですね」エミリア真をつく。
ローゼが嘆くように言った。
「チンパンチンで絶命してほしいホントに」
そんな中、「あっ」とローゼの口から声が発せられると同時に、「え?」とエミリアも声を出した。気配もなく目の前に忽然と男が現れたのだ。白い上着に紺のスカート(剣道の道着)? 見たこともない不思議な格好。
でもなかなかのいい男。唇にかかるくらいの左右の前髪は二股外跳ねで甕覗色(かめのぞきいろ。白っぽい薄い青)。
「お風呂上りでしょうか?」とエミリア。
バスローブじゃないんだから、とズッコケるローゼと男。
「空手やってて分かんないの?」
ローゼは本物を見るのは初めてだったが、たぶんジパングの武術のユニホーム。絵では見たことがある。
「えへへーっ、冗談ですっ☆」エミリア笑う。
照れているから多分ウソ。
ローゼは即座に男へと視線を戻す。
すると、鞘に左手を添えた男が言葉を発する。
「赤毛の者よ。その腰の物を置いてゆけ」
「ふん、剣を置くのはあなたの方よ、真野佐間之介」
ローゼはレイピアを抜いてユニコーンに構える。
「ほう、拙者の名を知っていて来るとは酔狂な。ならば、我が霊剣“草なぎの剣”の餌食にしてやろう」
第一幕 草なぎの剣
「草なぎの剣? 聞いたことないわね」とローゼがエミリアにアイコンタクトすると、「わたしも初耳ですー」と答えが返ってきた。
それを聞いて驚く佐間之介。
「なぬ? ジパングが誇る聖なる霊剣を知らぬと申すか」
ローゼ「知んない」
エミリア「そもそも、ジパングがどこか分かりません」
「そうなの?」ローゼびっくり。
「はい、名前だけは知ってますけど。黄金の国ジパングって」
ぽかーん、とした様子の二人に、佐間之介がご丁寧に説明してやる。
「これはな、幾多の紀元を隔てた遠い昔にジパングを襲ったという八岐大蛇を退治した伝説の剣なのだ」
「やまたのおろち?」とローゼ。
エミリアが「知らなーい」と首かしげる。
「くっ」とあからさまに気を悪くする佐間之介、我慢我慢で話を続ける。
「八岐大蛇とはな、八つの股がある竜蛇のことだ」
ほわほわほわ~ん、と想像する二人。まずエミリアが口を開いた。
「あはっ、ローゼさんの想像可愛いです。靴下の蛇みたい」
「でっしょー、靴下とか手袋でよく遊んだわ」
「でもなんか歩きにくそうですね」
「トイレどうするのかしら?」
「ランダムですよ」
好き勝手言う二人。足が九本ある直立のヘビを想像している様子。
「足一本多くないですか?」と唇に指を置くエミリア。
「一本少ないのよ」
すると佐間之介が叫ぶ。
「バカっ、よけい歩きにくいわ!――じゃない、そっちの股ではない。首の股だ」
「首の股?」(ローゼ&エミリア)
ほわほわほわ~ん、と想像する二人。今度はローゼが口を開く。
「エミリア、桃みたいなお尻の大群」
ヘビの首、九つお尻でいっぱい。
「おならしたら臭そう」とエミリアがケラケラ笑う。
「ちがーう!」とつっこむ佐間之介に、ローゼぴんぽーん、とボタンを叩いて「ヒトデみたいなやつ?」と即回答。
首がまたまたになった円盤状のヘビ。首九つ。
「あ、なんか一匹カメの頭のやつがいますよ」エミリアばかウケ。
めっちゃたれ目だ。アホっぽい。
ローゼが「なんか、食べた物が反対側の口から出てきそうね」と一言つけた。
「分かった」と、今度はエミリアがぴんぽーん。「これ引っ掛け問題です」と自信満々。「頭は一つなんです。首が九つあるんですよ」
「ちがーう」と想像を全否定する佐間之介「胴体から尻尾は普通のヘビなの。頭が九つあるの。
「つまりこうでしょ?」とローゼが言う。
ヒトデみたいなさっきの蛇の背中から尻尾が天に向かって伸びているヤツ。
「どう歩くんですか?」とエミリア。
答えてローゼが「野球のあれみたいによ。リーリーリーってベースから離れる横歩き」
「なるほど」
「聞いていれば、勝手なことをぬかしおって」と佐間之介はもはや我慢の限界にきた感じ。「見た感じは普通のヘビ。魔物にも二つ首のあるヘビとか犬とかがいるだろ! あんな感じだ」
「ああなんだ」とローゼ納得。エミリア「普通ですね」とつまんなそう。
「ご飯どうするのかしら」と、ローゼがエミリアに疑問を呈した。
「たしかに、その疑問は残りますね」
「一度に食べたら詰まっちゃうわね」
話に割り入る佐間之介。
「詰まらないようにできておるのだ」
「また知ったかぶっちゃって」とローゼ呆れ気味。
今度はエミリアが疑問を呈する。
「でも、山をも喰らう大蛇ですよね? そんな小さな剣でどう退治したんですか?」
「うむ、それはな」と説明する佐間之介。「カクカクシカジカこういうことだ」
「何それ」と開口一番ローゼが言った。「お酒で酔いつぶれるって、何でヘビっていつもそうなのかしら。ばっかじゃないの?」
「ぬぐぐぐ~! もう許せん!」
怒った佐間之介が剣を抜く。
「しょぼっ!」と思わずローゼが吹き出した。「鋳造製?」
めっちゃ錆びてて青緑になっている。使えんのか?
「うぷぷぷぷ」とローゼに笑われて憤慨する佐間之介が凄む。
「この剣は、八岐大蛇の尾から出現したという我が国最強の霊剣ぞ! 竜すら屠ると言われているこの伝説の剣を愚弄するのか⁉」
「ん?」とローゼ「尾からって言った?」
それ倒した剣じゃないんじゃね?
「拙者が推察するところ、尾から出てきたこの剣によって、全ての首が斬り散らされたってすんぽうなのだろう」
無理やり過ぎだろ。
「尾から出てきたってことはうんこ製か?」
なんか聞こえた‼‼‼
三人に戦慄が走る。間違いないよ。なんかいるよ。
ビビる佐間之介を見やって、ローゼが言った。
「あんたも苦手なのね、あいつのこと」
「うむ、刀で切れんからな」
「そうなの?」とエミリア。
「だってあれだから――」とローゼ言葉を濁した。
長い沈黙――
「まさかいるのか?」と佐間之介が恐る恐る言った。
「まさかー、入るわけ――」
ローゼ言いかけて、また沈黙。みんな揃ってすっげーさぶいぼ。羽毟られた鶏並みのが全身に湧く。
エミリアが小さく口を開いた。
「……でも…今までの戦いではいたんですよね?」
三人して足の裏を一斉に確認する。踏んでない。
「アヤツはうんこ空間をワープできるって言うからな」と恐る恐る呟き、キョロキョロする佐間之介。
なんだよ、うんこ空間て。
「もう魔物ですね」エミリア真をつく。
ローゼが嘆くように言った。
「チンパンチンで絶命してほしいホントに」
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる