おっさんが雑魚キャラに転生するも、いっぱしを目指す。

お茶飲み人の愛自好吾(あいじこうご)

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第96話 フィラ強化計画 ④

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  アワー大陸北部  オーダイン王国北側 魔の森監視所――――


 この監視所にはオーダイン王国の兵士達が詰めているが、今、ここは戦場と化していた。

魔の森から無数のモンスターが這い出て来て、監視所を取り囲んでいた。

「隊長!! もうモンスターに囲まれました!」

「監視所の出入り口は既にモンスターが配置されています! このままでは!」

「至る所にモンスターが! モンスターが居ます! 隊長! 指示を!」

兵士達は焦っていた、無理も無い、今までこんな事は無かったのである。

慌てて対応するも、いきなりの事態に直面した現場は、混乱を極めた。

「兎に角! 応戦するぞ! 各個撃破だ! それと同時に監視所にある食料と水、油と武器を荷馬車へと積み込め! 遺憾ながらここを放棄せざるを得ない! 急げ!」

隊長の指示がとぶ。命令を聞き、各兵士達が一斉に動き出した。

 オーダイン王国の兵士達は応戦し、モンスター相手に一歩も譲らなかったが、如何せんモンスターの数が多かった。

あっという間に監視所は包囲され、内部まで侵入を許し、戦況は乱戦へともつれ込んだ。

「ヘイワード! そっちにゴブリンが行ったぞ!」

「ちょっと待て! 今矢を番えている最中だ!」

オーダイン王国の兵士ヘイワードも応戦したが、モンスターの圧倒的な数の多さに苦戦していた。

「こいつ等! 一体今までどこにこんな戦力を!」

「無駄口を叩くな! 来るぞ!」

 ヘイワードと同じ監視任務に就いていた兵士も、戦いに参加し、仲間と上手く連携が執れている。

 辛うじて戦況は五分五分といったところだったが、ここへ、一人の男が姿を現した。

「けっけっけ、みなさーん、頑張っているようですが、もうじきここはおしまいですよー。」

アイバーだった。アイバーがモンスターの群れを率いていた。

それを見逃さなかったヘイワードは、不審に思いながらも男に尋ねた。

「何者だ! ここは危険だぞ! こんな状況でよく平気でいられるな、あんた!」

「けっけっけ、さあ? なんででしょうね? けっけっけ。」

アイバーは余裕をもって佇んでいる。

「おいあんた! ここは危ない! 早く逃げろ!」

「けっけっけ、逃げろですって? 何故この天才軍師アイバー様が逃げねばならないのですか?」

このアイバーの返事に、ヘイワードは訝しみ、アイバーから一定の距離を取る。

「………まさかとは思うが、お前の仕業か?」

「けっけっけ、いかがですか? この天才軍師アイバー様の作戦は、けっけっけ。」

と、ここで監視所の隊長が、この場の戦況の悪さを悟って、ヘイワードに命令を伝える。

「おいヘイワード! お前確か「俊足」のスキル持ちだったな。」

「はい!」

「よし、ヘイワード、この事態を知らせに行ってこい。近くの町、もしくは王都まで走って事態の収拾を着けるよう、仲間に報告しに行ってこい!」

「え?! 隊長達はどうするんですか?」

「俺達の事はいい! 兎に角急げ! お前の足なら十分に逃げ切れる筈だ。ヘイワード、頼んだぞ!」

そう言いながら、隊長はアイバーへ向け、剣を構えた。

他の仲間もみな、アイバーを囲みだし、行動を制限しに動いた。

「今のうちだ! 行け!」

「はい!」

ヘイワードはただ、その場を逃げる事しか出来なかった。

圧倒的なモンスターの数を前に、成すすべなく仲間たちが飲み込まれていった。

「くっ! みんな、すまん!」

ヘイワードは走った、ただ一心に走り、目的地である近くの町まで、一目散に駆けた。

その速度は俊足のスキルのお陰で、モンスターの追撃を逃れる事に成功した。

 ヘイワードは駆ける、町に駐屯している仲間のところへ。


  アリシア王国  クラッチの町周辺 北東の森――――


 「いないじゃないか? 男爵たち。」

 森の中へと足を踏み入れ、更に奥へと警戒しつつ進んでいき、ある場所までやって来た。

 ポール男爵とその取り巻き達を捜しに、森の奥まで来たが、どこにも男爵たちの姿が見当たらない。

「本当にこの場所か?」

「ああ、間違いない! ここだ! けど、おかしいな? 誰も居ない。」

 男爵の取り巻きの一人が、あちこちを捜しまわっているが、男爵たちを見つけられない様だ。

「私、ここまで来たの初めてよ。不安だわ。」

ガーネットがこぼす。

「私は以前ここへ来たことがありますが、やはりモンスターとの接触が無かったですね、こんな事は異常です。」

フィラも何かを感じている様だ。

「確かにな、ここまで来るのに一切モンスターとの遭遇は無かった、森の奥だというのに。」

「ジャズ様、お気をつけ下さい、何か嫌な予感が致します。」

「ああ、警戒は怠らない、慎重に行動しよう。」

辺りを見渡す、やはり男爵たちは居ない様だ。

それにしても、この場所は確か。

「不思議な建造物ね、石造りの立派な建物が沢山あるわ。いつの時代の物かしら?」

ガーネットが辺りに散らばっている石で作られた建造物を見て、物思いにふけっている。

 所々崩れているが、長年雨風を凌いできた感じのする、年季の入った石造りの物が、植物のつたなどとからまっている。

こけなども生えていて、昔からここにあったと物語っていた。

「ここは遺跡だな、古代魔法文明時代の物だと思うよ、確か、セルセタ文明だったかな?」

俺が答えると、ガーネットもフィラもこちらを向いて、驚いていた。

「へえ~~、詳しいのね、ジャズ。」

「流石ジャズ様です。」

「いやあ、知っている訳でもないんだよ、ただ、名前を知っているってだけで、俺も詳しくは知らないんだ。」

(まあ、ゲーム、ラングサーガに登場したものだし。)

俺が答えると、取り巻きの一人が「どうでもいいから、早く男爵様を探してくれ」とせっついた。

 ふーむ、探すといっても、ここには居ないようだしな、モンスターと争った形跡はあるが、肝心の男爵たちがどこにもいない。

しばらく辺りを探してみたが、やはり男爵たちの姿はどこにもなかった。

その代わりに。

「見てみろ、この場所、遺跡の扉部分が崩れている。」

「ホントだ、けど何か妙だな、俺が居た時はここは石の扉があったと思ったが?」

 ふーむ、そこが崩れているという事は、おそらくポール男爵たちはモンスターとの戦いに苦戦して、この遺跡の扉を破って中に侵入したのかもしれんな。

「参ったなあ、この遺跡はダンジョンになっているんだよな、もしポール男爵たちがここへ入ったのなら、ちょいと面倒な事になりそうだぞ。」

「ちょっと待ってジャズ、私達、遺跡に潜る準備なんかしてこなかったわよ、どうするの?」

「うーん、仮に、男爵たちが遺跡の入り口近くにいるのだとしたら、ダンジョンの奥まで進んでいない可能性もあるしな。意外と浅い所に居たりしてな。」

「モンスターをやり過ごす為に、そうした可能性はあるわね、どうするジャズ?」

「ふーむ、遺跡の浅い所までなら、潜っても大丈夫そうではあるが、一応回復薬は持ってきてるし、ちょっと入ってみるか?」

「ま、しょうがないわね、いいわ。私も付き合うわよ。」

「ジャズ様の後ろはお任せ下さい。」

ガーネットもフィラも、遺跡への侵入を了解してくれた。

「………………解った、俺も行くよ。」

「当たり前だ、お前の仲間を探すんだからな。お前にも付いて来て貰わないと話が進まんだろうが。」

「だ、だけどよ、怖いものは怖いんだよ。」

「まあ、気持ちはわからんでも無いが。」

俺だって怖いよ。

「お前、名前は?」

「ああ、マッシュってんだ、よろしくな。」

「よし、マッシュ、今から遺跡へ潜るそ、準備はいいか?」

「あ、ああ、大丈夫だ、任せろ、こう見えて俺は盗賊(シーフ)なんだ。罠の類の感知なら任せろ。」

「おう、頼りにしてるぞ。それじゃあ行くか。」

「「「 おおーー!! 」」」

こうして、ポール男爵たちを捜しに、遺跡の奥へと足を踏み入れる事になった。

森の異変もさることながら、遺跡の入り口が開いている事も確かめないとな。

もしかしたら男爵たちはそこに居るかもしれない。

よっしゃ! 一丁ダンジョンアタック、いってみますか!









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