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第101話 新たな力
しおりを挟む『山田さん、山田太郎さん、聞こえますか?』
この突然の声に、頭が一瞬フリーズしたが、直ぐに思い出した。
この声、女神様だ! 間違いない、転生した直後に頭の中に直接聞こえてきた、あの声だ。
俺は急ぎ、頭の中で考え、答える。念話ってやつだ。
(その声、女神様ですか?)
『はい、そうです。山田さん、今よろしいでしょうか?』
(はい、大丈夫です。一体どうしたのですか?)
『山田さん、今あなたはセルセタ文明時代の遺跡に居ますね?』
流石女神様、解るらしい。
(はい、居ます。)
『山田さん、実はその遺跡には、本来あなたが転生する予定だった体が安置されているのです。』
(本来の俺の体ですか? しかし、今の俺はこのジャズという青年の体に入っていますが?)
『山田さん、聞いて下さい、本来、一つの魂の器には、一つの魂しか入らないのです。しかし、山田さんは今、その青年の体に山田さんの魂が入っている状態なのです。これは非常に不味い状態なのです。』
ふーむ、一つの器に二つの魂か、確かにちょっと無理があるのかもしれないが、今までやってこれた訳だけど、流石に無理が出てきたのかもしれないな。
(それで、女神様。俺はどうしたらいいでしょうか?)
『はい、山田さんには、この遺跡に眠るもう一つの体へと、魂を入れて貰います。そうすればその体の本来の持ち主の魂に負担が掛からず、通常の状態になります。この事は既にそちらの女神様と話し合いが済んでいて、是非そうして頂きたいそうです。』
なんと、女神様同士の会議が既にされていて、話が通っているという事か。
『兎に角山田さん、一つの器に二つの魂が入っているというのは、やはり不自然なのです。今後どのような影響が出てくるか解りませんが、少なくとも、あまり良い事ではありません。なので、山田さんにはその体を一刻も早く出ていってもらい、新たな体へと魂を移って頂きます。よろしいですか?』
(はい、それは構いませんが、何処にその本来の俺が転生する予定だった体があるのですか?)
『山田さん、その部屋に隠し部屋があるのをご存じですか?』
隠し部屋か、確かゲーム「ラングサーガ」にあったな。
えーっと、確かこの辺りに隠し扉を開けるスイッチがあった筈。
部屋の中を調べ、一か所だけ、不自然な出っ張りがある事に気付き、これがスイッチだと思い出す。
スイッチを押して、ゴゴゴゴゴ、っと重い石の隠し扉が開く音が聞こえて、扉が開いた。
(女神様、隠し扉を見つけて開きました。)
『そこです、その隠し部屋に、ベッドに横たわっている男性が安置されている筈です。まずはそれを見つけて下さい。』
俺は内心、ドキドキしながら、隠し部屋の中へと足を踏み入れる。
その部屋の中には、何やら近未来的なベッドが一つあり、そこに、一人の青年が横たわっていた。
これか、まさか死んでないよね? しかし、保存状態もいいし、外傷なども見受けられない。
綺麗な体だ。どこか日本人ぽいな。髪の毛の色も黒だし。
(女神様、見つけました。ベッドに横たわっている青年を見つけました。)
『そうですか、それだと思います。その体はハイブリッドと言って、古代セルセタ文明時代に造られた人造人間なのです。体は丈夫なのですが、魂を入れる術は難しいとされ、ここに安置されていたようですね。山田さん、その青年の体へと、あなたの魂を入れます、その体は器が空っぽの状態ですので、山田さんが入っても問題は無いと思います。』
(これが、俺の新たな体か。女神様、お願いします。今使っている体に負担が掛かっているのならば、急ぎこの体を出て行こうと思います。)
『解りました、準備の方はいいみたいですね。では、いきます。山田さん、目の前の青年の体の胸辺りに手を添えて下さい。』
言われた通りに、手をベッドの青年の胸辺りに添える。
(準備できました。いつでもいけます。)
『では、ほんだらがったーほんだらけ、ムウウン!!』
そ、そんな適当そうな呪文で大丈夫なのか? まあ、女神様だし、いいか。
女神様が気合を入れる様な声と共に、俺の意識が遠のいていくのを感じた。
そして、青年に触れている手の方へ、俺の魂みたいな意識が、元の今まで世話になっていた体から抜け出る感覚がして、一気に流れ込んでいく感覚がした。
違和感などは無い。ただ、ちょっと面食らった感じだ。
意識が一瞬無くなり、妙な浮遊感がして、その後すぐに重力を感じる様になった。
………………解る、解るぞ。今、俺はこの体に移ったという事を。横たわっている感覚を。
『成功です。山田さん、少し魂が定着するまで、そのまま動かないで下さい。少しの時間です。ゆっくり深呼吸していて下さい。』
(はい、解りました。女神様、ありがとうございます。)
ゆっくりと深呼吸して、体の調子を整える。うん、悪く無い。寧ろしっくりくる。
この体は頗る良好な気がする。俺に合っているのかな?
それに何だ? この体全体に力がみなぎってくる感覚は!? まさかこの体、エースクラスの体か!?
『いいみたいですね、魂が安定しています。体と魂が定着している証拠ですね。良かった、もう、今まで使っていた体は、もう元の持ち主の魂だけになったみたいですし、やはり一つの器に一つの魂が本来あるべき姿ですので、これで良かったと思います。』
そうか、やはりこれでいいのか。やれやれ、今までお世話になっていた体には感謝しかないな。
少し腕を動かそうとしたが、やはり直ぐには動かなかった。今少し休憩、というか慣らしが必要そうだ。
『それでは、私はそちらの女神様たちにもう少しお話がありますので、この辺りで失礼します。山田さん、これからの貴方の人生に幸多からんことを祈っています。では、これで。』
(ありがとうございます、女神様。この体、大切に使わせて頂きます。)
頭の中の女神様の声が、聞こえなくなった。もういったのかな?
意識が覚醒し、少しづつではあるが、体が動くようになってきた。
ゆっくりと起き上がり、深呼吸をして辺りを見渡す。そこには、一人、立っている男が居る。
今までお世話になっていた体だ。いや、もうジャズでいいか。ジャズが佇んでいる。
そして、不意に声を掛けられた。
「やあ、………初めまして、に、なるのかな?」
目の前の男は、落ち着いた表情で語り掛けてきた。ジャズ、だよな。本来の。いや、本物の。
「そう、………なりますね、初めまして、ヤマダと申します。」
「………………ヤマダさん、ですか。はは、何だか不思議な気分ですよ、今までの自分が、まさかここまで活躍していただなんて、今まで自分が自分じゃないみたいな感じがして、だけど、これでようやく自分に戻った。と、いった感じでしょうか。」
「ジャズさん、今まで大変お世話になりました。これからは自分はこの体でやって行こうと思います。」
ほっ、よかった。元の体はどうやら大丈夫そうだ。今の体はすこぶる良好な状態だ。
元気が有り余っている感じだな。
外から見た感じだと、おそらく20歳ぐらいだと思うが、黒髪にブラウンの瞳、中肉中背、あと、どこか筋肉が程よく付いているから、こりゃあいい、有難い。
「ヤマダさん、実は自分の名前はジャズが本名ではないのです。」
「と、仰いますと?」
「ヤマダさん、あなたはこれからも、ジャズを名乗って生きて行かれても、こちらとしても何の問題もありません。」
「え? それは、どういう?」
ふーむ、この目の前にいるジャズは一体何を言うつもりなんだろうか。
「では、貴方の本当の名前は、何と言うのでしょうか?」
目の前の男は、少し躊躇いながらも、俺に対して快く答えてくれた。
「私の名は、ジャズー、ジャズー・アリシアといいます。」
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