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幼少編

第15話 クラン株式設立

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 「カブシキ?なんだそれは…聞いたこともないぞ」

 「はい、今から作ろうと思っている新しい冒険者のためのシステムです」

 「ほう、これも勘だが、なんか面白そうな話だな。聞かせてくれ」

 そういわれて、一般的な株の説明を行う。

 ①まずクランの強さや魅力等 迷宮攻略の成功率を示すような営業トークを考える

 ②その魅力に引かれた、商人や一般人たちにお金を投資(最低金額と最低購入単位は決める)してもらう。

 ③投資された金額に合わせて、株式を発行する

 ④投資金を使って装備や消耗品の準備を行い、迷宮攻略をする

 ⑤迷宮で得た利益の一部を配当金として、株式を持っている人へ配布する。

 簡単なシステムは①~⑤の通りである。

 「なるほど、これだとチマチマ依頼をこなして、金を稼がなくてもいいわけか。メリットしか感じないんだが、何かだましたりしてないのか?」

 「基本は迷宮攻略が成功する限りメリットしかないと思います。ただデメリットは一杯ありますよ。例えば、迷宮攻略を失敗し続けるとクランの名声と株価が下がってしまう事、クランが全滅してしまった場合、株式が紙切れになってしまう事。後は、投資金を持ち逃げし迷宮攻略しなくなったクランへの罰則を考えたりするくらいでしょうか」

 「面白い考えだなこれは!この街に残って迷宮を攻略したいクランは好き者が多いから、持ち逃げなんざしないだろうさ。俺たち以外の他のクランにも是非このシステムを説明してあげて欲しい」
 
 「分かりました、あとはクランの強さを正確に伝えるため、クラン対抗の武闘会などを開催し、一番強い冒険者をあらかじめ決めたりするのも面白いかもしれません。強さが分かれば安心して商人たちも投資できるので」

 「ラフィアットって言ったか?お前凄いな…。何者なんだ?話を聞くだけでワクワクしてきたぜ」

 「すごいのは当たり前だ!ラフィアット様は、領主様のご子息だからな」
 
 ジェイグが我慢できずに、説明し始めた。

 「そうだったのか、領主のご子息に失礼な態度をとっちまったな。しかしこちとらあんまり教養もないもんでね。無礼は許して欲しい。それとジェイグと言ったか?俺が感動したのは肩書きとか年齢とか関係なく、個人の能力として単純に凄いと思っただけだよ」
 
 ジェイグが一本取られたかのような、悔しい顔をしていた。

 「ありがとうございます。それではギルド側や商人たちともこのシステムについて、話し合っておきますね」

 「おう、楽しみにしてるぜ!それまでこっちは強さを磨いておくとするか!」
 
 うまく話が進んでよかった。

 そうこうしてる間に、ノワールが戻ってきた。

 「おかえり、教えてくれそうな人はいた?」

 「ん……商業地区にいるみたい…」

 「なるほど、パルポロムさんならその人を知ってるかもしれない。今度聞いてみよう!丁度私も魔法を勉強してみたいと思っていたんだ」

 「うん…お願い…。できれば魔法の勉強はナラタも一緒に…」

 「うん、わかったよ。でもナラタにはまだ早くないかな?いつも寝てるし…」

 「ナラタはすごい…。寝てるのはギフトのせい…」

 「なるほど、そうだったんだね。そういえば起きてるナラタを見た事がないかもしれない…」

 「大丈夫…私も殆ど起きてるのは見た事無い…」
 
 何が大丈夫なのかは分からないが、ノワールの衝撃発言に驚いた。今度どんなギフトなのか詳しく聞いてみよう。

 「魔法の勉強をするなら、やっぱり魔導書自体が必要だね、一緒にみんなの分を用意しておくことにしよう」 
  
 「それはだめ…!これ以上迷惑かけたくない…」

 ノワールが珍しく強い口調で拒否をしてきた。

 「迷惑なんて一つもないよ。この前もノワールが居なかったら危なかったし…」

 「でも、私はもっとラフィアットに助けられてる…」
 
 ノワールは意外と頑固がんこだから、中々聞いてくれそうにない。

 「………。じゃあ今度誕生日プレゼントに何か欲しいものを送るようにするよ!それなら迷惑とか関係ないでしょ?」

 「私たち全員誕生日が分からないし、年も分からない…」 

 「なんだって!そうだったのか…」
 
 一応、私は全員の誕生日と年齢は【市場調査】によって把握していた。

 しかし、全員カレンダーなど知らない状況で生きてきたんだろうから、ゲンやシュウですら年齢を正確に知らなかったんだと思う。
  
 帰路につきながら、全員の誕生日について考えていたが良い案を思いついたので父と相談することにした。
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