おっさんが雑魚キャラに転生するも、いっぱしを目指す。

お茶飲み人の愛自好吾(あいじこうご)

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第124話 別れと旅立ち

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 あの後、着替えてから広場まで戻り、ニールと合流。そのまま海岸へ向けて移動し、入り江へと向かった。

「隊長たちは無事なんだな? ジャズ。」

「ああ、確認済みだ。皆無事だと思うぞ。」

「なら、急いで向かおう。俺達の無事も伝えなきゃな。」

「そうだな、急ごう。」

 こうして入り江までやって来て、海賊のアジトへと入り、急ぎ中を進む。松明の明かりを頼りに、広がっている場所に到着した。

 そこには、おびただしい数の山賊の死体が横たわっていた。これを俺一人でやったのかと思うと、何とも怖くなってくる。

奥の方に目をやると、隊長達を発見した。早速声を掛ける。

「隊長! ご無事ですか?」

「おう! ジャズ曹長、それにニール上等兵、貴様らも無事だったか。こちらへ来て女性を保護しろ。そのままこの場を離脱だ! いいな!」

「「 はい!! 」」

俺達は駆け寄り、女性陣の安否確認をして、洞窟を出る様に促す。フィラも護衛に回ってくれた。

俺はアイテムボックスから、隊長とフィラ、ちびっ子の武器を取り出し、渡す。

「あ、それあたいの武器じゃないか。ありがとう兵隊さん。」

「中々立派な錨だな。」

「へへ、あたいのお気に入りの専用武器なんだ。」

よくもまあこんな重たい物を武器にするなあ。握力が強いなんてもんじゃないぞ。

 海賊のアジトがある開けた場所まで来たところで、ちびっ子が言う。

「ここまででいい、ありがとう。軍人さん。お陰で助かった。」

「ここでいいのかい? 港町まで行かないのかい?」

すると、女海賊たちは口々にこう言った。

「ここがあたい等の家なのさ。」

「ここで生活して、ここから海へ出て活躍しているんだ。」

「ここには愛着があってね、本当にここまででいいよ、兵隊さん。」

ふーむ、海賊として生きていく、という事か。しかし、領主に騙されているんじゃなかろうか。

「なあ、船長さん、聞いた話じゃあんた等、領主が買った戦闘奴隷なんだって? ここを拠点にしているって事は、この奥の金鉱脈も守らされていたって訳なのかい?」

「さあ? 奥に金の鉱脈があるなんて聞いた事が無かったから解らないよ。」

ふーむ、知らされていない、か。

「隊長はどう思います?」

サキ隊長は腕組みし、「うーん」と唸ってから、口を開いた。

「情報がある以上、調べない訳にはいかないだろうな。兎に角、我々の任務は山賊と海賊から町の人々を守る事だ。その過程で入手した情報は、基地に帰ってコジマ司令に報告、連絡、相談の「ほうれんそう」だな。」

やはりそうなるか、金の鉱脈なんて莫大な資源は、国が黙っちゃいないだろう。何故領主はその事を隠していたんだろうな?

俺は更にちびっ子に聞く。

「なあ、あんた等領主に騙されているんじゃないのか?」

すると突然、ちびっ子がくわっとこちらに詰め寄ってきた。

「領主様の事を悪く言うな! あの方はそんな人じゃない! あたい達の恩人なんだ!」

「しかし、人を騙して鉱脈を守らせていたんだろう、やっぱりこの事は報告するべき案件だよ。」

「領主様はとても思慮深い方なんだよ、今回の事だって、きっと何か理由がある筈さ。領主様はいい人なんだよ。奴隷商でくすぶっていたあたい達を、買い上げてくれて、仕事までくれたんだ、港町の人達をモンスター被害から守って欲しいって。」

ふーむ、山賊から聞いていた話や人物像からは解らんな。機会があれば直接会って話を聞きたいところだな。

まあ、基地に戻ってからだな、領主云々の事は。

 こうして、俺達サキ小隊は、無事に任務をやり遂げた。今日一日は宿に泊まって、明日の朝にクラッチに帰還する事になった。



 翌朝。

船着き場に、大陸横断船が停泊していた。準備の方は着々と進められている様だ。出航に向けて水夫たちが荷揚げをしているのが見える。

「フィラ!」

桟橋に居るフィラに声を掛ける。

「出発の前ってなぁ、いいモンだよなぁ。」

フィラはこちらを向き、微笑みを湛《たたえ》て、俺を見る。その顔は晴れやかな笑みだ。

「ジャズ様、わざわざのお見送り、感謝致します。」

「なに言ってんだ。俺が見送らなくてどうする。」

この場には他に、サキ隊長とニールも居る。二人共俺に付き合ってくれている。

「フィラさん、今回のご協力に感謝します、向こうへ行っても、どうか無理をなさらないように、お体を大切に。」

「はい、サキ隊長さん。色々と良い経験をさせて貰いました。シャイニングナイツになってもこの経験は忘れません。」

「フィラちゃんが居なくなると、やっぱり寂しいな。あまり無茶しちゃ駄目だよ。」

「はい、ニールさんも、どうかご無理をなさらない様に。」

フィラはシャイニングナイツになる為、セコンド大陸にあるエストール大神殿へ向けて旅立つ事になった。

他でもない、フィラが自分で決めた事だ。応援してやろう。

「………………。」

「………………。」

俺とフィラの視線が交差して、ただ、無言のまま時が過ぎていく。

「出航準備が整いました! 船に乗られる方はお急ぎ下さい!」

水夫が出航間際を伝える。

「フィラ、名残惜しいが、そろそろ。」

「はい、ジャズ様。お元気で。」

フィラは桟橋を船のタラップがある方へ歩き出し、荷物を背に、歩みだした。

と、思ったら、少し進んだ所で立ち止まり、荷物をその場に置き、くるりと振り返り、ダッシュで俺に向かってきた。

「フィラ?」

そして、フィラは俺に飛び込んできて、両腕を俺の首に回し、そのまま抱き合った。

「……ジャズ様。」

俺は、優しく後ろ髪を撫でて、落ち着かせる。

「また、いつでも会えるさ。」

暫くの間、このままフィラの温もりを感じながら、頭を優しく撫でつける。




(ああ、ジャズ様。私忘れません。貴方に出会えた事、貴方と共に過ごした事、貴方に力を貰った事、全て、例え僅かな時だったとしても、私は、私は、貴方を、………お慕いしております。ジャズ様。)



「さあ、フィラ、船が出るよ。」

「はい。」

フィラは俺から離れ、そのほのかな香りを俺に残し、船へと乗り込んだ。

「元気でやれよ! フィラ!」

「はい! ジャズ様! 行って参ります!」

こうして、フィラは旅立った。俺は船が沖合に出るまで、いつまでも見ていた。

「寂しくなるな、ジャズ。」

「ああ、だが、そうでもないさ。またいつか会える。俺は、そう思う事にする。」

サキ隊長が、パンパンと手を叩き、俺達を振り向かせる。

「よーし! 見送りも済んだ事だし、我々は基地に帰還するぞ! いいか! 気合だけは入れておけよ! 基地に帰るまでが任務だからな!」

「「 はい! サキ隊長!! 」」

それぞれが、それぞれの目的に向かって歩み始めた。フィラはどんな戦士になるのかな? ちょっと楽しみだ。

俺は、サキ小隊と共に、クラッチの町へ向けて、帰還するのであった。

よく澄み渡った青空に、海鳥が飛び交う、秋の半ばの晴れた日の事であった。



************************************************
第二部  完
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