12 / 89
第一章
12
しおりを挟む
三人の部隊が小休止しているのは昼頃だった。
サタヴァの指導により、山地に生息する薬草を数種類、取りそろえて重ねたところだった。
その周りに座って、三人は一息ついている。
薬草は軍で使用することを想定し、止血、打撲、痛み止めなどが効能の主となるものが集めてあった。
「それにしてもあんまり量とか採れない感じなんですねえ。
その辺にもっと生えてそうなんですけど。
畑なんかに雑草生えたら引き抜くのに毎日大仕事なんですけどねえ。
意外に薬草だけに絞って探すのは、結構大変なんですねえ。」と言うのは、農民のヤトル。
「他の用途、強壮効能なんかも使う感じなら、もっと種類多く持ってこれたんだけどな。
今集めてるのは、傷口に貼ればいい薬草が主なんだ」とサタヴァが答える。
「やり方をわかっている人間が加工しないと毒になる種類の薬草を見つけてはあったが、加工だのなんかは薬師のほうの仕事になるんでとらなかった。」
「そんなん区別せず普通に納品したらいいじゃんか。薬草にはかわりないんだろ?」と商家出身のクガヤ。
「そうは言っても軍に薬師はさすがに連れてかないと思うぞ。いざ使うときになって、専門的な加工や時間が必要ですって言われても向こうも困るだろう。
それに加工次第で毒になるかもしれないものを、加工せず納めるのはまずい。
加工方法書いといても、向こうが間違えてやったら、命にかかわることとなる。
後味悪いし、恨みをかったりしたら本当に恐ろしいことになるぞ。
また、そんなことになったら、どこも出入り禁止になると思う。」
「ま、そりゃそうかもしれないなあ。
商売上出入り禁止とか、痛いなあ。
一応、薬草の納品ではあるから、契約上では非がないことになるけど、先方の使い方が悪いせいでも、こちらが責められる感じになるかもしれないのはなあ。
ちょっとやめといた方が良さそうだなあ。
ところで、ヤトルは薬草なんか畑で育てたりしないのか?毒とかにならないやつを。副業で薬草売りできるぞ」とクガヤ。
「いやいや、食料になる作物作るので精一杯で、そんな余裕ないです。」とヤトル。
「いま思えば雑草抜くときに薬草として使えるものもあったかもしれないですけど。
そのあたりを栽培すると、作物に与える肥料が足りなくなるんです。あと水なんかもそっちがとっちゃいます。
ただでさえ税金おさめるのに大変なのに、自分とこの食料だって作らないといけないんです。
今の春夏はまだいいんだけど、冬の間は作物とかあんまりないから、その間家族や家畜が食べて行ける食料や飼料の備蓄なんかも別にしないといけないんです。
食料以外の作物なんか育てるの、無理ですよ。
しかもこのところ不作続きで、税金払えそうもないので僕が来たくらいなんで。」
「しかしヤトルが来たら畑の管理は大丈夫なのか?」とサタヴァ。
「その辺は、うちの奥さん、父親や、じいちゃんばあちゃんやらがいますから。
小さい子二人みながら、女性とお年寄、腰が悪い父とでの作業は、大変は大変ですけど、慣れた作業なんでなんとかなります。僕がいなくてもしばらく大丈夫です。
むしろ食いぶちが減る側面もありますから。」
「農家さんは大変だなあ。頭下がるよ。
ところでまた話変わるけど、俺ら用の薬草はとらないの?怪我とかしたら町から離れてるから治療できないじゃん。」
クガヤはすっかり口調がくだけていて、いつのまにか僕から俺というようになっている。
「あと次に行く、町や村の目星、まだつけてないでしょ。」
「それ、両方は同時にできないぞ。自分たち用の薬草を今から探してたら、向かう町や村とやらを見つける時間もかかるから、夜までにそこに行くことができなくなるかもしれない。
野外で寝てもいいんなら別にいいんだが」
一同は、自分たち用の薬草は今は探さず、まずは町か村を見つけようという話になった。
「うーん…町とかには行きたいけど、宿代は高くないとこがいいんだよなあ。」クガヤがぶつぶつ言う。
配布してもらった資金は三名で等分にわけていた。
本来は隊長が全て預かり、宿代食事代も含めて必要に応じて使用するもので、部隊の装備の修理や補充などには多めの金がいるため、余裕を持って資金を渡されているのだが、残った資金を隊長が自分の物にしてしまうケースもよくあった。
サタヴァは隊長に任命されていても資金を我が物にしようという心持ちはなく、最初から等分にわけることにしていた。
誰かが迷子になったりした場合、その誰かが全額資金を持っていたらお手上げになると思ったのだ。
はぐれたらもちろん捜索はするが、合流できるまでの間に、なにかしらお金が必要となる場面が考えられたからだ。
装備品に関してはサタヴァは不足だと思うところはあったが、それを購入できるだけの資金はこの隊には配布されなかったため、装備品のために、別に資金をとっておこうという考えにはならなかった。
ただ、この資金をわけた時点で、クガヤが分けられた金を握りしめてしまって、どうにか安くあげて~などとブツブツつぶやきだしてしまっていたので、
自分のお金になったつもりでは…
と、なんとなく不安を感じる残り2名だった。
まあ、費用を安くあげようという意見には賛成だった。
サタヴァの指導により、山地に生息する薬草を数種類、取りそろえて重ねたところだった。
その周りに座って、三人は一息ついている。
薬草は軍で使用することを想定し、止血、打撲、痛み止めなどが効能の主となるものが集めてあった。
「それにしてもあんまり量とか採れない感じなんですねえ。
その辺にもっと生えてそうなんですけど。
畑なんかに雑草生えたら引き抜くのに毎日大仕事なんですけどねえ。
意外に薬草だけに絞って探すのは、結構大変なんですねえ。」と言うのは、農民のヤトル。
「他の用途、強壮効能なんかも使う感じなら、もっと種類多く持ってこれたんだけどな。
今集めてるのは、傷口に貼ればいい薬草が主なんだ」とサタヴァが答える。
「やり方をわかっている人間が加工しないと毒になる種類の薬草を見つけてはあったが、加工だのなんかは薬師のほうの仕事になるんでとらなかった。」
「そんなん区別せず普通に納品したらいいじゃんか。薬草にはかわりないんだろ?」と商家出身のクガヤ。
「そうは言っても軍に薬師はさすがに連れてかないと思うぞ。いざ使うときになって、専門的な加工や時間が必要ですって言われても向こうも困るだろう。
それに加工次第で毒になるかもしれないものを、加工せず納めるのはまずい。
加工方法書いといても、向こうが間違えてやったら、命にかかわることとなる。
後味悪いし、恨みをかったりしたら本当に恐ろしいことになるぞ。
また、そんなことになったら、どこも出入り禁止になると思う。」
「ま、そりゃそうかもしれないなあ。
商売上出入り禁止とか、痛いなあ。
一応、薬草の納品ではあるから、契約上では非がないことになるけど、先方の使い方が悪いせいでも、こちらが責められる感じになるかもしれないのはなあ。
ちょっとやめといた方が良さそうだなあ。
ところで、ヤトルは薬草なんか畑で育てたりしないのか?毒とかにならないやつを。副業で薬草売りできるぞ」とクガヤ。
「いやいや、食料になる作物作るので精一杯で、そんな余裕ないです。」とヤトル。
「いま思えば雑草抜くときに薬草として使えるものもあったかもしれないですけど。
そのあたりを栽培すると、作物に与える肥料が足りなくなるんです。あと水なんかもそっちがとっちゃいます。
ただでさえ税金おさめるのに大変なのに、自分とこの食料だって作らないといけないんです。
今の春夏はまだいいんだけど、冬の間は作物とかあんまりないから、その間家族や家畜が食べて行ける食料や飼料の備蓄なんかも別にしないといけないんです。
食料以外の作物なんか育てるの、無理ですよ。
しかもこのところ不作続きで、税金払えそうもないので僕が来たくらいなんで。」
「しかしヤトルが来たら畑の管理は大丈夫なのか?」とサタヴァ。
「その辺は、うちの奥さん、父親や、じいちゃんばあちゃんやらがいますから。
小さい子二人みながら、女性とお年寄、腰が悪い父とでの作業は、大変は大変ですけど、慣れた作業なんでなんとかなります。僕がいなくてもしばらく大丈夫です。
むしろ食いぶちが減る側面もありますから。」
「農家さんは大変だなあ。頭下がるよ。
ところでまた話変わるけど、俺ら用の薬草はとらないの?怪我とかしたら町から離れてるから治療できないじゃん。」
クガヤはすっかり口調がくだけていて、いつのまにか僕から俺というようになっている。
「あと次に行く、町や村の目星、まだつけてないでしょ。」
「それ、両方は同時にできないぞ。自分たち用の薬草を今から探してたら、向かう町や村とやらを見つける時間もかかるから、夜までにそこに行くことができなくなるかもしれない。
野外で寝てもいいんなら別にいいんだが」
一同は、自分たち用の薬草は今は探さず、まずは町か村を見つけようという話になった。
「うーん…町とかには行きたいけど、宿代は高くないとこがいいんだよなあ。」クガヤがぶつぶつ言う。
配布してもらった資金は三名で等分にわけていた。
本来は隊長が全て預かり、宿代食事代も含めて必要に応じて使用するもので、部隊の装備の修理や補充などには多めの金がいるため、余裕を持って資金を渡されているのだが、残った資金を隊長が自分の物にしてしまうケースもよくあった。
サタヴァは隊長に任命されていても資金を我が物にしようという心持ちはなく、最初から等分にわけることにしていた。
誰かが迷子になったりした場合、その誰かが全額資金を持っていたらお手上げになると思ったのだ。
はぐれたらもちろん捜索はするが、合流できるまでの間に、なにかしらお金が必要となる場面が考えられたからだ。
装備品に関してはサタヴァは不足だと思うところはあったが、それを購入できるだけの資金はこの隊には配布されなかったため、装備品のために、別に資金をとっておこうという考えにはならなかった。
ただ、この資金をわけた時点で、クガヤが分けられた金を握りしめてしまって、どうにか安くあげて~などとブツブツつぶやきだしてしまっていたので、
自分のお金になったつもりでは…
と、なんとなく不安を感じる残り2名だった。
まあ、費用を安くあげようという意見には賛成だった。
2
あなたにおすすめの小説
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~
風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる