80 / 88
第二章
幸運骨董品店…①
しおりを挟む
ヴァノンの一日は傍目から見れば、基本的に暇だ。聖装飾品が絶対的に信頼され、その心眼を持つ者が大勢いた時代ならいざ知らず、近代化が進む帝国ではその存在の真実を知る者も少なくなった。
表の世界で生きてきた調整師という職業も影で動く者へと姿を変えていくのだろな。
しかし、運を司るという聖装飾品は伝統と信仰としての形で今も残っている。
とはいえ、代々受け継いできた幸運骨董品店に積み上げられている正真正銘の古い品物たちはそのほとんどがガラクタである。
正直、俺の代で終わりかもしれない。
それでも…。
「相変わらず、暇みたいだね」
入ってきた老人を目に止めて、わざとらしく肩をすくめる。
「そう見えます?」
「分かっているよ。君は意外と忙しいのだという事はね」
先代の時代からご贔屓にして頂いている顧客ではあるが、この人が何者なのかヴァノン自身よく知らない。
「はあ…。ミスター・ストーク様。貴方様がジョークがお好きだとは思いませんでした」
「君もお父上と似て堅物だね」
「我が家の一族がみんな、俺みたいではないですよ。ちゃらんぽらんな奴の方がお好きなら…」
「君を否定しているわけではない。言葉足らずだったね。すまない。今日もよろしく頼むよ」
以前見た時よりもさらに細く、青白くなった老人の体は痛々しげに思える。
「ここは病院ではないんですがね」
「分かっている。だが、私にはお前さんの治療が何よりも効果的なのだ」
「治療とおっしゃるのですか?」
「私にとっては緩和治療と変わらんよ。それに気持ちが安らぐからね」
「安らぎますか?」
「ああ…。最後の時が近いのは分かっている。私にも彼らが視える人間だからね」
ストーク氏の体を纏わりつく不運の象徴たる不運鬼の数がさらに増えた気がする。
昨日、不運に見舞われた男に比べれば、まだマシだろうがな。
ヴァノンはストーク氏に張り付く不運鬼を一体ずつ手づかみで掴んでいき、用意していた美しい装飾が施された壺の中に収納していく。人一人が余裕で入れる大きさの物だ。
これなら、ストーク氏に張り付いた不運鬼はすべて回収できるだろう。
「言っておきますが、またすぐに寄り付いてきますよ」
ストーク氏の頭上にある運釜は不運砂で占められている。
「仕方がない。歳だからね。病魔にも襲われている身だ。運釜の調整はしなくていいよ。そこまで君を煩わせたくはない」
「お気を確かに」
「ああ…これは今日の分だ」
十数枚の金貨を手渡されて驚いた。
「ストーク様。これは多すぎます」
「私からの気持ちだ。遠慮せずに受け取ってくれ。次はいつ来られるかも分からないから」
この人は頑固だ。
突き返そうとしても、無理そうだな。
表の世界で生きてきた調整師という職業も影で動く者へと姿を変えていくのだろな。
しかし、運を司るという聖装飾品は伝統と信仰としての形で今も残っている。
とはいえ、代々受け継いできた幸運骨董品店に積み上げられている正真正銘の古い品物たちはそのほとんどがガラクタである。
正直、俺の代で終わりかもしれない。
それでも…。
「相変わらず、暇みたいだね」
入ってきた老人を目に止めて、わざとらしく肩をすくめる。
「そう見えます?」
「分かっているよ。君は意外と忙しいのだという事はね」
先代の時代からご贔屓にして頂いている顧客ではあるが、この人が何者なのかヴァノン自身よく知らない。
「はあ…。ミスター・ストーク様。貴方様がジョークがお好きだとは思いませんでした」
「君もお父上と似て堅物だね」
「我が家の一族がみんな、俺みたいではないですよ。ちゃらんぽらんな奴の方がお好きなら…」
「君を否定しているわけではない。言葉足らずだったね。すまない。今日もよろしく頼むよ」
以前見た時よりもさらに細く、青白くなった老人の体は痛々しげに思える。
「ここは病院ではないんですがね」
「分かっている。だが、私にはお前さんの治療が何よりも効果的なのだ」
「治療とおっしゃるのですか?」
「私にとっては緩和治療と変わらんよ。それに気持ちが安らぐからね」
「安らぎますか?」
「ああ…。最後の時が近いのは分かっている。私にも彼らが視える人間だからね」
ストーク氏の体を纏わりつく不運の象徴たる不運鬼の数がさらに増えた気がする。
昨日、不運に見舞われた男に比べれば、まだマシだろうがな。
ヴァノンはストーク氏に張り付く不運鬼を一体ずつ手づかみで掴んでいき、用意していた美しい装飾が施された壺の中に収納していく。人一人が余裕で入れる大きさの物だ。
これなら、ストーク氏に張り付いた不運鬼はすべて回収できるだろう。
「言っておきますが、またすぐに寄り付いてきますよ」
ストーク氏の頭上にある運釜は不運砂で占められている。
「仕方がない。歳だからね。病魔にも襲われている身だ。運釜の調整はしなくていいよ。そこまで君を煩わせたくはない」
「お気を確かに」
「ああ…これは今日の分だ」
十数枚の金貨を手渡されて驚いた。
「ストーク様。これは多すぎます」
「私からの気持ちだ。遠慮せずに受け取ってくれ。次はいつ来られるかも分からないから」
この人は頑固だ。
突き返そうとしても、無理そうだな。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
無能妃候補は辞退したい
水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。
しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。
帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。
誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。
果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか?
誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる