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Day2 LUCAと小箱と悪夢
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Day2 LUCAと小箱
――撮影Day2
小箱で切り替えが、できず困っていると成沢が手を差し出してくる。
「私に預けてください。」
彼の掌にのった小箱にオマジナイを施し、鍵を閉めて、閉じた目を開けて見ると鏡の中にはLUCAがいてホッとした。
スタジオに入るとスカーレットは、少しがっかりした顔で私たちを迎えた。
「ボクのマジックでは効きがワルかったですか……ザンネン。」
カメラを構え、昨日と同じ胡散臭い日本語で話しかけながら撮影が始まる。
「ボクはね、LUCAチャン写真にヒトメボレしてオファーしたのに、なかなかいい返事クレなかったナゼ?」
「さぁ。私が断っていたわけではないので……」
「ふぅん?」
チラリとカメラから目を離したスカーレットが成沢を見つめて……
「ふぅん。LUCAチャンの騎士の仕業か。」
「成沢ッテかっこいいよね。」
「一般的にそうなんじゃないの?」
「LUCAチャンは?」
「見た目はいいと思うわ。」
「瑠花?見た目だけですか?酷いな。」
成沢まで混ざってくると緊張感もなくゆるゆるしてしまう。
「これ、何の意味があるの?撮影に集中させて欲しいのだけど……」
「これがボクのやり方だよ。早くLUCAを裸にしたい。」
「セクハラでアウトでしょう。比喩だってわかっててもダメだと思うわ。」
「キビシイね。なんだっけツンゲレ?」
「言葉としては『ツンデレ』でしょうね。あなたにデレる気は一ミリもないですけど。」
「ふぅん?ボクも結構イイオトコとオモウけどなー。」
「私にとっては『違う』わね。」
「やっぱりオニイチャンかな……」
ぽつりと呟いた言葉は無視した。他にも意味のわからない質問が、シャッター音と共に時間いっぱいまで続く。この撮影は普段の何倍も集中力が切れ易くてやり辛さで疲れてしまう。最後のワンショットを撮り終わるころには、背中にはびっしょりと汗をかいていた。
「LUCAチャンみたいにテゴワイとワクワクする。」
私に対して、ゲームの景品やトロフィーみたいな失礼な扱いをするスカーレットが差し出した手を、軽く叩き落として握手は拒んだ。後ろ姿を見送るスカーレットが叩かれた手にキスをしながら笑顔を浮かべていたことも、私にタオルをかけて肩を抱えて退室する成沢が、彼を睨んでいたことも私は知らなかった。
この消耗する撮影が、後五日も残っていると思うとため息が出る。他のモデルのチャンスにも繋ぎたい事務所的には、失敗と途中離脱は許さない構え。不満でもなんとか乗りきるしかない。
食事会でヨウちゃんにもらった入浴剤を入れて、バスタブでゆっくりとマッサージをして疲れた体を癒す。あの胡散臭い日本語やこの仕事を持ってきた事務所に対して苛立ちの気持ちをお風呂のお湯にぶつけると、お湯が大きく跳ねて顔に飛び散ってきた。
お風呂後のお手入れとストレッチをしながら、心のもやもやと戦う。こんな時は、ヨウちゃんに愚痴Limeに限る!
『大丈夫?』
首をかしげる小さな絵文字付きのメッセージが返ってくるのが可愛い。本当に癒される。
『瑠花は頑張って凄いよ。大変だろうけど頑張れ。僕に出来ることなら何でもしてあげるからね。』
『シナイ』
変なメッセージの流れにヨウちゃんに執着する恋人を感じてソッと携帯を置く。大切なヨウちゃんは、彼を見つけてしまった。私は、いつまで瑠花を隠しながらLUCAとして生きていくのだろう?怖がりな瑠花が家族以外の誰かと過ごせるようになるのかな?そんな考えても仕方ない未来を考えて気分が下がる。
今はずっと一緒に居る成沢だって担当が変わったり恋人や家族ができて、私から離れていくのだと思うと胸が締め付けられた。……自分で自分をぎゅっと抱き締めて心音を聞きあたたかさを閉じ込める。少しだけ落ち着く……成瀬に撫でられた手のあたたかさを思い出しながら、自分の手をそっと頭に置いて布団で丸まり眠りについた。
もやもやとした気持ちだったせいか、あの日の夢を見た。公園からどろどろの真っ黒変態爺に手を繋がれて連れ出されそうになり、声を出そうとした兄と私に
「大きな声を出すと大変なことになるよ?」
チラリと砂場に一人しゃがむヨウちゃんを見ながら、変態爺が低い声で言う。兄と繋いだ手が大きく震えた。
徒歩で知らない家に連れていかれ、目の前にはケーキとジュースを並べられる。手をつけようなんてとても思えない状況で、爺は黒くてどろどろを纏いながら、にこにこと何かを話しかけてくる。
食べないと諦めたのか、また私たちの手を引き更に奥の扉を開く。部屋奥に白いスクリーンと白い布の敷いた空間。スクリーン前の布に座らされると、そこから見える入り口側の壁には……肌色の写真が、びっしりと飾られていた。
シャッター音とフラッシュで目が眩む。どんどん近づいてくるどろどろの真っ黒の男に鳥肌がたつ。あと数歩であいつの手が私たちに届く……
声にならない悲鳴と共に目覚めた。冷や汗をびっしょりとかいていた。
――撮影Day2
小箱で切り替えが、できず困っていると成沢が手を差し出してくる。
「私に預けてください。」
彼の掌にのった小箱にオマジナイを施し、鍵を閉めて、閉じた目を開けて見ると鏡の中にはLUCAがいてホッとした。
スタジオに入るとスカーレットは、少しがっかりした顔で私たちを迎えた。
「ボクのマジックでは効きがワルかったですか……ザンネン。」
カメラを構え、昨日と同じ胡散臭い日本語で話しかけながら撮影が始まる。
「ボクはね、LUCAチャン写真にヒトメボレしてオファーしたのに、なかなかいい返事クレなかったナゼ?」
「さぁ。私が断っていたわけではないので……」
「ふぅん?」
チラリとカメラから目を離したスカーレットが成沢を見つめて……
「ふぅん。LUCAチャンの騎士の仕業か。」
「成沢ッテかっこいいよね。」
「一般的にそうなんじゃないの?」
「LUCAチャンは?」
「見た目はいいと思うわ。」
「瑠花?見た目だけですか?酷いな。」
成沢まで混ざってくると緊張感もなくゆるゆるしてしまう。
「これ、何の意味があるの?撮影に集中させて欲しいのだけど……」
「これがボクのやり方だよ。早くLUCAを裸にしたい。」
「セクハラでアウトでしょう。比喩だってわかっててもダメだと思うわ。」
「キビシイね。なんだっけツンゲレ?」
「言葉としては『ツンデレ』でしょうね。あなたにデレる気は一ミリもないですけど。」
「ふぅん?ボクも結構イイオトコとオモウけどなー。」
「私にとっては『違う』わね。」
「やっぱりオニイチャンかな……」
ぽつりと呟いた言葉は無視した。他にも意味のわからない質問が、シャッター音と共に時間いっぱいまで続く。この撮影は普段の何倍も集中力が切れ易くてやり辛さで疲れてしまう。最後のワンショットを撮り終わるころには、背中にはびっしょりと汗をかいていた。
「LUCAチャンみたいにテゴワイとワクワクする。」
私に対して、ゲームの景品やトロフィーみたいな失礼な扱いをするスカーレットが差し出した手を、軽く叩き落として握手は拒んだ。後ろ姿を見送るスカーレットが叩かれた手にキスをしながら笑顔を浮かべていたことも、私にタオルをかけて肩を抱えて退室する成沢が、彼を睨んでいたことも私は知らなかった。
この消耗する撮影が、後五日も残っていると思うとため息が出る。他のモデルのチャンスにも繋ぎたい事務所的には、失敗と途中離脱は許さない構え。不満でもなんとか乗りきるしかない。
食事会でヨウちゃんにもらった入浴剤を入れて、バスタブでゆっくりとマッサージをして疲れた体を癒す。あの胡散臭い日本語やこの仕事を持ってきた事務所に対して苛立ちの気持ちをお風呂のお湯にぶつけると、お湯が大きく跳ねて顔に飛び散ってきた。
お風呂後のお手入れとストレッチをしながら、心のもやもやと戦う。こんな時は、ヨウちゃんに愚痴Limeに限る!
『大丈夫?』
首をかしげる小さな絵文字付きのメッセージが返ってくるのが可愛い。本当に癒される。
『瑠花は頑張って凄いよ。大変だろうけど頑張れ。僕に出来ることなら何でもしてあげるからね。』
『シナイ』
変なメッセージの流れにヨウちゃんに執着する恋人を感じてソッと携帯を置く。大切なヨウちゃんは、彼を見つけてしまった。私は、いつまで瑠花を隠しながらLUCAとして生きていくのだろう?怖がりな瑠花が家族以外の誰かと過ごせるようになるのかな?そんな考えても仕方ない未来を考えて気分が下がる。
今はずっと一緒に居る成沢だって担当が変わったり恋人や家族ができて、私から離れていくのだと思うと胸が締め付けられた。……自分で自分をぎゅっと抱き締めて心音を聞きあたたかさを閉じ込める。少しだけ落ち着く……成瀬に撫でられた手のあたたかさを思い出しながら、自分の手をそっと頭に置いて布団で丸まり眠りについた。
もやもやとした気持ちだったせいか、あの日の夢を見た。公園からどろどろの真っ黒変態爺に手を繋がれて連れ出されそうになり、声を出そうとした兄と私に
「大きな声を出すと大変なことになるよ?」
チラリと砂場に一人しゃがむヨウちゃんを見ながら、変態爺が低い声で言う。兄と繋いだ手が大きく震えた。
徒歩で知らない家に連れていかれ、目の前にはケーキとジュースを並べられる。手をつけようなんてとても思えない状況で、爺は黒くてどろどろを纏いながら、にこにこと何かを話しかけてくる。
食べないと諦めたのか、また私たちの手を引き更に奥の扉を開く。部屋奥に白いスクリーンと白い布の敷いた空間。スクリーン前の布に座らされると、そこから見える入り口側の壁には……肌色の写真が、びっしりと飾られていた。
シャッター音とフラッシュで目が眩む。どんどん近づいてくるどろどろの真っ黒の男に鳥肌がたつ。あと数歩であいつの手が私たちに届く……
声にならない悲鳴と共に目覚めた。冷や汗をびっしょりとかいていた。
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