23 / 222
第22話 休日の過ごし方は人それぞれ ①
しおりを挟むアリシア王国軍に入隊して、訓練課程が終了し、晴れて二等兵になった。
いきなり任務かと思いきや、待っていたのは五日間の休暇。
今まで訓練漬けの毎日だったので、何だかぎこちない。
休暇って何すりゃあいいんだ?
そう思い、まずは飯を食いに出掛けて、女将さんの手料理に舌鼓を打つ。
その後、あつ~いお茶でまったり過ごしている。
今はお腹が一杯なので、各能力値上昇系アイテムは食べる事は控えた方がいいだろう。
もう少し休憩してからだな。
「ねえ女将さん、休暇って何すりゃあいいのかな?」
この質問に女将さんは仕事の手を一旦止め、こちらを向き溜息を一つついた。
「あんた、贅沢な事言うねえ。こっちは休みたくても休めないってのに、いいかい、客商売ってのは一日でも休むと客足がぱったり途絶えるものなんだよ。」
「そうなのか、女将さんも大変なんだね。」
「あんたさ、軍隊で訓練漬けの毎日だったんだろ? だったら体を休めるのも一つなんじゃないのかね。疲れているんだろ?」
うーむ、疲れている訳ではないんだよな。
スキル「タフネスレベル2」だから、体力が有り余っている感じなんだよね。
そりゃ筋肉痛みたいなものはあるけど、ジャズは若いから一日寝ると痛みも無くなるし。
体力も全快になるんだよな。
まあ、だからこそあの厳しい訓練に耐えられたのかもしれないけど。
「うーん、女将さんはさあ、体力が余っている時って何しようって思う?」
「そりゃあんた、仕事以外に何があるんだい。こっちは休めないんだよ。あんたさ、そんなに体力が余ってんなら冒険者の仕事でもやってきたらいいじゃないか。うちの店に来るお客さんの中には兵隊さんもいるけど、非番の日は小遣い稼ぎに冒険者の仕事をやってる人だっているよ。あんたもそうしたら?」
うーむ、そういう手もあるか。
お休みだから体を休める事も大事だけど、手持ち無沙汰なのも考え物だな。
「この町って何か観光名所ってあるかい?」
「はっはっは、ここは駆け出し冒険者の町だよ。そんなのあると思うかい?」
ふむ、観光は諦めた方がいいのか。
「冒険者かぁ………、女将さん、冒険者ギルドって何処にあるの?」
「ギルドかい? この町の中心地に噴水広場があってね、その近くにあるよ。大きな建物だから直ぐに解る筈さ。」
「ありがとう、気が向いたら立ち寄ってみるよ。それじゃあご馳走様。また来るよ。」
「毎度あり~、冒険者をやるならまず登録をするんだよ。」
女将さんの言葉を背中で聞き、店を後にした。
ふ~~、お腹いっぱいだ。少し腹ごなしに歩くか。
町の中心に噴水広場があるって言っていたな、そこまで行ってみるか。
町を歩きながら、噴水広場を目指す。
それにしても、休暇なのに冒険者になろうとしているなんてな。
そこまで仕事に飢えているのかねえ、俺って。
まあ確かに金欠気味ではあるから、金を稼ぐ必要はあるけど。
これからの行動方針はまず、冒険者ギルドに行って冒険者登録する。
その後は状況を見て、依頼を探して引き受けるかどうかを決める。
折角の休暇だ、楽な仕事を選ぼう、それならいいかな。
噴水広場へと到着した。ベンチがあったので腰掛ける。
この町は平和そのものだ。
子供からお年寄りまで、幅広い年代の人達がそれぞれ思い思いに憩いの場で過ごしている。
こうして見ると本当に様々な種族の人がいるんだな。
エルフにドワーフ、見た目は人間だがケモ耳ケモ尻尾の獣人など、実に様々だ。
少し将来の事を考えてみた。
このまま軍に所属して、給金を貰って食っていくのは悪くない。
だが、この体だっていつかは老いる。歳と共に体が動かなくなるだろう。
冒険者としてやっていくのも同じ事だ。いつかは体が動かなくなる。
そうなると、この世界で食っていく為には、普通の仕事を探した方がいいのではないのかと思ってしまう。
(うーむ、普通の仕事かあ、折角ユニークスキルを女神様から貰ったんだから、それを活かした仕事をするというのも悪くないと思うんだよね。)
このまま兵士として仕事をしていき、お給金を貰って食っていく事。
冒険者になり、一攫千金を夢見るのも悪くない。
普通の仕事は、その後考えればいいかな。
取り敢えずは今のままで仕事をしてみる事。
お金がある程度溜まってから、スローライフを満喫するという方向でいけばいいか。
辺りを見渡す、人が疎らになってきた。もうそろそろいいかな。
虚空から「力のワイン」を取り出した。筋力が上昇するアイテムだ。
これを飲む。うむ、中々の味だ。これで筋力の能力値が少し上がった筈だ。
お次は「元気のパン」、これは体力が上昇する。
これも食べる。うん、いける味だ。これで体力の能力値が上昇した筈。
次は「はやてのチキン」。これは敏捷が上昇する。
同じ様に食べる。うん、肉肉している。腹が膨れる。
もう一ついってみよう、「器用ヨーグルト」、器用が上昇する。
食べる。うん、甘酸っぱくていい味してる。
もう一丁、「悟りの蜜」、コイツは魔力が上昇する。蜜を舐め取る。うーむ、甘い。
最後、「幸運のクッキー」、これは貴重な幸運値が上昇する。
少しずつ食べる。うん、お菓子って感じだ。
よしよし、これで能力値上昇系アイテムは使い切ったな。
能力値も僅かだが上昇しているだろう。
ちょっと確認してみよう。ステータス表示と思ってみる。
筋力 29 体力 24 敏捷 23
器用 20 魔力 9 幸運 20
おお! 上がってる上がってる。魔力以外20以上あるじゃないか。
こいつはいい、能力値上昇系アイテムは各一つずつしか買えないけどね。
これなら高い買い物をした甲斐があったというものだな。買っておいて正解だった。
さてと、休憩もしたし、そろそろ冒険者ギルドへと行ってみようかな。
確か、この噴水広場の近くにある大きな建物だったな。
………お、あれかな? 確かに大きな建物がある、二階建てで石造りの立派な建物だ。
「よし、早速行ってみるか。」
ベンチから立ち上がろうとしたその時。
「あら? 貴方ジャズじゃないの?」
不意に誰かから声を掛けられた。声のした方を見ると、そこに居たのは。
「あ、貴女は確か、ガーネットでしたっけ?」
ガーネットという少女が居た。
彼女は自分がまだ山賊の下っ端の頃、傷付いた俺を助けてくれた人だ。
回復薬を飲ませてくれた冒険者だな、一応、恩人なんだよな。
「久しぶりね、暫く見かけなかったから最初誰だか解らなかったわ。あの時と体格がまるで違うもの、痩せたの? 何だか体つきが良くなってない?」
「お久しぶりですね、ガーネットは変わりないですか?」
「いつもの事よ、冒険に仕事にお休みに、今はお休みよ。貴方は? ここに居るって事はもうお勤めは終わったのかしら?」
「ええ、もう出所しました。今の俺は王国軍の兵士をやっていますよ。今日は休暇です。」
「え!? 軍人さんなの? てっきり冒険者をやるものだと思ってたけど、あの時のジャズって、戦闘がこなせる人だと思っていたから。刑務所を出たら冒険者になるものとばかり。」
「と言っても、まだ訓練期間が終わったばかりでね、任務とかはまだ就いていないんだ。この休暇が終わった後になるかな。」
「ふ~ん、今は休暇中って事か、ねえ、だったら今すぐ冒険者登録しに行かない? 軍人さんの中にはお休み中に冒険者として仕事して、お小遣いを稼いでいる人も少なくないのよ。ジャズもそうしたら?」
「うーむ、実はそうしようと思っていた所だったんだよ。休暇といっても何だか手持ち無沙汰でね。」
「じゃあ、早速行きましょう。こっちよ。」
この突然の出会いは、正直びっくりした。
ガーネットの事は知らない訳でも無いので、付いて行く事にした。
冒険者かぁ。自分に務まるかな?
まあ、折角忍者にクラスチェンジした訳だし、自分がどれ位やれるのか確かめるのもいいかもな。
こうして、ガーネットに連れられ、冒険者ギルドへと足を運ぶのだった。
78
あなたにおすすめの小説
おじさんが異世界転移してしまった。
お茶飲み人の愛自好吾(あいじこうご)
ファンタジー
ひょんな事からゲーム異世界に転移してしまったおじさん、はたして、無事に帰還できるのだろうか?
モンスターが蔓延る異世界で、様々な出会いと別れを経験し、おじさんはまた一つ、歳を重ねる。
最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~
津ヶ谷
ファンタジー
綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。
ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。
目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。
その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。
その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。
そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。
これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。
無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~
ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。
玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。
「きゅう、痩せたか?それに元気もない」
ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。
だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。
「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」
この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。
独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活
髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。
しかし神は彼を見捨てていなかった。
そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。
これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
オレの異世界に対する常識は、異世界の非常識らしい
広原琉璃
ファンタジー
「あの……ここって、異世界ですか?」
「え?」
「は?」
「いせかい……?」
異世界に行ったら、帰るまでが異世界転移です。
ある日、突然異世界へ転移させられてしまった、嵯峨崎 博人(さがさき ひろと)。
そこで出会ったのは、神でも王様でも魔王でもなく、一般通過な冒険者ご一行!?
異世界ファンタジーの "あるある" が通じない冒険譚。
時に笑って、時に喧嘩して、時に強敵(魔族)と戦いながら、仲間たちとの友情と成長の物語。
目的地は、すべての情報が集う場所『聖王都 エルフェル・ブルグ』
半年後までに主人公・ヒロトは、元の世界に戻る事が出来るのか。
そして、『顔の無い魔族』に狙われた彼らの運命は。
伝えたいのは、まだ出会わぬ誰かで、未来の自分。
信頼とは何か、言葉を交わすとは何か、これはそんなお話。
少しづつ積み重ねながら成長していく彼らの物語を、どうぞ最後までお楽しみください。
====
※お気に入り、感想がありましたら励みになります
※近況ボードに「ヒロトとミニドラゴン」編を連載中です。
※ラスボスは最終的にざまぁ状態になります
※恋愛(馴れ初めレベル)は、外伝5となります
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる