おじさんが異世界転移してしまった。

お茶飲み人の愛自好吾(あいじこうご)

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1話 プロローグ

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 「たたいま~、おかえり~。」

また今日も一人二役だった。

待っている人などは居ない。

男は仕事が終わり、会社から帰って来て、自分の部屋に帰宅した。

「あ~疲れた、後は飯食って風呂入って寝るだけか。」

 いつもの毎日、いつもの風景、そして、いつもの休日、男は特に趣味がある訳でもなかった。

強いて言えば、録画しておいた深夜アニメを観るくらいだ。

それでも若い頃はテレビゲームを嗜む程度にはゆったり出来ていた。

だが今は忙しくてそんな暇はない。男は部屋着に着替えて、遅い夕食を作る。

 簡単な男料理だ。野菜を切ってスーパーで買ってきた肉を野菜と一緒にフライパンで炒める、米は昨日の残りで十分なのだ。

「あ!? そういえば郵便受け見てなかったな、まあどうせ大した物は届いていないだろうけど。」

夕食を作り終えた男は、遅めの晩御飯に有り付く、肉と野菜を炒めた簡単な物だ。

「いただきます」

 手を合わせて、夕食を味わう、味は二の次、食えればいいのだ。っと言っても、味付けもスーパーで買ってきた焼肉のタレを掛けただけだが。

「うん、いつもの味だ、うまい。」

 男は米と肉野菜炒めを交互に口に運ぶ、明日はたまの休日だ、ゴロゴロ寝て過ごすか、っと思っていた。

「ふうー、食った食った、ご馳走様でした。」

 手を合わせて晩御飯を食べ終わる、食器を洗い人心地ついて換気扇を回し、煙草に火を付ける。

「ふう~~、この一服が堪らない、やっぱり飯の後はこれだよな。」

男は煙草の煙を燻《くゆ》らす、男はスモーカーだった。

「そうだ、郵便受け見なきゃ。」

男は玄関ドアの内側にある郵便受けの開口ぐちを開ける、すると………。

「ん? 何だこれ?」

郵便受けに入っていたのは、一本のゲームソフトだった。

「随分古いタイプのゲームソフトだな、誰かの忘れ物か何かかな、俺のとこと間違えているんじゃないのか、だけどここは俺の部屋だし、昔友人に貸していたゲームが今頃になって戻ってきたのかな? えーと、確か物置にこのタイプの本体があったと思ったが。」

男はゲームソフトを見つめ、懐かしさのあまり物置から古いタイプのコンシューマゲーム機の本体を引っ張り出してきた。

「懐かしいな~、十代の頃以来か?」

男は何の疑いも持たず、そのゲームソフトをプレイしようと思った。

「どうせ暇だし、折角だからちょっとだけやってみるか。」

 男はテレビとゲーム機を繋ぐ配線をする。HDMIケーブルなどではない、赤、白、黄色のビデオ端子ケーブルだ。

「うちのテレビ、古いタイプの端子が付いていてよかったー、これで出来る筈だ。」

 男は改めてゲームソフトを見る、タイトルは「ソードファンタジー」っと書かれていた。

「何の捻りもないな、まあ、昔のゲームなんてそんなものか。」

16bItと書かれた本体にゲームソフトを差込み、電源を入れる。

「ROMカセットだからな、スイッチ入れたら直ぐに画面に表示されるのがいいよな。」

 テレビの画面には、タイトルのソードファンタジーと表示されていた。男はスタートボタンを押す。

「なになに、まずは主人公の名前を決めるのか、吉田《よしだ》 太郎《たろう》だからヨシダでいいか。」

男はコントローラーを握り、名前を入力する、「ヨシダ」と。

「えーっと、お次は職業を選択する訳か。」

 画面には戦士、武道家、盗賊、魔法使い、僧侶、等のロールプレイングゲームではお馴染みの職業が表示されていた。

その下には、「スキルスロット」と表示されている。

「なるほど、一応一通りの職業はあるみたいだな、この下にあるスキルスロットってのは多分職業によってスロットの数が違うのかもしれないな。」

戦士のスキルスロットは2個、盗賊は3個、魔法使いも3個と表示されていた。

「うーん、勇者とかじゃないんだな、普通のジョブを選ぶ訳か、スキルスロットは多い方がいいような気がするんだがな。」

男は試しに上上下下左右左右っとコントローラーで入力してみた。すると。

「お! 何か出てきた、やっぱり隠し職業があったか、どれどれ。」

 画面に表示されていた職業一覧の中に一つ、新たに表示されたのが「民間人」っというジョブだった。

「なにこれ? 民間人? 使えるのかな、一応隠し要素みたいだったからスキルスロットは6個もあるのか。」

 画面に表示された「民間人」の説明によると、ほぼ全ての能力が平均より低い、っと表示されていた。

「う~ん、スキルスロットは多いけど、能力が低いのか、玄人向けってヤツか? それともスキルによって足りない所は補えるってヤツかもな。」

男は何の気も無しに「民間人」の職業を選択し、決定する。

「スキルスロットが多い方がいいかもしれないからな、スロットに装備するスキルによって戦士並になったり魔法使い並になるかもな。」

男はあまり深く考えるのは好きじゃなかった。

「えーっと、次はスキルを選択するのか、なんだ、やっぱりスロットが多い方がいいんじゃないか、どれどれ、どんなスキルがあるのかな。」

 画面に表示されたスキル一覧には、これまたゲームなんかでよく見かけるスキルが表示されていた。

 肉体強化系から魔法系など、色々な種類のスキルが表示されている。残りスキルポイントは5Pと表示されていた。

「とりあえず、戦士系でいってみようか、まずは力が上がる「ストレングス」のスキルだろ、お次は体力が上がる「タフネス」、これで戦士並になった筈だよな、後はどうするかな? そうだ、回復魔法が使えるといいかもしれないな、よーし、「回復魔法」っと、ありゃ? もうスキルポイントが無くなったみたいだぞ、そうか、6個全部埋まらなかったか、まあしょうがない、これで行くとしますか。」

テレビのゲーム画面にはこう表示されていた。

名前  ヨシダ
職業  民間人

・ストレングス
・タフネス
・回復魔法
・なし
・なし
・なし

「ま、大体こんなもんか、さあ、一丁やってみますか、どうせ直ぐにやめるし。」

 テレビの画面には「冒険をはじめますか? 」と表示されていた、男は「はい」を選択して決定ボタンを押す。

すると、突然テレビ画面が眩い光に輝き出して、辺りを閃光が激しく照らした。

「うわ!? 眩しい! 」

 男は眩しさのあまり、目を開けてはいられなかった、急に画面が光輝いたので、びっくりしてコントローラーを手放し、両手で顔を覆う。

「何だ!? 一体何が起きたってんだ!? 」

次の瞬間、男は部屋から忽然と姿を消した。

男の部屋には誰もいなくなっていた。




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