調整師の幸運術~すべてを奪われた令嬢は運を操る

兎緑夕季

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第二章

幸運骨董品店…①

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ヴァノンの一日は傍目から見れば、基本的に暇だ。聖装飾品が絶対的に信頼され、その心眼を持つ者が大勢いた時代ならいざ知らず、近代化が進む帝国ではその存在の真実を知る者も少なくなった。

表の世界で生きてきた調整師という職業も影で動く者へと姿を変えていくのだろな。

しかし、運を司るという聖装飾品は伝統と信仰としての形で今も残っている。
とはいえ、代々受け継いできた幸運骨董品店に積み上げられている正真正銘の古い品物たちはそのほとんどがガラクタである。

正直、俺の代で終わりかもしれない。

それでも…。

「相変わらず、暇みたいだね」

入ってきた老人を目に止めて、わざとらしく肩をすくめる。

「そう見えます?」
「分かっているよ。君は意外と忙しいのだという事はね」

先代の時代からご贔屓にして頂いている顧客ではあるが、この人が何者なのかヴァノン自身よく知らない。

「はあ…。ミスター・ストーク様。貴方様がジョークがお好きだとは思いませんでした」
「君もお父上と似て堅物だね」
「我が家の一族がみんな、俺みたいではないですよ。ちゃらんぽらんな奴の方がお好きなら…」
「君を否定しているわけではない。言葉足らずだったね。すまない。今日もよろしく頼むよ」

以前見た時よりもさらに細く、青白くなった老人の体は痛々しげに思える。

「ここは病院ではないんですがね」
「分かっている。だが、私にはお前さんの治療が何よりも効果的なのだ」
「治療とおっしゃるのですか?」
「私にとっては緩和治療と変わらんよ。それに気持ちが安らぐからね」
「安らぎますか?」
「ああ…。最後の時が近いのは分かっている。私にも彼らが視える人間だからね」

ストーク氏の体を纏わりつく不運の象徴たる不運鬼の数がさらに増えた気がする。
昨日、不運に見舞われた男に比べれば、まだマシだろうがな。

ヴァノンはストーク氏に張り付く不運鬼を一体ずつ手づかみで掴んでいき、用意していた美しい装飾が施された壺の中に収納していく。人一人が余裕で入れる大きさの物だ。
これなら、ストーク氏に張り付いた不運鬼はすべて回収できるだろう。

「言っておきますが、またすぐに寄り付いてきますよ」

ストーク氏の頭上にある運釜は不運砂で占められている。

「仕方がない。歳だからね。病魔にも襲われている身だ。運釜の調整はしなくていいよ。そこまで君を煩わせたくはない」
「お気を確かに」
「ああ…これは今日の分だ」

十数枚の金貨を手渡されて驚いた。

「ストーク様。これは多すぎます」
「私からの気持ちだ。遠慮せずに受け取ってくれ。次はいつ来られるかも分からないから」

この人は頑固だ。

突き返そうとしても、無理そうだな。
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