ゾンビポストアポカリプスの青年主人公が恋人(45歳屈強中年男性)とセックスしたいだけの話

ぱふぇ

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本編

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 最後の積み荷を運び込み、今回の仕事はこれで終わりだ。大抵の生存者は各地に点在するキャンプやシェルターのいずれかに身を寄せて生活しているが、俺はどこに属するでもなく、コミュニティ間の交易を仲介する運び屋みたいなことをして食い扶持を得ている。

「本当に助かったわ。あなたたちには世話になってばっかり」
「礼はいいって。困った時はお互い様だろ」

 先日の遠征で負傷者が多く出たというから医療品を多めにサービスすると、取引相手はしきりに俺に感謝した。俺と同年代……20代半ばくらいの女の子だ。それなりに大規模なこのシェルターで、若くして物資管理の責任者を任されている。要はビジネスの相手だが、何度も顔を合わせるうちにずいぶん親しげになった。

「泊まっていくでしょ? 明日の朝、外まで見送らせて」
「あー……いや。今日は帰るよ」
「でも、そろそろ日没じゃない?」

 彼女はちょっと言い淀んでそれとなく腕に触れてくる。

「その……空きのベッドもあるし」

 彼女の意図を察し、俺はえーっと、それって……とか言ってわかりやすく狼狽えて見せ、適当にはぐらかした。せっかくのお誘い申し訳ないけど、俺には心に決めた人がいるんでね。
 ありがたいけど、と前置きしつつ。

「この辺りは熟知してるから、多少暗くても平気だよ。君のとこの調達部隊がまた派手に瓦礫を吹っ飛ばして、地形が変わってなければだけど」

 俺はさっさと撤収し、脇に停めてあるバンに乗り込む。

「……ああ、もう済んだのか? 早かったな」

 助手席で待っているのは、散弾銃を抱えた屈強な中年男。
 彼はホルヘといい、運転が俺、ホルヘは護衛役だ。でも単なる仕事仲間じゃない。この過酷な世界を共に生き抜く相棒であり、そして……。



 もう5年も前か、感染者が自我を失い狂暴化する謎のウイルスが発生し、世界規模のパンデミックになった。
 急速な感染の連鎖を止める手立てはなく、町はゾンビで溢れ、人間社会と文明はあっけなく崩壊した。まだかろうじて政府と軍が機能していた頃、汚染区域をヤケクソみたいに爆撃したせいで都市部はめちゃくちゃになり、お陰で車両走行可能なルートを探し出すのも一苦労だ。笑えるくらいありきたりな筋書きだが、こうして世界はあっという間に、安っぽいゾンビ映画のポスト・アポカリプスの様相になってしまった。
 その割に悲壮感がないのは、俺には愛し合う恋人がいるから。

 俺はバンを走らせながら、助手席の男……ホルヘを横目で盗み見る。下げたパワーウィンドウに肘を引っ掛けてぬるい風を浴び、ここではないどこか遠くを見るような目で窓の外に視線を投げている。

 出会ったのは政府が機能停止して間もない混乱期のピークだから、もう長い付き合いだ。単独行動中にヘマをしてくたばりかけていた俺を助け出してくれて、それ以来行動を共にするようになった。
 ホルヘは退役軍人で、従軍時代に負ったという銃創のせいで片脚を引き摺るようにしてしか歩けない。満足に動けない自分の代わりにと、銃の扱いから応急処置の仕方、サバイバルに必要な何から何まで俺に授けてくれた。パンデミック前の俺はただの大学生だったから荒っぽいことはからっきしで、今の俺を構成する知識は全部ホルヘに仕込まれたものだ。ホルヘは俺の憧れだ。俺よりずっと体格がよくて二十近く年上で、タフでクールでミステリアスな、年上コンプの俺の好みドンピシャって感じの……大人の男だ。深い眼孔の彫で影が落ちる目元はいつも憂いを帯びている。その静かに凪いだ目が、ふと俺を捉える。
 多くは語らないけど、ホルヘは多分亡くした息子さんを俺に重ねている。それに俺も、まともに得られなかった父親からの愛情を、ホルヘに求めて満たしている……。

 この一週間、集荷と輸送で各地のキャンプを行ったり来たりで働き詰めだった。俺は焦れていた。日中は忙しく、夜は立ち寄ったキャンプの一角を借りて寝泊まりするか、敷地内にバンを泊めて車中泊だ。常に他人の目があって、「男が必要とすること」をする余裕などなかった。
 だからセーフハウスに向かう帰路のさなか、健全な若い男であるところの俺がムラついて運転どころじゃなくなっているのは当然で、仕方のないことだ。
 俺はバンを路肩に停めた。

「……ジャック? どうし、……ン、」

 シートから身を乗り出し、訝しむホルヘの口を塞ぐ。
 ちゅっ、ちゅっ、ちゅむ、と、ホルヘの髭が口元にざりざりと擦れるのにさえかき立てられて、角度を変えて何度も何度も……。ホルヘはちょっと驚いたように目を開いたが拒まなかった。無遠慮にのしかかってしがみつく俺を当たり前のように受け入れ、首に腕を回して応えてくれる。
 
 そう、ホルヘは……俺の相棒だが、恋人でもある。
 出会ってしばらくは、擬似親子のような関係が続いた。父親ができたみたいで純粋に嬉しかった。血縁上のは、むかし家を出て行ってそれっきりだったから。その後いろいろあって……まあ、迫ったのは俺だ。いつからかホルヘをそういう目で見るようになった。ずっと自分はヘテロだと思ってたが、正直、過去に付き合ったどんな女の子よりも性的に見えた。ホルヘがこちらに背を向けて屈んだ拍子に、その突き出された尻を見て勃ったこともある。だめだとわかっていても止めようがなかった。で、「一時の気の迷いだ」とか「お前にはもっと相応しい相手が」とか言ってなだめすかして躱そうとするホルヘを泣き落とした。いい年こいてガキ臭い俺の性格は過去の交際相手に振られる主な理由だったが、ホルヘを陥落させるのに一役買った。というか、効果てきめんだった。
 
 ちゅっ、くちゅ、ぬちゅ……俺が舌を忍ばせたのを皮切りにリップ音に水音が混ざり始め、車内の空気が一気に濃密になる。「ふ、」と鼻から抜ける男らしくセクシーな掠れ声が、どうしようもなく俺を興奮させる。しつこすぎると自覚しつつ、ホルヘを味わうのを止められない。ホルヘは俺の舌に大人しく絡め取られるまま、身じろぎするだけで抵抗はしない。なぜなら俺はめちゃくちゃ甘やかされてるからな。
 でも全然物足りなかった。こんな、くっついて粘膜をすり合わせるだけじゃ足りない。中に入りたい。もっと深いところでホルヘと繋がりたい。俺がようやく唇を解放する気になった頃にはお互い息が上がっていた。散々貪られたというのに、呼吸こそ乱れているがホルヘは涼しい顔をしている。それどころか、唾液がつたう俺の顎をそっと持ち上げて優しく指でぬぐってくれる。今俺の目にはハートマークが浮かんでいることだろう。

「なあ、着くまで我慢できない……だめ? 俺ずっといい子にしてたろ?」

 眉を下げて上目遣い、捨てられた犬みたいな情けない顔。おねだりする時の俺の得意技だ。ホルヘの太い首にすがりつく。「ご褒美くれるよな? ホルヘ……」耳元で囁く。
 俺たちの本当の関係は外では秘密だ。キャンプで間借りした狭い部屋で一晩明かす時だって耐えた。おざなりに設けられた壁とも呼べない仕切りの向こうから、声を潜めて営む居住者カップルのバレバレな喘ぎ声、パイプベッドの軋む音が延々と聞こえてきて発狂ものだったが……。
 俺だって限界だ、愛する人とそういうことがしたい。背中に回した手で脊椎の骨をひとつずつ、上から下に辿っていき、明らかにそういった意図を込めた手つきで腰をやわやわと撫でる。ホルヘの大きな手を取り、欲求不満を募らせてジーンズの生地を持ち上げている股間に誘導する。俺の言外の要求に、ホルヘは目を伏せた。

「こら……坊や」

 聞き分けのない子供を叱るようにたしなめられて、ずくんとペニスに血が集まる。そう言いながらもホルヘは張り詰めたものの形を確かめるように撫でさすってくれる。
 俺はホルヘに子供扱いされるのにめちゃくちゃ弱い。ホルヘも俺に甘えられるのにすこぶる弱い。これって絶対に健全な関係じゃないよな。でも倫理的にどうとか、修復不可能なくらい壊れてしまった世界で今更気にする必要、ないだろ。どうやったって取り戻せない喪失と欠落だらけで、夜毎よごと追いすがってくる記憶を振り払うのにみんな必死だ。傷を舐め合って何が悪い。
 俺はホルヘが父親だったらよかったのにと思っているのと同時に、父親とだったら絶対にできない行為をしている。
 
 ホルヘがシートを後ろに下げ、立てかけられていた銃が重い音を立ててずり落ちた。狭いフロントシートにわずかながらスペースを作ると、ぐっと前傾し、俺のベルトに手をかける。緩め、ジッパーを降ろし、窮屈な前をくつろげてくれる。その淀みない慣れた手つきにもくらっとくる。
 これから始まる「ご褒美」を予期した俺はごくりと息を飲んだ。

「若いと大変だな」

 ホルヘのからかうような口ぶりに俺は素直に苛立った。もちろん股間がだ。パンツの上からカリカリと爪を立てて引っ掻き、「かたいな……」などと呟いて、期待でいっぱいでもう爆発寸前だというのにさらに俺を煽る。ホルヘは若い男の射精欲求というものを舐め腐っている節があり、平気な顔で、あるいは天然でこういうことをやる。
 パンツのゴムを引っ張ると、解放を待ちわびていたペニスが頭をもたげる。2、3日前に簡易シャワーを借りたとはいえ、ろくに洗っていない汗に蒸れた排泄器官に、ホルヘは臆面もなく触れる。触れるどころか、もっとすごいことをしてくれる……。
 ホルヘはぷっくり鈴口に溜まったカウパーの玉を指の腹で押し潰し、亀頭全体にぬめりを広げていく。それから幼児を寝かしつけるみたいなリズムでトン、トン、とひくつく鈴口を叩く。しまいにはビキビキに猛った竿をピンッと指で弾かれ、背が反り返った。……これは天然じゃない。完全に遊ばれている。

「ホルヘっ、マジでっ、今はそーゆーの、勘弁して……」

 俺の声はもう半泣きだった。
 ホルヘは俺の股間に顔を寄せ、小さく笑った。はち切れそうなほど勃起したものに熱い吐息が掛かって、生唾を飲み込んでしまう。ゆっくりと幹に唇が押し当てられて……ぢゅう、ときつく吸われ、思わず太腿が跳ね上がる。たったそれだけの刺激でペニスがドクンと脈打つ。
 詳しい話は聞かせてくれないが、ホルヘの全身は兵役で負った大小様々な古傷にまみれていて、それは目に見える範囲に留まらない。熱波で気管と声帯を傷つけているから、こういう時も無理はさせられない。ホルヘの掠れた声、口数の少なさとゆっくりとした喋り方はそのせいでもある……それはそうとして、あの低くざらついた声はエロくて最高なんだが……要するに、ディープスロートなんてのは論外だ。
 根元をやわくしごきながらあちこちにキスをまぶして、分厚い舌をねっとり這わせ、舌先を尖らせて鈴口をほじったり、カリのくびれをこそいだり、浅く中ほどまで口に含んでちゅうちゅう吸ったりだとか、ホルヘがしてくれるのは、そんな甘っちょろくてじれったいフェラチオだ。でもホルヘにしてもらってるってだけで、俺は……
 
「っ……あ、っ♡、う……」
 
 ホルヘの太い首に添えた手を震わせ、いやらしく上下するこの頭を力づくで押さえつけたいという暴力的な欲望に流されないよう、必死に快感に耐える情けないツラを晒してしまう。普段上から俺を見下ろすホルヘが苦労して体を丸め、自分よりずっと年下の青臭いペニスに口で奉仕するこの光景は、直接的な刺激以上にクるものがある。
 
「っ、は、坊や……いいのか……」
「んっ、っうん、……気持ちいぃ……♡ ……はぁ……」

 車内には生々しい男の臭気が臭い立ち……ちゅぽっ、むちゅ……さっきまでのものとは比じゃないくらい卑猥なリップ音が響く。
 一旦顔が離れたかと思えば、パンツの奥でじっとり汗をかいていた重たい陰嚢が摘まみ上げられ、ホルヘの舌の上に乗せられた。そのままあむっと一口に食べられてしまう。俺は喉を晒し、後頭部をヘッドレストに押し付けて悶絶した。睾丸がきゅっ、きゅっと持ち上がり、ずっしり溜め込んだ中身を放出したくて収縮する。ホルヘは口に含んだタマを舐め潰す舌でその気配を感じ取ったのか、片手で射精を促すように自分の唾液でべっとべとの竿をしごいてくる。
 本能に抗えず、腰が勝手にピストン運動を始める。
 
「あっ……、あっ、あ、も、イク……♡」

 ホルヘは当然のことのように俺の射精を口の中で受け止めた。俺は溜まっていたものを熱い口の中に気持ちよーく吐き出し、出したそばからちゅるちゅると吸い上げられ、まるで根こそぎ引っこ抜かれるみたいな感覚に腰を浮かせて藻掻いた。ホルヘは最後、ぴくぴく痙攣して勝手に閉じようとする俺の内腿に体重をかけながら、窄めた唇で鈴口にプレッシャーキスし、ぢゅっ、ちゅううぅぅっ……と残滓を強く吸い出して……こともなさげに俺の精子を飲み下す。

 俺は久しぶりに味わう強烈な快感の余韻と虚脱感に酔いしれ、シートにぐったりもたれかかって放心していた。その間も、ホルヘは口で丁寧に清めたペニスをパンツにしまい込み、ボトムスの前を元通りに整えてくれているのだった。
 
「……スッキリしたか?」
 
 ホルヘは俺の上気した顔をしみじみ眺め、太い指が近づいてきたかと思うと、汗で額に張りついた前髪を優しくかき上げてくる。静かに凪いだ目が……俺を、映している。
 なんでそんなに愛おしそうな目で俺を見るんだ。自分は何一つ満たされてないくせに。俺は強欲で、隣にいるだけじゃ飽き足らず、その先を求めて、あんたの息子の代わりにすらなってやれなかった。
 
「ホルヘ……愛してる、ホルヘっ」
「待て、お前のを飲んだばかりだぞ」
 
 俺はチクチクと髭の生えた頬に甘え、性懲りもなくキスをねだった。射精して頭が冷えた程度で正気を取り戻す俺ではない。いいんだ、ホルヘはもう俺のだ。互いに親子みたいに大切に想い合いながらセックスもして、何が悪い。男の矜持なんてくそくらえだ。わかりきったことだが、もう絶対に女の子相手に普通のセックスなんてできないだろう。今後一生するつもりもないから別にいい。

 その時、バンッ! とドアウィンドウが叩かれ、衝撃に車体が揺れる。
 俺は思考が巡るより先に反射でハンドルを掴み、アクセルを踏み込んだ。ガラス越しに聞こえる奇声が遠ざかっていく。
 くそ。せっかくいいところだったのに。あわよくばこのまま第二ラウンドに、と思っていたところに邪魔立てされ、舌打ちする。ガラスを見ると、腐肉から染み出る分泌液がべっとりこびりついていてうんざりした。車体から引き剥がし距離を取ったところで、ハンドガンを構えたホルヘが窓から乗り出して発砲した。
 
「なんでこんなところに感染者ローマーが……。近くに巣なんてあったか?」

 口を尖らせる俺に、ホルヘが「続きは帰ってからだな」と、手元のハンドガンをコッキングしながらさらっと聞き捨てならないことを言い放った。思わず振り向くと、「前に集中しろ」と静かに叱られる。
 
「……帰ったら、二人っきりじゃないとできないことをしよう。お前の望むだけ。それまでいい子で待てるな?」

 そんなことを言われたら黙って頷くしかない。俺はバカみたいにこくこく頭を振って、ハンドルを握り締めた。途中、何か柔らかいものに車輪が乗り上げて、車体ががくっと傾いても気にしない。辺りがどんなに酷い有様でも、状況が上向く確信なんて持てなくても、ホルヘがそばにいて……強くてかっこよくて頼りになって、しかもめちゃくちゃエロい、過酷な世界を共に生き抜く相棒で愛し合う恋人が隣で一緒に寝てくれるなら、少なくとも安眠は得られる。

(了)
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