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第一章 胎動
第十六話 黒い龍
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吉原で、子ども扱いされた晋作は、長州藩邸上屋敷に戻って、ふて寝をしていた。
すると、何人もの足音が、慌ただしく、廊下の向こうからやって来て、どこかへと去って行った。晋作は、頭を上げて、しばらく耳を澄ませていたが、邸内は、静まり返っている。晋作は、ため息をついて、寝転がった。頭の後ろで、手を組んで、天井を見つめる。
そのまま、寝転がっていると、天井板の模様が、みるみる動き出して、あれよあれよという間に、黒い龍が、這い出して来た。龍は、部屋の中を、ゆったりと、飛翔している。晋作は、金縛りにあったように、動けない。冷汗が、額から、流れ落ちるのを感じた。
龍は、晋作の存在に気付いた様子で、晋作を、じっと見つめている。どれくらいの時間がたっただろうか、龍が、仰向けに横たわっている晋作に、近づいて来た。龍の顔が、目の前まで来た時、晋作は、とっさに、目をつむろうとしたが、瞼(まぶた)が痙攣(けいれん)したように、動かない。龍の口が、ゆっくりと開き始めた。龍の吐く、生暖かい息を、頬に感じた。やがて、龍の口が、大きく開ききった時―
障子が、荒々しく開く音で、目を覚ました。全身、汗に濡れている。
「高杉さん、黒船だ」
そこには、冬の淡い光を背負って、河上弥市が、立っていた。
弥市は、晋作と同じく、大組という、上級武士の家に、生まれ育った。幼少の時分から、腕白で負けん気が強く、晋作によく似ていた。弥市は、晋作を兄のように慕い、晋作も、弥市を弟のように可愛がった。
「黒い龍か・・・」
弥市は、じれったそうに、足を踏み鳴らした。
「黒い龍じゃない!黒い船!」
晋作は、起き上がった。
「見物に行くか」
そう言うと、晋作は、刀を引っ掴んで、着流しのまま、縁側から飛び降りた。不意を突かれた弥市も、それに続く。
2人は、馬を駆って、藩邸門から、飛び出して行った。道中、晋作の後ろを走る弥市が、大声で歌う。
「泰平のぉ、眠りを覚ます、上喜撰(じょうきせん)~、たった四杯で 夜も寝られず~」
すると、何人もの足音が、慌ただしく、廊下の向こうからやって来て、どこかへと去って行った。晋作は、頭を上げて、しばらく耳を澄ませていたが、邸内は、静まり返っている。晋作は、ため息をついて、寝転がった。頭の後ろで、手を組んで、天井を見つめる。
そのまま、寝転がっていると、天井板の模様が、みるみる動き出して、あれよあれよという間に、黒い龍が、這い出して来た。龍は、部屋の中を、ゆったりと、飛翔している。晋作は、金縛りにあったように、動けない。冷汗が、額から、流れ落ちるのを感じた。
龍は、晋作の存在に気付いた様子で、晋作を、じっと見つめている。どれくらいの時間がたっただろうか、龍が、仰向けに横たわっている晋作に、近づいて来た。龍の顔が、目の前まで来た時、晋作は、とっさに、目をつむろうとしたが、瞼(まぶた)が痙攣(けいれん)したように、動かない。龍の口が、ゆっくりと開き始めた。龍の吐く、生暖かい息を、頬に感じた。やがて、龍の口が、大きく開ききった時―
障子が、荒々しく開く音で、目を覚ました。全身、汗に濡れている。
「高杉さん、黒船だ」
そこには、冬の淡い光を背負って、河上弥市が、立っていた。
弥市は、晋作と同じく、大組という、上級武士の家に、生まれ育った。幼少の時分から、腕白で負けん気が強く、晋作によく似ていた。弥市は、晋作を兄のように慕い、晋作も、弥市を弟のように可愛がった。
「黒い龍か・・・」
弥市は、じれったそうに、足を踏み鳴らした。
「黒い龍じゃない!黒い船!」
晋作は、起き上がった。
「見物に行くか」
そう言うと、晋作は、刀を引っ掴んで、着流しのまま、縁側から飛び降りた。不意を突かれた弥市も、それに続く。
2人は、馬を駆って、藩邸門から、飛び出して行った。道中、晋作の後ろを走る弥市が、大声で歌う。
「泰平のぉ、眠りを覚ます、上喜撰(じょうきせん)~、たった四杯で 夜も寝られず~」
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