あほな同僚に絡まれたら、年上本命と上手くいった。棚ボタオフィスラブ

朝倉真琴

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番外編

if坂下1~4

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入社から可愛いと一目惚れした今崎いまさきさん。同じ運動サークルで活動して明るい笑顔を見るたびにますます好きになり、告白しようって思っていた。だがしかし、飲み会の時にこっそり盗み聞いた会話で、年上のイケメン金持ちの彼氏がいるって知って告白することもできず玉砕。

自棄酒が過ぎて、介抱してくれたメンバーにいた『上條かみじょう』が俺に気があるのではないか?と周りから推されて、その気になって告白しに行ったら……秒で撃沈した上に『お前が俺の事好きっていうのも勘違い』と言われたときには、頭を殴られたような気がした。

 上條がその後すぐに永瀬ながせさんと付き合い始めた噂を知ると同時に、上條が長く永野さんに片想いをしていたことを知ったことで上條に投げつけられた『勘違い』という言葉を肯定するしかなくなってしまった。

 俺は、周りからぐずぐずしている永瀬さんを後押しした功労者として運動サークルのメンバーからは嫌われるような事はなかったが、上條が永野さんを諦めることを望んでいた上條を狙っていた男女からは恨みを買ったみたいでチクチクとやられる日々。

今日は、週1のサークル活動日。上條が試合をしているのをぼんやり眺める。バドミントンはライトに見えて、動きが激しいのでステップ踏んだり飛んだりする時にいつもは見えない上條のうなじが見える。遠目から見ても、白いうなじが真っ赤に見える。明らかな牽制の情交痕に呆れる。永瀬さん、クールなふりしてガチ獣の束縛男なんだな……。それにしても色白のうなじに残る痕は色っぽい。なぁーんて思っていたら、横から凍りつくような冷気……。

「お前は見るな。」

 冷気の根元、永野さんに釘を刺された。

 「試合見てるだけっすよ。あんな見ろと言わんばかりにつけといて……永野さんケダモノですね。」

 「うるさい。」

 返答や表情はクールなのに、耳を真っ赤にしている。意外と分かりやすい人だが、本気でガチで監禁とかやらかしそうな執着心に少し上條が心配になった。

 「大丈夫っすよ。俺は、充分反省したので。」

 俺の言葉に永瀬さんは小さくそうか……とだけ呟いた。上條が試合終わりに上気した顔で永瀬さんの方に戻ってくる。彼氏に駆け寄る上條可愛いなぁ。隣で永瀬さんも蕩けた表情をしている。上條が俺を見て一瞬表情を固くするのが見えた。

「さっきも永瀬さんに話したけど俺も反省したので、今まで通りでお願いします。迷惑かけてごめんな。」

 そっと握手の手を差し出すと、横からまたも冷気を出す永瀬さんにパシッと手を叩き落とされた。

 「心狭いっすね。束縛男は嫌われますよ。監禁とか犯罪は勘弁してくださいよ。」

永瀬さんに耳打ちして、ラケットを持って試合に向かう。俺のペアは、新見 春馬にいみ はるま。仔犬系新人で、職場の御姉様方キレイドコロから絶大な人気がある。俺もわんこ系らしいけど、大型犬だから可愛くないんだそう。俺も御姉様方に可愛がられたい人生だった。

 「坂下せんぱーい!今日勝ったらお食事券ゲットです!勝って飲みに行きましょう!」

 新見が人懐っこい笑顔でコートから声をかけてくる。半年に一回の御褒美リーグ戦だったな……と思い出す。今回のリーグ戦で初めて組んだ新見だが、なかなか相性が良く動きやすい。気合いをいれた新見と俺は順調に勝ち進み、食事券を無事手にした。

 「勝ったなー!よくやった新見!永瀬さんサイドにボディスマッシュが綺麗にキまったな!ドンピシャで動けなくさせるとかテクニックがすげえな!食事券使い忘れないうちに今日飲み行くぞー。」

 ノリノリで始まった二人飲みで、いい気分で新見に話聞いてもらっているうちに……ポロリ溢れる本音。

「誰かの特別になりたいよ……俺そんなにダメ?顔はそんなに悪くないよね?人付き合いも悪くないと思うんだけど……。」

「せんぱーい。誰だって特別になりたいんですよ。でも、『誰でもいいわけじゃない』。先輩は、みんな同じ扱いです。みーんな!」

 「……でも、僕にはこんな弱味も見せてくるんすね?自惚れてもいいっすか?」

 『誰でもいいわけじゃない』『みんな同じ』にショックを受けて、後半は聞き漏らした俺。ばたりと力なくカウンターに突っ伏す。

 俺の手の甲に、新見が手を重ね……指をするっと沿わせて、指の間に指をいれて握りこんでくる。ビックリして新見を見ると、さっきまでとは違い真面目な顔をしていた。

「僕は思うんです。先輩は愛されて絆されて流されて甘やかされる方が向いていると思うんです。上條さんに告白してたらしいし、性別関係なしなら……僕なんかどうですか?」

 最後の一言だけ、唇が耳朶に触れそうなくらいの距離で囁かれた。人指し指で撫でられた手の甲は熱を持ち、背中が痺れるような気がした。

「ちょ?!新美?何言ってるの?無r……」

 握りこまれた手はそのまま、反対の人差し指で唇を押さえられた。

「今、返事しろなんて言ってないですよ。酒の戯れ事にもさせません。僕、本気ですから」

 指を離した新見は、耳打ちして耳朶をぺろりと舐められ、背中にビリビリとしたものを感じて……。

「んっ…」

 思わず声が出た。握りこまれた新見の力が強くなって、ごくりと喉の鳴る音が聞こえた。……新見の顔を見られず視線を下げる。

「……そんな風にしたら、無防備なここらに吸い付かれちゃいますよ。」
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