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第19話 軍靴の足音 ⑧
しおりを挟む「………「ダークガードに栄光あれ」………確かにそう言っていたのだね? ジャズ訓練兵。」
「はい、それと、計画はまだ終わっていないと言う様な事も言っていました。」
ここはクラッチ駐屯地の司令官室。
そこで昨日見聞きした事をコジマ司令に報告していた。
この場には他にリカルド軍曹も居る。
ちなみに、昨日自分がジャイアントスネークを倒したのは秘密だ。
ややこしくなるからね。
「どう思う? リカルド君。」
コジマ司令は机に肘を付き、頬杖を付きつつ軍曹の意見を聞いていた。
「そうですねえ、自分は何も見ていないので何とも言えないのですが、「ダークガード」とはあのダークガードの事でしょうか?」
(なんだ? ダークガードって有名なのか? 俺知らないよ、ゲーム「ラングサーガ」にも出てきてなかったし。)
「そうだと思いますよ、はっきりとは解りませんが、おそらくは………。」
コジマ司令の顔は困った様な、それでいて不愉快そうな感じにも見えた。
自分は恐る恐るといった感じで挙手をし、話を聞いてみる。
「すみません、自分にはさっぱり理解が追い着きません。ダークガードとはいったい?」
この質問に、コジマ司令がこちらを向いた。
「ジャズ訓練兵、君は歴史を知らない様ですね、いいでしょう。掻い摘んで説明しましょう、700年前、勇者率いる義勇軍と魔王率いる魔王軍の熾烈な戦いがあり、そして見事、勇者が魔王を討ち取ったのです。」
(700年前だと!? 義勇軍の話は知っている、「ラングサーガ」のど真ん中のストーリーだったからな。そうか、今のこの世界はゲーム「ラングサーガ」から700年後の世界なのか。)
コジマ司令が話を続ける。
「その戦いの影で暗躍していたのが、口に出すのも嫌なのですが「闇の崇拝者」という存在でした。ダークガードとは、その闇の崇拝者を守る、恐ろしい力を持った殺戮部隊の名称だったのですよ。」
「闇の崇拝者にダークガード、ですか………。」
闇の崇拝者の名前は知っている。「ラングサーガ」にも登場した、闇の組織の名称だ。
そいつら700年も前から暗躍し続けているってのか? 随分長い事やってんだな。
それにしても、ダークガードか。
そんなのが出て来たという事は、何やら良からぬ事でも企んでいるのやも知れんな。
ダークガードが動いているという事は、闇の崇拝者も動いているという事になるか。
やれやれ、どうなってんだ? この世界は。
「お話して頂き、恐縮です。お陰で知り得る事ができました、ありがとうございます。コジマ司令官殿。」
敬礼をし、コジマ司令が「休め」と言ったので、気を付けの姿勢を維持する。
「兎も角、昨日の大型モンスター騒ぎの件で、この基地の受けた被害は大きいです。戦死者も出てしまいました、傷跡はまだ癒えていませんが、リカルド君達、上級下士官の者達で事態の復旧作業を行って下さい。頼みましたよ、リカルド軍曹。葬儀の準備が整ったら私も参列しますので、呼びに来て下さい。」
「は! それでは、自分はこれで失礼致します。」
リカルド軍曹は敬礼し、司令官室を後にしようと後ろを向き、そこで俺にこう切り出した。
「すまんな、お前達訓練兵の卒業式は、このごたごたが収束してからになる。それまでは各自命令に従ってくれ。」
「は!」
そうして、リカルド軍曹は司令官室を退室した。
自分もコジマ司令に向き直り、退室しようとする。
「それでは、自分もこれで失礼致します。」
「ああ、待ちたまえジャズ君。」
言われてその場で立ち止まり、コジマ司令の方を向く。
「ジャズ君、話がある、正直に答えて貰いたい。」
「は! 自分にお答えできる事ならば。」
コジマ司令は椅子から立ち上がり、窓の方へと歩き、窓の外を眺めながら言った。
「君、あの大型モンスターのジャイアントスネークを一人で倒しましたよね? 仲間を逃がして、自分は立ち向かい、見事モンスターを討ち取った。間違いないね?」
「………………」
(どこで見られていたんだ?)
「正直に答えたまえ、私のところで情報は止めて置く様にしますから。」
(どうする、コジマ司令には言っておくか?)
「………はい、自分が倒しました。」
「やはり、そうでしたか。我が戦力だけであの大型モンスターは討伐できない事ぐらいは、分かっていましたからね。ジャズ君、みなを代表して君にお礼を言わせて貰おう。感謝しているよ。ありがとう、ジャズ君。」
「いえ、勿体無きお言葉、恐縮です。それと、その事は………。」
「フフフ、分かっているよ、こちらで内密にしておこう、ジャズ君、ご苦労だった。何故君が内緒にしたいのかは、詮索しないようにしますよ、兎も角、君のお陰で町に被害が出ませんでした。よくやりましたね。」
「ありがとうございます。それでは、自分はこれで。」
司令官室を後にして、建物の外へと出る。
天気は快晴、いい天気なのだが、駐屯地内は無残な状況だった。
グラウンドは荒れ、設営されていたテントは壊されていて、辺りには血痕が至る所に付いていた。
そして、そのグラウンドの真ん中辺りに、大型モンスターのジャイアントスネークの亡骸。
「酷い有様だな。」
死傷者はかなりの人数がいたらしい。
今はどこも野戦病院となり、負傷した兵士が治療を受けている。
無理も無い、こんないきなりの出来事にそうそう対処出来る者はいないだろう。
兵士というのも大変な仕事なのだなと、実感している。
ニール達が作業をしている所へと来た。
第一レギオンの兵士達は、自分達が設営したテントの片付けをしていて、こちらはその後のグラウンド整備だ。
他のこの基地の動ける兵士達は、死傷者の搬送や、壊れた箇所の修復作業をしている。
「おう、ジャズ。来たか、そっちの方のグラウンド整備を頼む。そこらじゅう穴だらけだからな、気を付けて作業した方がいいぞ。」
「おう、わかった、ニール。」
スコップ片手に作業をしていると、リップからこんな事を言われた。
「ねえジャズ、ちょっと聞きたいんだけど、あたしが逃げた後、あんたどうしてたの?」
「俺か? 勿論逃げまくっていたさ。いやー、危ないところだったよ。」
「………ふーん、そう………。」
何だ? リップのヤツ、何だか納得いかないって感じだな。
「ねえジャズ、ホントに逃げてただけ? あたし、あんたがあの大型モンスターに止めを刺していたのを見た様な気がするのよね。あれは一体?」
「気のせいじゃないか? ほら、作業しないと日が暮れちまうよ。急ごう。」
「う、うん。」
ふ~~、どうやらうまく誤魔化せたみたいだな。あまり目立ちたくないんだよな。
このまま一兵士としてやっていこう。そうすればきっと無茶な事はしなくて済むだろうし。
作業も一段落し、少し休憩してから戦死者の葬儀が行われた。
町にある女神教会から司祭とシスターさんを呼んで、しめやかにお葬式が終わった。
クラッチ駐屯軍の全員が参列した。
一部の戦死者と親しかった仲間が、女神教会にある共同墓地までついて行く。
火葬したのち、遺骨をお墓へ埋葬したそうだ。戦士の魂に安らぎがありますように………。
しばらくして、お昼時になり食堂へと向かい、皆は昼飯を食べる。
今日のご飯も美味しかった。ホント、軍隊の飯って不味いという噂は当てにならないな。
旨いよ、軍隊飯。
腹も膨れるし。若い体のジャズにはこれぐらい食べられるが、食い過ぎに注意だな。
また太ったら嫌だし。
その後は第三会議室で四人は集り、待機している。
なんでもこの後直ぐ、訓練兵の訓練課程終了による卒業式が行われるとの事だった。
「いよいよ俺達も訓練兵卒業かあ、何だかあっという間だったな、なあニール。」
「そうか? 結構色々大変だったと思うがな、ジャズはこの後どうする?」
「どう、とは?」
「あれ?、聞いてないのジャズ。卒業式が終わった後、あたし達5日間の休暇が貰えるのよ、聞いてないの?」
「いや、初耳だよリップ。そうか、5日間のお休みがあるのか。うーむ、俺はどうしようかな。」
今まで訓練漬けだったので、いきなり5日も休暇が貰えるとは思って無かった。
どうしようかな。まあ、取り敢ず今は卒業式だ。
今までの事を振り返りつつ、感慨に浸ってみよう。
(………………碌な思い出が無かった。)
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