DEVIL FANGS

緒方宗谷

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第百四話 軍人同士だから通じ合えるもの

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 罵声怒声が飛び交う阿鼻叫喚の大混戦。
 立ち直ったローゼ「変な旅につき合わせちゃってごめんね、エミリア」と、後ろめたい様子でそうに言った。
 「良いんですよ」
 「その実、変態ばっかでさぞ最悪だったことでしょう? 言っても十四歳だもんね。終いには千人に囲まれて絶体絶命…だなんて」
 「そんなことないですよ、こんなに変態に出会えるなんて、めったにありませんから」
 すっごいポジティブ。
 「それに千対百なんて物語の中だけですもん」
 「強いのね」
 「人生遊び半分ですから」
 「すっごい格言でたな! しんみりして損した」
 まあ、しんみりできる光景でもないが……。
 左を見ると『烈風怒涛のバルカンうんこ』。パーク秘蔵の必殺技。
 右を見ると『電光石火の三角石畳(石抱)』オントワーン最強奥義。
 下劣な攻撃キター!
 両手を合わせて天に掲げて高速で回転するパーク。遠心力でパンティ内部のうんこが繊維の隙間から滲み出して、小さな粒となって三百六十度すべてに飛び散った。
 慌てて塀の陰に走るローゼとエミリア。仲間まで攻撃してんじゃんかよ。
 「避けれないのが悪いんだ」とボス&オントワーン。
 マジ? これ避けれてんの? 塀の陰に隠れたローゼたちが、恐る恐る慎重に外を見てみる。
 ――てみんな避けれてないじゃん! まる当りだよ。
 パークのバルカンうんこ攻撃によって多くの兵士が散っていく。その中でうんこ弾を避けもせずに真っ直ぐと歩む男がいた。ルイスだ。
 「祖国のため、心情のためにみんなは戦う。そして僕は死屍累々の大地の上で勝利の雄たけびをあげるのだ」
 格好良いこと言ってるけど、全身うんこまみれだかんね。でもスゲー。全身に浴びてるくせに、素肌には当たってないよ。だってよく見ると、バイザーのスリットや関節のメイル部分にうんこ当っていないもん。
 雄々しくフォムターグに構えるルイス・スチュワート。
 「いざ勝負だ」
 馬どうしたんだよ。
 「ふ、ハンデさ」
 落とされたんだな。
 アンドレイ「ほほう、少佐か、若いのに大したものだな」
 ルイス「随分と地べたを這いずってきたようだな。お前の人生、その見てくれに滲み出ているぞ」
 アンドレイ「ああ、確かに泥臭い人生だ――」
 あらら、また回想ですか?
 ナレーションにアンドレイが答える。
 「ああ、青二才を見ると、無性に鍛えてやりたくてな」
 何かを思い出したように、アンドレイが笑みを浮かべた。
 「俺は入隊以前から将校扱いだ」
 何だよ、自慢話かよ。
 「赤紙もらって行った身体検査でも特別扱いで、個人部屋を与えられた」
 それを聞いたルイスの頬に一筋の汗。
 「なかなかだな」
 でも赤紙って兵卒だよね。将校扱いってうそ臭くね? 
 「個人部屋って、絶対臭かったのよ」とローゼがエミリアに耳打ちをする。
 「入隊後も初めっから個人部屋さ」懐かしみに浸るようにアンドレイが言う。
 「なぬ? 階級は?」ルイスが訊いた。
 「三等兵だ」
 一番下じゃんか、って聞いたことねーよ、そんな階級。ラルガルマンにそんな階級あったっけ?
 「俺のために特別に作られたのさ」
 「そんな特別扱いされるなんて大したものだが、このルイス・スチュワートは少佐スタートだったさ」
 自慢してるけど、現場に出てるってオフィサーなのに変じゃねぇ?
 今度はエミリアが「窓際族ならぬ窓外族ですね」とナイスつっこみ。
 アンドレイさん、良く入隊させてもらえたな。回想シーン見返すと、“健康不十分”て書いてあったぞ。
 「ああ、字なんて軟弱なもん読めないからな。筋肉訊きに将軍んちに行ったら――」
 筋肉って何だよ、“話し”だろ?
 「――入隊してくれって泣いて頼まれたんだ。それで悟った。もっと鍛えろってことだとな」
 臭くて帰ってほしかったんだろ? “健康不十分”の前か後になんか書いてあったろ? たとえば“不合格”。 
 「そんな軟弱な文字読めねーな」
 「さすがだ」とルイス。
 マジっすか?
 アンドレイVSルイス。一進一退の攻防が続く。

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