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忍び寄る影8
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「守国の舞など滅多に拝見できるものではありませんし、何より先程の祈様の舞はとても優雅で可憐でした!!」
「先日の祈祷の舞も拝見したかったのですが、妓女は祈祷中の出入りを禁止されているので見ることが叶わず・・・」
「やはり幼い頃から舞を嗜まれていたのですか?」
矢継ぎ早に話しかけられ少し混乱してしまうが妓女達の質問に1つずつ答えていく。
「そうですね・・・、舞は巫女としてとても重要なものの1つですから。私にとっては切っても切れないものですね」
「そうだったのですね。私達妓女にとって舞は教養の1つとして教えられますが、祈様にとっては祭事だけでなく巫女としても重要な事なのですね」
鈴麗と妓女達は考え深そうな顔をしながら頷いている。
「そう言えば、ずっと聞きたかったんですけど・・・」
私は今まで気になっていた事を尋ねることにした。
「みんなは何故妓女をしているの?」
守国に妓女というものはない。
歌や舞は巫女として必要なものなので得意な人はいても歌や舞のみを行う人はいない。
まず妓女という職業自体この国に来て初めて知った。
だからこそ彼女達が何故妓女として働いているのか知りたい。
そう告げると妓女達はそれぞれ身の上話を始めた。
話を聞いていくと家が貧しく家計を助けるためや昔見た妓女の舞に憧れた者、孤児でここに流れついた者と理由は様々だった。
「鈴麗は私の身の回りの事をしてくれているから妓女ではないけどなぜ王宮に?」
鈴麗とはこれまで他愛のない話をいくつかしてきたが王宮に入った理由までは聞いたことがなくとても興味があった。
「私が王宮に来たのは家計を助ける為です」
鈴麗は手に持っていた琵琶にそっと触れ目を伏せながら話し始めた。
「私の家は家族が多く、少しでも家計の足しになればと当時国では高給だった王宮での仕事に就きました」
先程、音楽を生業にしている家系出身ならば大層裕福なのだと思っていたらそうでもないらしい。
鈴麗曰く、輝国は五大国の1つに数えられるほど大きな国なので収入は多いが、その分何かと物価が高いので普通に暮らしていると貧乏というわけではないが、裕福と言えるほど余裕があるわけではないらしい。
しかし、王宮で働くと一般的な職業より収入が多く今までよりも家族が楽に暮らしていけるという事だった。
「普通に暮らしていれば裕福な方なのでしょうが我が一族は音を奏でることに重きを置いている者が多いので、その・・・珍しい楽器などを見ると後先考えず購入する者が多いのでそれも貧しい要因ですね」
少し引きつったように笑う鈴麗の表情から今までの苦労がうかがえる。
「そんな苦労があったのね」
「そうです。一族みんなで音を奏でる事はとても楽しかったのですがそれだけでは生活していけないのが実情で・・・。私自身、長女で幼い頃から両親の仕事を手伝っていまして音楽の教養はあっても学び舎には通えなかったので下の妹達にはいろいろな可能性を広げてもらうために学び舎に通ってもらいたいのでその為に働いています」
妓女ではないのに舞踏場にいたのはここに来ると舞の稽古のために楽器を弾かせてもらえるので自分の稽古と気分転換を兼ねて自分の時間を見つけては楽器を弾きに来ているらしい。
誇らしげに語る鈴麗は自分のやりたい事を一生懸命頑張っているとても素敵な人だと改めて実感した。
文化や環境が違うだけで色々な角度から物事を見ることができた。
「鈴麗は凄いのね・・・それに比べて私は・・・」
「祈様?」
「・・・・・・さぁ、稽古の続き続き!」
「は、はい・・・」
鈴麗を連れ舞踏場の端に行きその後も稽古に付き合ってもらった。
そんな稽古の合間に以前から少し気になっていた資料室で出会った人達の事を話してみた。
すると鈴麗は”鉄碎”という人物について話してくれた。
名を朴鉄碎と言い、それなりに有名な貴族・朴家の出身らしいが性格はかなり横暴で気に入らない官僚がいれば裏から手をまわし左遷させたり自分の意見は何があっても通そうとするなどと他の官僚達もほとほと困り果てているらしい。
注意しようにも名のある貴族だという事と、一族の国への貢献度が高いせいでむやみに口が出せない状態が続いていると教えてくれた。
どの国にも厄介な人の1人や2人はいるのね。
母国にいる思い出したくもない人物の顔が頭をよぎり不快な気持ちになる。
「あと、鎌哨という人はどんな人なの?」
鉄碎さんに付き従っているように見えたから従者か何かだとは思うけど。
そう考えながら鈴麗からの返答を待っていると彼女は難しい顔をしながら口を開く。
「あの方の事は実は分からないことが多いのです」
「分からないってどこかの名家の出身とかではないの?」
普通、官僚及びその従者は貴族や名家出身の者が多い。現に鉄碎さんは貴族の出身だったわけだからてっきり鎌哨と呼ばれていたあの男性もそうなのだと思っていたが・・・。
「はい。突如、朴様がご自身の側近にと連れてこられたのでどこの出身なのか何をしているのか詳しいことは分かりません。もしかすると、四席の皆様や朴様と同じ派閥の方々ならご存じかもしれません」
確か鉄碎さんは貿易を中心に仕事をされている秦家が率いる外交派だったはず。
秦家と言えば李桜さんは秦家出身。どこかで話を聞いてみよう。
それにしても私よりも長くここにいる鈴麗でも分からない人なんて・・・相当表立って仕事をしていないのかあるいは隠さなければならない事情があるのか。
「祈様、何か気になることでも?」
「ちょっと考え事をしてて・・・。もう一度曲の頭からお願い」
「かしこまりました」
頭をすっきりさせるため再び舞の稽古に励んだ。
あの日、矢を射られた日から私の身の回りで奇妙なことが起こっている。
それは・・・。
「やっぱり、全然できない」
何故かあの日以来何度やっても命うつしの能力がうまく発動しなくなってしまった。
気が付いたのはたまたまだった。
巫女の仕事以外にも自分の能力の訓練をしようといつも通り全神経を集中させ祈ってみる。いつもなら小さな光が現れ行く先を示してくれたり、祈った事が形となって叶ったりするのだが今は全く私の祈りに応えてくれない状態だ。
今までこんなことなかったのに・・・。
私が知らないだけかもしれないけど自分の周りの人でも命うつしがと突然使えなくなった人なんていない。
前例がないものには対処のしようがない。
1つ可能性があるとするならこの間突然飛んできた矢に触れた事によって誰かが私の能力を封じているという事。
何の為にそんなことをしたのかは分からないが確証がない分打つ手もない。
今のところ生活に支障はないがまた急に祈祷の依頼が来るかもしれないので諭按さんに相談だけはしよう。
そう思った時、丁度目の前を諭按さんが通りかかった。
「諭按さん!」
「祈様。何かご用でしょうか?」
矢が飛んできたなんて話すと諭按さんが心配をしてしまうと思いその部分には触れず、ここ最近命うつしの能力が使えないことについて軽く事情を話すと諭按さんは少し考え込んでしまった。
「命うつしが使えなくなったなど聞いたことがありませんね。祈様のおっしゃる通り、何者かに能力を封じられていると考えた方がいいでしょうね」
可能性としては命うつしを封じる呪詛の使い手かまたは相手の命うつしのよって封じられているか・・・。と諭按さんは考えを巡らせる。
他人の命うつしを封じる命うつしよりも呪詛のようなもので封じられていると考える方が現実的だとは思うが・・・。
「でも、一体誰が?」
「情報が少ないので何者の仕業なのか特定するのは難しいでしょう。何より、祈ることで様々な願いや想いを叶える能力をお持ちの祈様の命うつしを封じるのですから、相手は何か企んでいてそれを暴かれるのを恐れ封じた・・・という事ではないでしょうか?」
確かに、私の能力は”祈る”事で様々な願いや想いを叶えることができる。
もし、私が何かに気づきそれについて知りたいと思い命うつしを使えば全貌は分からないかもしれないが少なからず手掛かりとなるものは分かるだろう。
これが諭按さんの言うとおりだとすると今私の周りで何かが起ころうとしているという事になる。
「こんな時、彼がいてくれれば少しは祈様のお役に立てたのですが」
「彼?」
「この国の官僚なのですが、主に命うつしについて研究している学者でして。現在は所用で夜国に出向いております」
命うつしについて研究している学者・・・。
「命うつしの研究とは興味があります。戻られたらお会いしたいです」
「ええ、ぜひご紹介させていただきます。ですが、今はその者もいませんから我々でどうにかするしかありませんね。まあ、これを企てているのが反国王勢力の仕業だとしたら色々と納得がいきますがね」
「反国王勢力?」
聞きなれない言葉が聞こえ思わず聞き返す。
祈様には話していませんでしたね。と言って人目を避けるように近くにあった東屋まで連れていかれる。
「ここなら大丈夫でしょう。あそこではどこで誰に聞かれているか分かりませんからね」
そう言って東屋の中にある椅子に腰かけ私にも座るよう促し話し始めた。
「国王様が王位に就かれたのは12の時です。輝国は王になるものは必ずしも国王と血縁関係ではならないという決まりはありません。その為、当時は光焔様のほかにも王位継承者候補が何名かいらっしゃったのですが、当時の国王である光焔様のお父様・雷焔様は周りの反対を押し切って光焔様を国王になさいました。当時はそれはもう王宮は荒れに荒れましてね。特に光焔様以外の候補者を支援していた官僚達からの反感はすさまじいものでした。それこそ食事に毒を仕込まれたりすることなんてよくありましたから」
”昔からこういう事には慣れているんだ・・・”
あの時の言葉はそういう意味だったんだ。
「あれから反国王勢力の制圧を続けてはいたのですが、最近反国王勢力の仕業と思われる不可解な事例が報告として挙がっていたので心配をしていたのですが・・・」
諭按さんはひどく大きなため息をつき頭を下げる。
「申し訳ありません。なにやら祈様を巻き込んでしまっているようで・・・」
「そんな、今のところそこまで困っていないので大丈夫ですよ!」
実際本当に生活には支障をきたしていないので問題はない。
それでもなお頭を下げ続ける諭按さんに頭を上げるようお願いする。
「それに、私は今この国でお世話になっていますので、何か力になれることがあればお手伝いします」
あんなに立派な国王様に反感を持つなんて普段の国王様を見ていればどれだけ国の事を想っているかなんて一目瞭然だ。
他国の人間の自分でさえそう感じるのだから反国王勢力は国王様の人柄などではなくその存在自体が邪魔なのだろう。
「そう言っていただけるのはありがたいのですがこのようなことがあった以上、何も手を打たないわけにはいきませんのでこの事は国王様に報告しておきます。私から祈様にお願いできることがあるとすればこれからもどうぞ国王様を信じていただければと思います」
以前、蒼玉さんにも言われた国王様を信じてほしいという言葉。
これ程までみんなに信頼されている方を信じない者がいるだろうか。
「はい」
「では、くれぐれも身の回りにはお気を付けください。何かありましたらすぐにお呼びください」
そう言って報告の為か早々と東屋から去ってしまった。
これ以上、私の身に何かあったとしてもできる事なら自分自身でどうにかしたいが実際に何かあればそれこそ国王様をはじめ四席の皆さんや諭按さん達に迷惑をかけてしまうので今日のところは大人しく自室に戻りこれからの事を考えることにした。
「先日の祈祷の舞も拝見したかったのですが、妓女は祈祷中の出入りを禁止されているので見ることが叶わず・・・」
「やはり幼い頃から舞を嗜まれていたのですか?」
矢継ぎ早に話しかけられ少し混乱してしまうが妓女達の質問に1つずつ答えていく。
「そうですね・・・、舞は巫女としてとても重要なものの1つですから。私にとっては切っても切れないものですね」
「そうだったのですね。私達妓女にとって舞は教養の1つとして教えられますが、祈様にとっては祭事だけでなく巫女としても重要な事なのですね」
鈴麗と妓女達は考え深そうな顔をしながら頷いている。
「そう言えば、ずっと聞きたかったんですけど・・・」
私は今まで気になっていた事を尋ねることにした。
「みんなは何故妓女をしているの?」
守国に妓女というものはない。
歌や舞は巫女として必要なものなので得意な人はいても歌や舞のみを行う人はいない。
まず妓女という職業自体この国に来て初めて知った。
だからこそ彼女達が何故妓女として働いているのか知りたい。
そう告げると妓女達はそれぞれ身の上話を始めた。
話を聞いていくと家が貧しく家計を助けるためや昔見た妓女の舞に憧れた者、孤児でここに流れついた者と理由は様々だった。
「鈴麗は私の身の回りの事をしてくれているから妓女ではないけどなぜ王宮に?」
鈴麗とはこれまで他愛のない話をいくつかしてきたが王宮に入った理由までは聞いたことがなくとても興味があった。
「私が王宮に来たのは家計を助ける為です」
鈴麗は手に持っていた琵琶にそっと触れ目を伏せながら話し始めた。
「私の家は家族が多く、少しでも家計の足しになればと当時国では高給だった王宮での仕事に就きました」
先程、音楽を生業にしている家系出身ならば大層裕福なのだと思っていたらそうでもないらしい。
鈴麗曰く、輝国は五大国の1つに数えられるほど大きな国なので収入は多いが、その分何かと物価が高いので普通に暮らしていると貧乏というわけではないが、裕福と言えるほど余裕があるわけではないらしい。
しかし、王宮で働くと一般的な職業より収入が多く今までよりも家族が楽に暮らしていけるという事だった。
「普通に暮らしていれば裕福な方なのでしょうが我が一族は音を奏でることに重きを置いている者が多いので、その・・・珍しい楽器などを見ると後先考えず購入する者が多いのでそれも貧しい要因ですね」
少し引きつったように笑う鈴麗の表情から今までの苦労がうかがえる。
「そんな苦労があったのね」
「そうです。一族みんなで音を奏でる事はとても楽しかったのですがそれだけでは生活していけないのが実情で・・・。私自身、長女で幼い頃から両親の仕事を手伝っていまして音楽の教養はあっても学び舎には通えなかったので下の妹達にはいろいろな可能性を広げてもらうために学び舎に通ってもらいたいのでその為に働いています」
妓女ではないのに舞踏場にいたのはここに来ると舞の稽古のために楽器を弾かせてもらえるので自分の稽古と気分転換を兼ねて自分の時間を見つけては楽器を弾きに来ているらしい。
誇らしげに語る鈴麗は自分のやりたい事を一生懸命頑張っているとても素敵な人だと改めて実感した。
文化や環境が違うだけで色々な角度から物事を見ることができた。
「鈴麗は凄いのね・・・それに比べて私は・・・」
「祈様?」
「・・・・・・さぁ、稽古の続き続き!」
「は、はい・・・」
鈴麗を連れ舞踏場の端に行きその後も稽古に付き合ってもらった。
そんな稽古の合間に以前から少し気になっていた資料室で出会った人達の事を話してみた。
すると鈴麗は”鉄碎”という人物について話してくれた。
名を朴鉄碎と言い、それなりに有名な貴族・朴家の出身らしいが性格はかなり横暴で気に入らない官僚がいれば裏から手をまわし左遷させたり自分の意見は何があっても通そうとするなどと他の官僚達もほとほと困り果てているらしい。
注意しようにも名のある貴族だという事と、一族の国への貢献度が高いせいでむやみに口が出せない状態が続いていると教えてくれた。
どの国にも厄介な人の1人や2人はいるのね。
母国にいる思い出したくもない人物の顔が頭をよぎり不快な気持ちになる。
「あと、鎌哨という人はどんな人なの?」
鉄碎さんに付き従っているように見えたから従者か何かだとは思うけど。
そう考えながら鈴麗からの返答を待っていると彼女は難しい顔をしながら口を開く。
「あの方の事は実は分からないことが多いのです」
「分からないってどこかの名家の出身とかではないの?」
普通、官僚及びその従者は貴族や名家出身の者が多い。現に鉄碎さんは貴族の出身だったわけだからてっきり鎌哨と呼ばれていたあの男性もそうなのだと思っていたが・・・。
「はい。突如、朴様がご自身の側近にと連れてこられたのでどこの出身なのか何をしているのか詳しいことは分かりません。もしかすると、四席の皆様や朴様と同じ派閥の方々ならご存じかもしれません」
確か鉄碎さんは貿易を中心に仕事をされている秦家が率いる外交派だったはず。
秦家と言えば李桜さんは秦家出身。どこかで話を聞いてみよう。
それにしても私よりも長くここにいる鈴麗でも分からない人なんて・・・相当表立って仕事をしていないのかあるいは隠さなければならない事情があるのか。
「祈様、何か気になることでも?」
「ちょっと考え事をしてて・・・。もう一度曲の頭からお願い」
「かしこまりました」
頭をすっきりさせるため再び舞の稽古に励んだ。
あの日、矢を射られた日から私の身の回りで奇妙なことが起こっている。
それは・・・。
「やっぱり、全然できない」
何故かあの日以来何度やっても命うつしの能力がうまく発動しなくなってしまった。
気が付いたのはたまたまだった。
巫女の仕事以外にも自分の能力の訓練をしようといつも通り全神経を集中させ祈ってみる。いつもなら小さな光が現れ行く先を示してくれたり、祈った事が形となって叶ったりするのだが今は全く私の祈りに応えてくれない状態だ。
今までこんなことなかったのに・・・。
私が知らないだけかもしれないけど自分の周りの人でも命うつしがと突然使えなくなった人なんていない。
前例がないものには対処のしようがない。
1つ可能性があるとするならこの間突然飛んできた矢に触れた事によって誰かが私の能力を封じているという事。
何の為にそんなことをしたのかは分からないが確証がない分打つ手もない。
今のところ生活に支障はないがまた急に祈祷の依頼が来るかもしれないので諭按さんに相談だけはしよう。
そう思った時、丁度目の前を諭按さんが通りかかった。
「諭按さん!」
「祈様。何かご用でしょうか?」
矢が飛んできたなんて話すと諭按さんが心配をしてしまうと思いその部分には触れず、ここ最近命うつしの能力が使えないことについて軽く事情を話すと諭按さんは少し考え込んでしまった。
「命うつしが使えなくなったなど聞いたことがありませんね。祈様のおっしゃる通り、何者かに能力を封じられていると考えた方がいいでしょうね」
可能性としては命うつしを封じる呪詛の使い手かまたは相手の命うつしのよって封じられているか・・・。と諭按さんは考えを巡らせる。
他人の命うつしを封じる命うつしよりも呪詛のようなもので封じられていると考える方が現実的だとは思うが・・・。
「でも、一体誰が?」
「情報が少ないので何者の仕業なのか特定するのは難しいでしょう。何より、祈ることで様々な願いや想いを叶える能力をお持ちの祈様の命うつしを封じるのですから、相手は何か企んでいてそれを暴かれるのを恐れ封じた・・・という事ではないでしょうか?」
確かに、私の能力は”祈る”事で様々な願いや想いを叶えることができる。
もし、私が何かに気づきそれについて知りたいと思い命うつしを使えば全貌は分からないかもしれないが少なからず手掛かりとなるものは分かるだろう。
これが諭按さんの言うとおりだとすると今私の周りで何かが起ころうとしているという事になる。
「こんな時、彼がいてくれれば少しは祈様のお役に立てたのですが」
「彼?」
「この国の官僚なのですが、主に命うつしについて研究している学者でして。現在は所用で夜国に出向いております」
命うつしについて研究している学者・・・。
「命うつしの研究とは興味があります。戻られたらお会いしたいです」
「ええ、ぜひご紹介させていただきます。ですが、今はその者もいませんから我々でどうにかするしかありませんね。まあ、これを企てているのが反国王勢力の仕業だとしたら色々と納得がいきますがね」
「反国王勢力?」
聞きなれない言葉が聞こえ思わず聞き返す。
祈様には話していませんでしたね。と言って人目を避けるように近くにあった東屋まで連れていかれる。
「ここなら大丈夫でしょう。あそこではどこで誰に聞かれているか分かりませんからね」
そう言って東屋の中にある椅子に腰かけ私にも座るよう促し話し始めた。
「国王様が王位に就かれたのは12の時です。輝国は王になるものは必ずしも国王と血縁関係ではならないという決まりはありません。その為、当時は光焔様のほかにも王位継承者候補が何名かいらっしゃったのですが、当時の国王である光焔様のお父様・雷焔様は周りの反対を押し切って光焔様を国王になさいました。当時はそれはもう王宮は荒れに荒れましてね。特に光焔様以外の候補者を支援していた官僚達からの反感はすさまじいものでした。それこそ食事に毒を仕込まれたりすることなんてよくありましたから」
”昔からこういう事には慣れているんだ・・・”
あの時の言葉はそういう意味だったんだ。
「あれから反国王勢力の制圧を続けてはいたのですが、最近反国王勢力の仕業と思われる不可解な事例が報告として挙がっていたので心配をしていたのですが・・・」
諭按さんはひどく大きなため息をつき頭を下げる。
「申し訳ありません。なにやら祈様を巻き込んでしまっているようで・・・」
「そんな、今のところそこまで困っていないので大丈夫ですよ!」
実際本当に生活には支障をきたしていないので問題はない。
それでもなお頭を下げ続ける諭按さんに頭を上げるようお願いする。
「それに、私は今この国でお世話になっていますので、何か力になれることがあればお手伝いします」
あんなに立派な国王様に反感を持つなんて普段の国王様を見ていればどれだけ国の事を想っているかなんて一目瞭然だ。
他国の人間の自分でさえそう感じるのだから反国王勢力は国王様の人柄などではなくその存在自体が邪魔なのだろう。
「そう言っていただけるのはありがたいのですがこのようなことがあった以上、何も手を打たないわけにはいきませんのでこの事は国王様に報告しておきます。私から祈様にお願いできることがあるとすればこれからもどうぞ国王様を信じていただければと思います」
以前、蒼玉さんにも言われた国王様を信じてほしいという言葉。
これ程までみんなに信頼されている方を信じない者がいるだろうか。
「はい」
「では、くれぐれも身の回りにはお気を付けください。何かありましたらすぐにお呼びください」
そう言って報告の為か早々と東屋から去ってしまった。
これ以上、私の身に何かあったとしてもできる事なら自分自身でどうにかしたいが実際に何かあればそれこそ国王様をはじめ四席の皆さんや諭按さん達に迷惑をかけてしまうので今日のところは大人しく自室に戻りこれからの事を考えることにした。
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