性欲つよつよなワンコ系年下夫(27歳)の手綱を全然握れてない元ドッグトレーナー中年男性(46歳)の話

ぱふぇ

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本編

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 家事をあらかた終わらせた俺は、この週末で片付けてしまおうと思っていた読みかけの本を棚から引き抜き、居心地のいいリビングルームのソファに腰を落ち着けた。足元では我が家の愛犬兼番犬、ピットブル・ミックスのモジョが、床に顎をつけてリラックスしている。

 ページをめくる音とモジョの規則的な鼻息だけが響く、めったにない穏やかな午後。残念ながらこのような時間は束の間だ。
 背後からにゅっと伸びた手が俺の目を覆い、視界が遮られる。

「だーれだ?」

 耳のすぐ後ろでおどけた声がして、フワッとボディソープの香りが鼻をくすぐる。
 俺は内心ため息をついた。穏やかな読書タイムは終わりだ。

「……。俺の夫」

 それ以外に誰がいるんだと思いながらも答えてやった。振り向く必要はない。俺はすでに、ソファの背もたれに寄りかかり、イタズラっぽい顔で俺を見つめるリアムの姿が想像できていた。
 モジョが立ち上がり、鼻をフスフス鳴らしてもう一人の主人を律儀に出迎える。

「ははっ、当たり~。フアンを旦那さんに貰った世界で一番幸運な男でーす」

 腰をかがめてモジョを構うリアム。ホームジムで日課のワークアウトを終え、そのままシャワーに直行したのだろう。まだ水気を帯びた髪にタオルを被せ、タンクトップとハーフパンツというカジュアルな格好だが、それでもハリウッド俳優のようなゴージャスなオーラを漂わせている。
 どこにいても人目を引く、惚れ惚れするようなハンサムのこの男──リアム。27歳とまだ若く、俺とは19も離れている。この年齢差には俺も思うところがないわけではないが……彼は、俺の夫だ。

 「おいで、ほら」と隣にリアムを座らせ、抱き寄せる。顎に触れた髪は湿っている。

「ちゃんと乾かしてこいと何度も言ってるだろう、風邪引くぞ」
「今日あったかいから平気だって」

 タオルを掴んで頭をワシワシ拭いていると、なんだか大型犬を洗っているような気分だ。
 リアムの雰囲気はどこか犬を思わせる。今だってブンブン左右に触れている尻尾を幻視しそうになる。この髪、色味の濃いブロンドヘアはラブラドールの被毛を思わせるが、陽気で外交的な性格と底なしの体力は、どちらかというとハスキーに似ているだろうか。

 ……つい犬に喩えてしまうのは、職業病というのもある。結婚を機に辞めるまで、俺は長年ドッグトレーナーをやっていたのだ。若い頃はロス市警LAPD警察犬K9ハンドラーとして、独立してからは民間で問題のある犬の躾け直しに取り組んできた。腕に残っているいくつかの厳つい咬創はその名残。
 早期リタイアした今はのんびりと専業主夫をしている。リアムは帰宅したときにパートナーが家を暖かくして待っている生活を望んでいたし、彼が大学時代の友人と共同で立ち上げた会社の経営は軌道に乗っており、収入は俺たちふたりを支えるには十分すぎるほどだった。

 俺にはドッグトレーナーとして数々の犬を躾けてきたキャリアがある。腕は確かだ。
 ……しかし、相手がリアムとなるとまた話は違ってくる。俺は夫の"問題行動"に全く対処できていない。

 元はといえば俺が悪い。
 俺はリアムを甘やかしすぎたのだ。

 リアムは、ちょっと甘えた声を出して可愛くねだれば、俺を思い通りにできると信じている。もっと悪いのは、彼のその考えはあながち間違ってはいないということだ……。
 実際、リアムのあの、クゥーン……と鼻を鳴らす音が聞こえてきそうなウルウルしたパピーアイに抗うのは至難の業だと思う。脚にじゃれついてくる子犬を跳ね除けるような気持ちにさせられてしまう。
 こうしておねだりされる度につい流され、ワガママを許してきた。その結果がこれだ。

 リアムは、四六時中、したいと思った時に俺を求めてくるのだ。

 俺たちの結婚生活は……その、俺の年齢を考慮すれば特に、いささか「お盛ん」すぎるのではないかと思う。それにいざベッドに引き摺り込まれると、俺はもう、目も当てられない醜態を晒す。リアムに乗っかられ、揺さぶられ、アンアン喘がされ……主導権は完全にあちらのもので、完膚なきまでに屈服させられている、なんて。46の男が、27の男に? こんなこと情けなくて誰にも打ち明けられない。マリッジカウンセリングに行き、19も年下の夫に愛されすぎて困ってますとでも言えばいいのか? 恥ずかしすぎる。

 ドッグトレーニングでは力関係を明確にすることが大事だ。支配するのではなく、リーダーシップを示し、犬の尊敬を勝ち取る。そうすれば自然と上手くいく。
 結婚生活において健全な夫婦関係を維持するにも、この原則は当てはまるんじゃないだろうか。どちらも相互の尊重、忍耐、一貫性を要するという面では同じだ。

 そうだ、俺が何十年もやってきたことじゃないか。誰がボスか理解させるのは得意だ。どんな凶暴な犬だって見違えるように更生させてきた。あのモジョも、人を噛んだことのある攻撃的な犬で、誰の手にも負えずシェルターから俺のところに移送されてきたのだ。一筋縄では行かなかったが根気よく服従訓練を続け、今ではかけがえのない忠実な相棒だ。
 俺の本来の手腕をもってすれば、まだ27歳の若造からリードを取り返すなど訳ない、はずだ。

 いい加減にこのサイクルを断ち切らなければならない。男の沽券にかけて、年上の夫として、俺は家庭内での相応の立場と権威を取り戻す必要がある。
 ……今日こそはリアムに振り回されることなく、毅然とノーを貫く。

 俺は静かに決意を固めていた。

 そんな俺の心の内はつゆとも知らないリアム。

「それよりフアン、週末だよ? せっかくの休日くらい二人で充実した時間を過ごそうよ」

 ほら来たぞ、さっそくだ。リアムは俺の肩に頭を乗せ、ジャブを打ってきた。言わずもがな、リアムの考える「充実した時間」とは、くっついてイチャイチャ……そういう類のものだ。

「あとちょっとで読み終わるんだ。そうしたら映画でも観よう。少しの間、良い子だから邪魔しないでくれ、な?」

 注意すべきは、この後ネットフリックスのオススメをスクロールする時だろう。間違ってもラブロマンスなど選んではならない。リアム好みのアクションか、それかいっそリアムが寝落ちしそうな落ち着いた史実がいいだろう。
 俺はペーパーバックの活字に目を落としたまま片手間に彼の髪に指を通し、おなじみのご機嫌取りをした。俺の視線を奪取できないリアムの不満は明白だ。口を尖らせて拗ねている。

 リアムはメールやSNSをチェックしていたが、やがて退屈したのかスマートフォンを放り投げ、俺の体を触り始めた。いつものことだから放置する。
 リアムと暮らすようになってから俺の忍耐は随分と鍛えられた。これくらいのちょっかいを躱すことは容易だ。

 頬をつついたり。
 顎をジョリジョリさすったり。
 腕に浮く血管を辿ったり。
 腹回りの贅肉をムニッと掴んだり。おい、やめろ。

「なんかさ、フアン、最近ますますジューシーなカラダになってきてない?」

 ……密かに気にしてるんだぞ。

「幸せ太りってやつ? たっくさん俺と"運動"してるのになー♡」
「……」

 おっと、そういう展開に持って行こうとしても無駄だ。
 リアムの手がスルスルと俺の脇腹に伸びていき、ポロシャツの裾をつまんでめくり上げる。中に侵入される前に、俺はその不埒な手をはたき落とした。

「こーら、リアム。行儀が悪い」

 薄い紙面をめくりながら軽く叱る。残るページもあと僅か。

「む……」

 リアムは叩かれた手の甲をさすりながら(さほど痛くはしていないはずだが)不満げに唸って、俺の膝に頭を乗せ仰向けに寝そべった。長いまつ毛に縁取られたキラキラしたセルリアンの目がじっと俺を見上げている。
 リアムは俺の集中力を削ぐのにかけてはプロ級だ。

「…………フアンん~~」

 俺の無反応に痺れを切らしたリアムは、俺の腹肉にぐりぐり顔を押しつけてくぐもった声を出す。
 ……ちょっとかわいそうになってきた。いや、ダメだ。ここで折れたらいつもと同じだ。こういったトレーニングには忍耐が不可欠なんだ。

 リアムのちょっかいは次第に大胆になっていく。身を起こした彼がピッタリと密着してきて、「ねー……今日は構ってくれないの?」と俺の肌に向かって呟く。あたたかい息が首にかかったかと思えば、

 チュッ……

 ついにリップ音が鳴った。

 チュッ、チュッ。と、連続する。
 ……これは流石に、無視するのは難しい。

「……服で隠れない場所に跡をつけるのは」
「ダメ、でしょ? わかってるよ。軽くちゅってしてるだけ……んー♡」

 リアムは攻撃の手を緩めず、唇を押しつけたまま上向きに引きずり、俺の首の曲線と隆起に沿ってキスを植え付けていく。
 首筋、こめかみ、耳……皮膚の薄い場所に甘い愛撫を浴びせられながら俺は、何度も何度も繰り返し同じ行を読んでいることに気づいた。

「こんなに魅力的な夫がすぐ隣にいるのに……何もできないなんてつらすぎる」

 リアムが俺の耳に唇を押し当てながら、低く切迫した声音で囁く。

「……えっちしよ♡」

 空気をたっぷりと含んだ掠れた声を直接耳に吹き込まれ、ゾクゾクっと腰から背筋に震えが走る。

「……」

 俺はこの声に弱い。

「ね~えっちしたい……♡」

 リアムの手が俺の太ももの内側の、際どい所をなでさすり、カリカリ、と固いジーンズの縫い目に爪を立てる。
 ちゅっ、とまた耳にキス。

「俺がどれだけフアンを欲しがってるか証明させて……」

 ちゅっ。

「……お願い、フアン♡ 我慢できない♡」

 ちゅ、ちゅっ。

「愛し合お……♡」

 体温が上がる。形だけでも平静を取り繕わなければならないが、それすら苦労する。

「こんな昼間から……勘弁してくれ」
「背徳的でイイじゃん」
「昨夜あれだけしたのに……」
「俺若いもん♡」

 胸を押される。
 気がつくと、俺の背は座面のクッションに沈み込み、覆い被さるリアムの顔と天井のシーリングファンを見上げる格好になっていた。
 リアムが俺の膝に跨り、情熱的なまなざしで俺を縫い留める。

 参った、降参。俺の負けだ。

 リアムは勝ち誇ったような、プレゼントの包み紙を剥がすのを待ちきれない子供のような顔をしている。

 モジョが心なしか呆れ気味の歩調で歩いて行くのが視界の端に映った。
 「せめてベッドルームに、」と俺は抗議し始めたが、リアムの唇が俺の唇に触れ、舌先に乗っていた続きの言葉は唾液でぐちゃぐちゃになってしまった。








「はぁっ♡ はぁっ♡ はぁっ♡」
「………お……っ♡……ふっ♡」

 ……結局こうなった。
 今日こそは流されまいとあれだけ思っていたのにだ。
 案の定、まだ日も暮れていないうちからふしだらに、リビングのソファをギシギシ言わせて「愛し合う」はめになった。

 俺は下を脱がされ、リアムはセックスに事足りる分だけ着衣を乱して……お互いの股ぐらを必死に押しつけ合っている。
 俺の喘ぎ声を引き出すイイ角度をわかっていて、手加減なしで攻めてくるリアム。こうスイートスポットを連打されてはたまらない。年上のプライドにかけて、許してくれ、などと口に出すわけにはいかず、俺は尻を振りたくってヨがる。
 跳ねた俺の脚がサイドテーブルにぶつかって、何かが床に落ちる硬い音がした。でも今はそんなことに構っている余裕はない。
 脚を抱えられながら若さにものを言わせた力強いピストンを送り込まれ、俺は快感を逃せない姿勢でオーガズムを迎えることになる。
 ああ、キツイのが来る……

 ……リアムについてまだ言ってなかったことがあるな。セックスも上手いんだ、この男。

 ◇

 俺は離婚歴があるし、もう年だ。
 それがまさか自分よりずっと若い男性と再婚してこんなことになるなんて、夢にも思わなかった。
 数年前の自分に言っても絶対に信じないだろうが……今、俺は自分の半分ほどの年齢の夫に抱かれている。

 どうしてリアムと一緒になったかって?
 経緯は控えめに言っても複雑だ。まあ、リアムの熱烈で執拗なアプローチと俺の降伏がこの結果に至らしめたとだけ言っておこう。

 プロポーズの言葉は忘れられない。片膝をつき、真剣な顔で俺を見上げて、リアムはこう宣言した。
 ──「あなたの残りの人生を、全部俺にください」と。

 かくして俺は、若く、背が高くハンサムで、明るくて人当たりが良く、ビジネスで成功しており経済的にも安定している、社会が望ましいと考えるすべてを具現化した男に、図らずも「イエス」と答えてしまった。
 本当にこれでよかったのか今でも時々考える。リアムはどう考えても、俺のような中年男にはもったいなさすぎる。

 結婚生活は概ねうまくいっている。
 もう一年近く経つが、いまだに若い新婚夫婦もかくやという熱っぷりだ。いや、俺たちの親密さの度合いには、今時のティーンエイジャーのカップルでさえ赤面するだろう。
 リアムの愛情には感謝しているが、気恥ずかしいと感じる瞬間も多々ある。臆面もなく愛を囁かれるとこそばゆくて素直に受け取れないのは、俺が古い人間だからだろうか。

 リアムは人前だろうが構わずイチャつきたがるタイプの男で、交際したての頃は参った。
 俺は、公共の場での愛情表現について厳格なルールを定めなければならなかったし、リアムは地道な反復練習と血の滲むような努力の末、ようやくそれを守ることを学んだ(それでも俺の腰に腕を回す口実をいつも探している)。
 しかし、その境界線は、俺たちが玄関のドアを一歩くぐった瞬間に解けてしまうようだ。
 外で我慢させているのだから家の中くらいは自由にさせてやろう……と最初思ったのがいけなかった。キス、ハグ、ボディタッチ、可愛らしいものからセクシャルなものまで、愛情表現の名の下に隙あらば仕掛けてくる。

 厄介なのはキッチンだ。両手が塞がっているのをいいことに、リアムは料理中の俺の背後に忍び寄り、おふざけ半分にあちこちまさぐって俺の気をそらそうとする。
 そして事態がエスカレートし、いつの間にか……食事の準備とはかけ離れた行為に及んでいることもままある。

 ……。

 俺たちの性生活のことだが……。
 精力旺盛なリアムに俺は翻弄されっぱなしだ。まだ20代の、若くエネルギッシュな夫を満足させるのは、並大抵のことではない。
 ほとんど毎晩のように求められ、それに応じているというのは、46歳としていかがなものだろうか。
 まだ腰はやっていないが……。これに関しては現役時代に鍛えていたのが本当に幸いだった。体が資本だったからな。

 ただ、まあ、リアムが教えてくれるまで、受け身のセックスがこんなにいいものだとは知らなかった。

 誤解しないでほしいが、俺は二人の時間を楽しんでいる。しかしその回数が……少し、多すぎるんじゃないか? と思っているだけだ。家計簿を見返していた時、ひと月で消費したコンドームの量に唖然とした。リアムの若さと、彼の誘いに逆らえない俺のせいだ。

 リアムにステイ、ウェイト、ノーを厳しく突きつけるのは、犬を訓練する時よりもはるかに困難だ。つい甘やかしてしまう。つまるところ、俺はこの年下の夫が可愛くてしょうがないのだ。

 突如現れたリアムが俺の人生をめちゃくちゃに引っ掻き回してから、俺は、それ以前の孤独な生き方を忘れてしまった。リアムのいない生活はもう考えられない。
 ……ああ、まったく。最後まで責任は取ってくれよ。
 俺の人生の残り全部、お前にくれてやったんだから。



 ……


「はっ♡ フアン♡ もう出そう♡ ん……こっち向いて、キスしながらがいい……」
「……ッ、っふ……」
 
 といった具合に、俺たちの盛り上がりがピークに達していたちょうどその時、ドアベルが鳴った。

「…………」

 思わず動きを止め、乱れた呼吸を抑えつける。
 何者かの訪問を無視し、リアムはもう一度俺にキスをしようと身を乗り出した。しかし唇が触れ合う前に、ドアベルが再び鳴り響く。

「……ハアッ、くそ……」

 苛立ちを滲ませて悪態をつき、リアムが渋々といった様子で俺から離れた。完全に満たされないまま中に入っていたものが抜けていき、喪失感に思わず熱いため息が漏れる。
 体の中でピンと張り詰めていた糸が緩んでいく。目前に迫っていたオーガズムを取り上げられ、中途半端に昂ったまま放り出された体が切なく、唇を噛む。だがこのもどかしさはリアムも同じだろう。

 「誰だか見てくる」と言って足首にまとわりついている脱ぎかけのハーフパンツに手を掛けるリアム。壁に手をつきウエストゴムを引っ張り上げながら、インターホンに向かって「はーい、どちら様……」と闖入者に応対する夫の姿を、俺は上気した顔でぼーっと眺めていた。
 するとスピーカーから声が響く。

『げぇ……お前の声は聴きたくなかった。父さんは? 近くに寄ったから顔見せに来たんだけど』

 俺たち二人とも固まり、思わせず見合わせた互いの顔は血の気が引いていた。
 マウリシオだ。
 なんて最悪のタイミングだ。こんな時でなくとも彼が訪ねてくるたびに緊張が走るというのに。

 マウリシオは……俺が……前の結婚でもうけた息子だ。言っておくがとてもいい子だ。いい子なのだが、気まずいのは、リアムと4つしか歳が変わらないということ。
 さらには、マウリシオもマウリシオで、また別の"問題"を抱えている。俺の息子はちょっとばかりパパっ子であり……自分と歳がそう変わらないのに俺のパートナーとなったリアムを快く思っていない。定期的に行っている元妻も交えた家族の夕食会の席では、ずっとリアムを睨んでいる。今にも殺さんばかりの目で。

 ……いや、今この話を深追いするのはよそう。それどころじゃない。

「あー、あーーーー……マウリシオ、今はちょっと……その、取り込んでて……60秒だけ待って!!」

 待てリアム、正気か!?
 息子にこんなことを言うのも申し訳ないが、今回は流石に居留守を決め込むべきじゃないか……?

 リアムがスピーカーを切断するのを皮切りに、俺はすかさず窓を全開にし、胸までめくり上がったシャツを戻し、ジーパンに脚を捩じ込みつつ、乾き切らないうちに乱したせいで四方八方に跳ね回っているリアムの髪はどう説明すればいいんだと、まだ冷め切らない頭を回転させている。

 俺の結婚生活は概ねうまくいっているが、平穏と程遠いのは間違いない……。


(了)
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