調整師の幸運術~すべてを奪われた令嬢は運を操る

兎緑夕季

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第二章

リナにもたらされた奇跡…②

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「ありがとう。こんなに早く来てくださるなんて思わなかったわ。私がシア・シエリーよ。よろしくね」

かつて栄光を極めたホテルの上部に案内されたリナが目にしたのは同じ年ごろの女性だった。
服装はボロボロであるが、なぜだか彼女からは上流階級の匂いがする。

「こんな格好で申し訳ないわね。持ち合わせがなくて…」

そう笑う目の前の女性にリナは一つの推測をした。

もしかしたら、あえてその服を着る事でこちらの反応を見てるのではないかと…。

私は試されている。

「シエリー家の名前を久しぶりに目にいたしました。最後のシエリーはアダム様おひとりだと思っていましたから」
「皇都を離れたシエリーもいたのよ。私はその類って所ね。うん?あら、アダムをご存じで?」
「昔、遊んだ記憶があるだけです。あちらは覚えていないと思いますが…」
「それはわからないわ。彼はシエリーの復活を目指して、頑張っているの。あくまでオーナーは私だけれどね。最近、買い取ったのよ。少し大金を得たから。そういう訳だから、アダムにも会いに行ってあげて」

大金を得た?
この方は初代シエリー様に似て、才覚がおありなのかしら?
いやいや、今はシエリー家の内情を探っている場合ではない。

「それはまたの機会に…。私はシア様に服を見せるために来たのですから」
「そうね。じゃあ、見せてもらいましょうか?」

リナは自信作を広げて見せた。
口を挟んだの彼女ではなく、執事の方だった。

「シア様、どれもこれも長けが短いような。これでは淑女としての…」

やっぱりかダメか。

「なんて下品な服なの。よくもまあ、そんなデザインの服を作れたものね。さすがはリリスの家の者…」

誰かに言われた言葉を思い出した。
悔しい。どこへいっても母の名前が足を引っ張る。

「トーマス。違うわよ。そこがいいんじゃない」
「えっ!」

今までの人物達とは違う反応を見せるシアという女性の言葉に思わず胸が温かくなった。

褒められている?

「これこそ、新しい時代の人間が着るべき服よ。異国の服にインスピレーションを得たのかしら?」
「はい。そうです。この国の伝統的な服は足を隠す物ばかりで、布も地面に擦れてしまう。要は動きにくいのです。それを何とかしたくて…」
「うん。良いわね。なら、とりあえず、そこにある物すべて頂くわ」
「これらすべてですか?ご所望ならオーダーメイドで…」
「こういう服は一人が独占するより、手軽に買える物の方がいいでしょう。今、私が欲しいのはそういう服よ。まあ、そのうち、オーダーメイドも頼むかもしれないけれどね。社交界だとやはり、一点物を競い合う風習があるから」
「そうですね。では…」

私が目指すべき、目標を言い当てるなんて…。

誰もが可愛らしく、素敵な服を着られる。そんな物を作りたいと願っていた。
高級ブティックとは真逆の思想だ。

この人は一体何者?

「そう言えば、名前をまだ聞いてなかったわね」

その言葉にビクリと背筋が伸びた。

「どうした?シア様が名前を聞いているのだぞ」

執事のドスの効いた声にさらに冷や汗をかく。

「やめなさい。怯えているわ」

リナは大きく息をはいた。
上客になれるかもしれない人だったのに仕方がない。
ウソが言えないのも私なのだ。

「リナ…。リナ・リリスです」

「リナ。いい名前ね」

シア様の発言に一瞬、固まった。

それだけ?

「あの…」
「なあに?」
「私がリリスである事を何も思わないんですか?」
「うん?」
「シア様。リリスは少し前にお話しましたブティック盗難事件の犯人の姓です。確か、彼女は…」
「私の母です」
「そう…。だから何なのかしら?貴女もそれに関わっていたの?」
「いえ。とんでもない」
「なら、気にやむ必要はないわ」
「ですが、私はリリスで…」
「ああ、そういうの嫌いなのよね。親の恥は子に受け告げれる?みたいな考え。ヘドが出る」
「私は貴女のブティックに並ぶ服が気に入ったの。今度はまた違う物をみせてちょうだい」
「はい!」
「それと…。自分の本来の名前で頑張る貴女にちょっとしたプレゼントも送るわ」
「プレゼントですか?」
「まあ、気づかれない物ではあるけれどね」

どういう意味だろう?

「忙しくなりすぎなきゃ、いいけれどね。私も長くご贔屓にしたいもの」

それはもちろん。そもそも、この方が最後の客になるかもしれないのに…。

そんな事を思いながら、店に戻ってみるとなぜだか人だかりができていた。

どこから湧いてきたの?
この女性達!

「あの服、素敵!」
「一着頂ける?」

今までの現状がウソのように客が押し寄せていた。

どうなってるの?

これが後に帝国中…いえ、世界中で愛されるブランド…ロリッシュ・ノーエルの始まりである事をこの時は誰も知る由もなかった。
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