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第217話 聖戦 ③
しおりを挟む避難してきた人達と共に、義勇軍たちも一緒に避難してきていたみたいだな。
これでまた義勇軍の役立たずぶりが評判になる事だろう。
だが、やはりこのままではいけないと思うメンバーも居るみたいだ。
あともう一歩何かがあれば、化ける可能性を秘めていそうだが。
そんな事を思っていたら、少し高い石台のところに見知った人物が目に入った。
「あ! あれはもしかして巫女様では?」
そして、隣に居る奴は間違いなくアドンだった。
「そうか、アドンの奴が巫女様を護衛していたか、なら安心だな。」
アドンは訳が分からない奴だが、強い事には違いないので、頼りになる奴だ。
巫女様に近づこうと歩みを進めていると、その巫女様が義勇軍に向かって何か大声で言っていた。
「義勇軍の皆さん、お願いです。シャイニングナイツを、彼女たちを助けて下さい。」
突然の巫女様の声に、他の義勇軍たちは一斉にそちらを向いた。
義勇軍たちは話を聞くみたいだが、さて、巫女様は何を言うつもりだろうか?
「わたくしは、女神教会の巫女です。エストールは今、危機に陥っています。魔物の群れに対して、こちらの戦力は非力です。シャイニングナイツやその予備隊だけでは数に差がありすぎるのです。お願いです、義勇軍の皆さん、どうか、彼女達にお力をお貸しください。お願いします。」
おお、巫女様が義勇軍に対して協力要請をしている。
だが、その義勇軍たちは最初は話を聞いていたが、徐々に顔を下げ、俯き加減で話を聞き、隣に居るメンバーと顔を合わせ、首を左右に振っている。
やる気が無い、というより関わらない様にしている、と言った感じだ。
「お前どうする?」
「いやぁ、どうするったって、なあ?」
「俺達に何をさせようってんだ? いや、そもそも義勇軍を頼ろうとは、正気か?」
義勇軍たちは、小声で口々に不安な様子を呈している。
酒が抜けていないというのもあるだろうが、それ以上に戦いに参加するつもりが無い様だ。
自分を情けなく思っている反面、このままじゃいけないよな、と言う気持ちも持ち合わせている様子だ。
巫女様がここまで言っているのに、動こうとしない。まったく、義勇軍ってやつは。
今解った、義勇軍が何故人々にアテにされていないのかを。
かつての栄光が何処にも無いからだ。そういった気概が微塵も感じられない。
だが、変わろうとしている者達も少なからず居る事は確かだ。
巫女様のお願いがきっかけになってくれれば、義勇軍は活躍出来そうなんだが。
如何せん、義勇軍の皆は動こうとしていない。
この事態に、巫女様は涙ぐみ、もう一度話をしようと言葉を紡ごうとしている。
「見ていられないな。」
俺は駆け足で石台に上がり、巫女様の頭を優しく撫でた。
巫女様はこちらを向き、物悲しそうな表情で目に涙を浮かべていた。
「よくここまで来たな、後は俺に任せて貰おう。」
「ジャズ殿。」
巫女様は顔をクシャクシャにしつつも、涙を拭いて前を見据える。
俺の服の袖を摘み、身体が震えていたが、巫女様は前を向く。
今度は俺が石台に上がった事で、義勇軍の目は俺に注目した。
だが、俯き加減なのは変わらない、それでも話を聞く姿勢は持っているようなので、まだまだ義勇軍も捨てたものではなさそうだ。
「………………俺はさ、義勇軍になって日が浅いけど、それでも守る為の戦いってやつはしてきたつもりだ。」
俺が話を始めた事で、皆の意識がこちらへ向いた。
だが、みんな意気消沈している事には変わりない。それでも話を続ける。
「情けねえよな、なんだかんだ言いつつ、俺もこんなところで油を売っているんだもんな。」
皆の表情は暗い。誰も笑ってなどいない。
「だけどさ、あのモンスターの数は半端ないよな。ありゃ手に負えんよな。」
皆の顔は俯いている。
「だけどさ、ここまで逃げて来た女の子がさ、震えながら言うんだよ。」
皆の身体は泥だらけだ。
「一般人と一緒になって逃げてさ、俺たちゃ何やってんだかな。」
皆の姿はボロボロだった。
「今、エストールで、女たちが戦っている。」
皆には解っている筈だ。
「女たちが戦っているのに、俺たちは逃げて来た。」
皆は俯き、誰も顔を上げようとしない。
「なあ、このままでいいのか? ここに居る巫女の女の子が助けを求めてんだよ。」
皆は少しづつ、目だけを上げた。
「俺達はさ、何の為に武器をその手に持った? 自分の為、家族の為、恋人の為、仲間の為、皆、人それぞれ戦う理由があった筈だ。」
ここで、一人、また一人と、顔を上げて来た。
「何の為に武器を持った? みんな守りたいものがあったから立ち上がったんじゃないのか?」
少しづつだが、皆の顔の表情が真剣味を増してきた。
「女の子がさ、助けを求めてるんだよ。他でもない、俺達義勇軍に!」
座り込んでいた者が、一人、また一人と立ち上がり始める。
「女が戦ってんのに、俺たちゃどうだ? まだ諦めてねえだろ? 本当は戦えるだろう?」
皆の表情から暗さが消えた。
「ただちょっと酒が抜けてねえだけだよな? そうだろみんな!!」
皆は立ち上がり、その瞳に闘志が宿る。
「非力な女の子が魔物に命を狙われている、にも拘らずこうしてここまで俺達を頼って来た。なあ、本当にこのままでいいのか?」
皆は一斉に武器を持ち、立ち上がる。
「何の為に武器を手にした! 何の為に戦ってきた! 皆、もういい加減酒は抜けて来ただろう!!」
皆の表情は戦う男のそれだった。
「女が待ってる、俺達が立ち上がるのを!!!」
皆は一斉に手に持った武器をリズム良く地面に叩きつける。
「もういい加減ぶちかましてやろうぜ!!!! 俺達義勇軍の戦いってやつを!!!」
皆は一斉に動き出し、整列し始める。
「俺達は義勇軍だ! 義勇の旗の下! 集った仲間だ!!」
「義勇の旗の下に。」
「「「 義勇の旗のもとに。 」」」
「「「「「「 義勇の旗のもとに!! 」」」」」
よし! 皆蘇ってきた! 全員立ち上がったようだ!
「さあ! いこうぜ!! 彼女達のもとへ!!! この戦いは歴史に名を遺す戦いだ!!! 名も知らぬ戦士たちの為の!!!」
「「「「「「「「「「 うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!!!!!!! 」」」」」」」」」」
「みんなで琥珀色の夢を掴もうぜ!!!!」
「「「「「 おおーーーーーーーーーーーーーー!!!! 」」」」」
義勇軍のみんなは拳を天に掲げ、大声で叫んだ。
「義勇軍!!! 前進せよ!!! 」
「うおおおおおおおおおおお!!! 」
「やってやるぜーーーーーー!!! 」
「俺は、もう逃げない! 絶対にだ!!! 」
「よっしゃ!! 乗って来たぜーーー!!! 」
よしよし、義勇軍の皆は迫力が出て来たみたいだ。
これなら、いけるか!
義勇軍の皆は、一気呵成に雪崩を打って戦場へ駆けて行った。
そんな中、巫女様が俺の袖を引っ張り、俺に一振りの剣を差し出してきた。
「今こそ、貴方に、この剣を。」
「これは。」
それは、白銀に輝く一振りの剣。白いオーラが溢れている。
その剣こそ、聖剣サクシードだった。
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